【ヒト・シゴト・ライフスタイル】私は“白衣を着ない薬剤師”‐スズケン 菊地晴乃さん

2016年9月1日 (木)

薬学生新聞


医薬品卸の管理薬剤師で奮闘

菊地晴乃さん

 スズケン東北薬事課北仙台支店の菊地晴乃さんは、調剤薬局や病院で働く薬剤師とは違う“白衣を着ない薬剤師”。医薬品卸会社の管理薬剤師として活躍している。薬学の知識をフル活用し、医薬品が規制に合った形で販売されているかのチェックや、医薬品の品質管理や医療機関からの問い合わせ対応、社内向けの教育研修とその仕事は多岐にわたる。信頼される管理薬剤師になるために、入社してからの2年間、全速力で走ってきた。もちろん、責任感は大きいが、「この仕事を選んでよかった。頼りにされる存在になりたい」という力強い言葉と、笑顔たっぷりのその表情がなんとも印象的だった。

 医薬品卸の管理薬剤師との出会いは、菊地さんが東北薬科大学5年生のときに経験したスズケンのインターンシップ。もともとは白衣を着た薬剤師に憧れていた。病院と薬局で長期実務実習を経験し、胸の中で高まる薬剤師として働くイメージ。でも、突然こみ上げてきたのは、「いや待てよ」という思いだった。「必ずしも薬局と病院の薬剤師業務の二択から進路を選ばなくてもいいのではないか」。就職先の選択肢を広げてみようと思ったのがきっかけだ。

 3日間のインターンシップ。そこで初めて見た“白衣を着ない薬剤師”に心を奪われた。

 桁違いな数と種類の医療用医薬品(麻薬を含む)、厚労省や製薬企業からの膨大な情報、現場の最前線で働く薬剤師への情報提供によるサポート。「患者さんに直接かかわることもなく、大学で学んだ知識を本当に仕事で生かすことができるのか、進路としての判断に多少迷う部分もありましたが、この仕事を知った瞬間に、とても面白そうだと感じました」と振り返る。

 医薬品卸の管理薬剤師業務は、薬事関連法規に基づき医薬品の適正販売が行われているかをチェックする「薬事管理」、医薬品の品質を維持したままお届けするために医薬品が倉庫内で適切な温度で保管されているか、使用期限が切れた商品が流通しないようにチェックする等の「品質管理」、医療機関からの問い合わせ対応、新薬の情報をMSに伝える「情報管理」、医薬品や薬事関連法規などについて社員に教える「教育研修」の4つに分けられる。

 4つの業務はすべて管理薬剤師にとって大事な仕事であるが、特に菊地さんが尽力しているのが、情報管理業務。この2年4カ月で、868件もの問い合わせに対応してきた。

 1件1件の積み重ねが経験となり、管理薬剤師としての責任感、私でもやれるんだという自信へとつながっている。対応してきた1件1件を忘れないように、問い合わせ先、問い合わせ内容、回答した内容、回答した内容の情報源などを表計算ソフトのエクセルファイルに記録し、参考にしている。「同じようなお問い合わせを受けた時に、どういう対応をすべきかをファイルで確認するようにしています」。菊地さんだけしか持たない大きな財産となっている。

“5勤1遊1休”オフも全力投球

 医薬品卸の管理薬剤師として、やりがいもたくさんある。

 医薬品にまつわる医薬品医療機器等法などの様々な法律に強くなれること。医療従事者のサポートができること。いろいろある中で、菊地さんが強く推すのが、「いろんな人とかかわりながら仕事ができること」。社内では営業、事務、物流、社外では医療機関、製薬企業、行政の担当者と多岐にわたる。「何度か仕事をしていくうちに、『あ、スズケンの菊地さん、こんにちは』と声をかけてもらえるのが嬉しいですね」。分からないことはすぐに質問をし、知識として蓄えていく。そうやっていくうちに、菊地さんのもとには、問い合わせが集まるようになってきており、今や菊地さんファンのリピーターもいるほどの人気ぶりだ。

アウトドア、インドア何でもアリ。カニを釣り上げる

アウトドア、インドア何でもアリ。カニを釣り上げる

 でも菊地さんは、根っからの仕事人間ではなく、平日の仕事は一生懸命、休日も全力投球と元気いっぱいの20代女子。「平日は目一杯働き、土曜日は目一杯遊んで、日曜日ゆっくり休む」という5勤1遊1休というスタイルを貫いている。

