【日本薬学生連盟第17回年会】20年後、何ができる?

2016年5月1日 (日)

薬学生新聞

日本薬学生連盟第17回年会

日本薬学生連盟第17回年会

 日本薬学生連盟の第17回年会「薬学生の集い」が3月19、20日に星薬科大学で開催され、盛会裏に終了した。メイン企画「パネルディスカッション 薬学2035」のテーマは、昨年厚生労働省が策定した2035年度の医療のあり方に向けた提言書「保健医療2035」をもとに、薬学生自身が医療ビジョンを考える「私たちが20年後にできること」。ただ、肝心の提言書には“薬剤師”の言葉がなく、「え、私たち大丈夫なの」という疑問から出発した波乱のパネルディスカッションだったが、終わってみれば参加した1人ひとりが医療における薬剤師の存在意義を認識し、20年後に目指すべき到達地点をイメージできた有意義な機会となった。

保健医療2035‐薬剤師が入っていない!?

 ご存じの通り、医療を取り巻く環境は、保健医療ニーズの増大や社会環境・価値の多様化、格差の増大、グローバル化の進展など課題が山積している。こうした課題を解決するために国が策定したのが医療ビジョン「保健医療2035」だ。医療費増で逼迫する現行の保健医療制度を、単なる負担増や給付削減で維持していくのではなく、新たな価値やビジョンを共有し、健康先進国として20年先を見据えた保健医療システムに転換していく目的で策定されている。

 今回、薬学生連盟では提言書に「薬剤師」という用語が出てきていないことに着目。「保健医療2035」に対して、将来薬剤師をはじめとして医療業界での活躍を目指す各自が何を感じ、これから何に力を入れていくか“それぞれの35年ビジョン”を語り合った。

提言書に記載なくとも、薬剤師像つくる好機

 16年度から薬学生連盟会長を務める北澤裕矢さんは、『保健医療2035』に薬剤師という言葉がなかったことに対し、はっきりとした口調で「残念」と口にした。「予防医療でも薬剤師は関与できると思うし、患者に対しても病院への受診勧奨や健康相談でも力になれるはず」と述べ、薬剤師の役割をより明確にしてほしかったとの思いがにじんだ。

 同じく薬学生連盟に所属する秤谷隼世さんは、発表されたその日に提言書に目を通したという。その感想は、「20年後の未来に薬局がなくなるのかと感じた」。ただ今回の保健医療2035は、「20年後に自分たちが活躍していくために、白紙から薬剤師像をつくっていくチャンス」と考え、薬剤師の地位向上に若い世代がチャレンジしていくべきと主張した。

 パネルディスカッションには、「保健医療2035」の策定懇談会メンバーで厚生労働省の岡本利久氏が参加。学生側から「薬剤師が期待されていないのではないか」との不安の声が聞かれる中で、「医療の仕組みは複雑でいろいろな論点があり、提言書では薬剤師の記載はされなかったが、『患者のための薬局ビジョン』がつくられている中において、医薬品や薬局が重要であるのはまぎれもない事実。少子高齢化社会で労働人口が減っていくときに、個々の方がより高いパフォーマンスを発揮してほしい」とのメッセージを送った。

 星薬科大学実務教育研究部門講師の鳥越和宏氏も、「提言書に薬剤師の文言が出てきていなくても、OTC医薬品などを用いたセルフメディケーションに対する薬剤師への期待は大きい」と指摘。

 その上で「いち早く時代の流れを汲み取り、評価されるから取り組むのではなく、やったことが評価されるという気持ちでやってほしい。それが他職種から評価されることにつながってくると思う」と積極的な挑戦を求めた。

グローバルな活躍目指す‐患者に説明できる薬剤師

 豪州から参加した世界薬学生連盟のアジア太平洋地域支部長を務めるジャネット・ミルザエイさんは、「日本では薬剤師が過小評価されて、知識や技術が生かし切れていないように思う。豪州では、薬剤師が人々の健康に貢献できており、薬剤師を医療費削減に活用すべきではないか」と述べた。

 テーマの後半では提言書で示された35年に向けた課題のうち、「各自が何に取り組み、具体的に何に力を入れていくか」を表明する場となった。

 研究者志望の秤谷さんは、「世界規模で医療問題を考える『グローバルヘルス』に向け、慢性疾患の増大を解決する技術を生み出し、世界の医療で貢献したい」と語った。

 一方、臨床現場での活躍を目指す北澤さんは、「医療における国民への説明不足がある。医薬分業やおくすり手帳を持つ意味を理解してもらえるよう、1つひとつの医療行為に対する説明責任を果たしていきたい」と患者貢献を誓った。

 最後にフロアに集結した参加者全員が「2035年に自分が何をしていたいか」「それを実現するために明日から何をしていくか」といった行動宣言書に自分の目標を記し、将来へと走り出す大事なスタートの日になった。



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