【世界の薬学教育】最終回 グローバルな視点からの大学教育の評価

2015年9月1日 (火)

薬学生新聞


城西国際大学薬学部
臨床統計学教授
山村 重雄

 前回は、教育評価の質の評価について紹介しました。薬学教育の質評価は、医療の評価でも用いられる「Structure-Process-Outcomeモデル」に、背景(Context)とOutcomeが社会に与える影響(Impact)の五つの段階で評価するとよいと考えられています。これらの5本の柱を支える土台となるのが、サイエンス、実務、倫理からなるCompetencyです。

 初めて「世界の薬学教育」を読まれる方は、前号までのCompetencyや教育の質評価の方法について目を通してから再度読んでいただければ少し理解が進むかと思います。前回は、薬学教育の質評価の考え方の一般論をお話ししましたが、今回は、具体的にどのような点を評価するのかをご紹介したいと思います。(日本では、各薬科大学・薬学部の教育内容の評価は一般社団法人「薬学教育評価機構」が行っています)

「学生の評価」は必要不可欠

 学生時代は、カリキュラムに沿って学習することに精いっぱいで、教育の質の評価なんて考えたことはあまりないと思います。今では、ほとんどの大学で授業評価が行われ、その結果が公表されていると思います。

 でも、「あの先生の講義はわかりやすい」とか、「声が小さくて聞こえづらい」といった感想に近い評価になっていませんか?でも、学生の評価は教育の質を上げるためには必要不可欠な要素と考えられています。

 私が20年ほど前にカナダの大学に留学していたときに、世話になった教授から、「日本では学生による授業評価はどうやっているか?」との質問を受けました。

 そのころの私は、学生の評価なんて役に立たない、せいぜい、単位を取りやすいとか難しいといった情報だけしか得られないと思っていました。

 すると、その教授は、その大学でいかに授業評価が教育の質の向上に寄与しているかを示した論文をくれました。

 その論文を読んでも、まだ、それはカナダの学生の話で日本の学生には無理だと思っていました。でも今は、世界的に学生による評価も不可欠になっています。

 薬学教育の質評価は、Context-Structure-Process-Outcome-Impactモデルに従って、それぞれの段階で評価されます。もちろん、各国で事情も違いますし、一概に評価点を示すことはできませんが、FIP(国際薬学連合)では例として評価視点を示しています。

 ここでは、ProcessとOutcomeの中から評価する指標(Indicator)の中から学生にも関係がありそうな内容を紹介したいと思います()。評価は、「できていない」「大幅な改善が必要である」「少し改善が必要である」「できている」の4段階で行うと示されています。

“国試合格”とは別の視点で

 なお、ここに挙げた指標以外にも多くの指標が例示されていますので、興味のある人が読んでみてください。

 これらは、大学が評価される視点ですが、学生にも大きく関わっていると感じてもらえれば幸いです。

 特にOutcome評価でコンピテンシーという用語がよく出てきます。ここでのコンピテンシーは、薬剤師として働くことができるコンピテンシーではなく、薬剤師として働き始めることができるコンピテンシーであることに注意してください。コンピテンシーという用語は能力や資格といわれることが多いのですが、薬学教育の中では、一つの能力や資格ではなく、知識、スキル、態度、行動、倫理観などを含む広い概念として使われます。経験を積むことによって到達すべきコンピテンシーは異なることにも注意してください。卒業したばかりの薬剤師と10年の経験のある薬剤師では当然発揮できるコンピテンシーは違ってきます。

 教育の質評価の指標から見えてくるのは、薬学教育の質は、学生が卒業したときに薬剤師として働き始めるのに必要なコンピテンシーを与えることができたかで評価されていることがわかります。

 日本では、国家試験に合格すれば、薬剤師として働き始めるのに必要な能力、資質があると判断されます。でも、グローバルな視点では、薬学教育の質が薬剤師の能力、資質を担保しているかが重視されると考えられます。

 大雑把な話になりましたが、様々な視点から世界の薬学教育を見てみました。患者や人々の力になれる薬剤師を育てる薬学教育とは、どんなものでしょう。学生時代から薬学教育を考える人が増えてくれることを期待しています。



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