 土曜日の過ごし方は、仕事と同じように前もって計画を立てる“事前準備派”。ではどんな過ごし方をしているのか。「お蕎麦を食べるために山形県までドライブしたり、疲れたときには海外ドラマを借りて家の中で見たり、仲のよい友達と3時間くらいカフェで、話し込んだりですかね」。アウトドア、インドア何でもアリの休日のようだ。

 最近、ハマっているのがパンづくり。大学時代から通っている料理教室で小麦粉からこねて作り上げた焼きたてパンの味に感動を覚え、家でもそれを再現すべくチャレンジしているという。

隣にいるのは愛犬。パンづくりは最近のマイブーム

隣にいるのは愛犬。パンづくりは最近のマイブーム

 ただ、「お料理教室だと上手にできても、家で同じようにやろうとすると、なかなか難しく、うまく発酵しなかったり、小麦粉がまとまらずにべちゃべちゃになってしまったり。試行錯誤が続いています」と修行中であることをそっと教えてくれた。でも、もともと何かに挑戦することが大好きな性分。「失敗もしていますが、それが面白いんですよ!」と楽しそうに話す姿から、没頭ぶりがうかがえる。

 休日に仕事のことが頭に浮かぶことは?そこは、休日は仕事を一切、家に持ち帰らない主義で、仕事のことは休日には自動的に頭の中から消しているという。その理由について、「例えば、教育研修が月曜日にある場合に、その資料を持ち帰ったとしても、絶対に土日には見ないことが分かっているから(笑)。せっかくの土日が楽しめなくなるのはもったいないじゃないですか」と、説得力のある意見が返ってきた。仕事と遊びのメリハリがあるからこそ、次の週も全速力で走り出せるパワーが蓄えられているのかもしれない。

 大きく広がる管理薬剤師としての未来。菊地さんにも、将来のありたい姿が捉えられている。いつも隣には、薬事管理部の東北薬事課の課長がいる。管理薬剤師として、1人の人間、1人の女性として、そこに生きた教材がある。菊地さんは、“お母さんのような人”と表現する。

 なによりも経験、知識が豊富で、どんな質問にも的確な回答が返ってくる。周囲の人への接し方も抜群。彼女のもとに、自然と人が集まってくるのを何度も見てきた。「すごい人です」と何度も繰り返した言葉に、将来の自分の姿を重ねる。

 「会社の先輩でもあり、人生の先輩でもあり、とても尊敬しています。よく言われるのが“自分で考えなさい”“本当に考えた?”という言葉。決して威圧的ではなくて温かさを感じます。親子のように接してくれるから私もこんな人になりたいと思うんです」。何かをやろうとするときに、どうすればうまくいくかを考える癖がついてきた。

 管理薬剤師は医薬品の管理という重要な役割を担う。些細な判断ミスが患者の命にかかわることもある。ときには、社歴の長いずっと年上の社員に対して、問題点を指摘しなければならない場面もある。相手に理解してもらえるために、どう伝えればいいのか。菊地さんは“伝える”ことの難しさを日々感じながら、階段を上っている。

 そんな若い芽を温かく見守る環境がある。菊地さんの言葉を受け止めてくれる上司や同僚、社外の人たち。それが菊地さんはとても有り難いという。「孤独を感じることはありません。本当に医薬品卸の管理薬剤師になってよかった」と胸を張る。

 医薬品卸の管理薬剤師という仕事は、薬学生の中でもまだ十分に認知されていない仕事かもしれない。しかし、薬剤師になるために学んだ知識、医療現場で働く医療従事者のサポート、さらに製薬業界、医療関連業界の動向がよく分かるという他にはない魅力が溢れている。一度知ってしまえば、その魅力に惹きつけられるかもしれない。

 菊地さんもその1人だ。「患者さんと直接かかわりたい、服薬指導を通じて元気になっていく姿を見ていきたい、現場で注射剤の調製がしたいという理由で、現場の薬剤師を目指すのはとても素敵な道だと思います。ただ、医薬品卸の管理薬剤師は視野が広がる仕事なので、選択肢に入れてほしいなって思います」。新しく働く薬学生の仲間を心待ちにしている。



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