学修習慣が国試合格に影響か‐京都薬大が傾向を分析

2016年11月1日 (火)

薬学生新聞

細井氏(右)、開氏

細井氏(右)、開氏

 大学入学前や入学後の学修習慣が大学の各年次の成績に影響し、ひいてはその影響は薬剤師国家試験の合否にまで及ぶのではないか――。京都薬科大学薬学教育研究センターの細井信造教授、開章宏講師らの研究グループが実施した解析によって、そんな傾向が明らかになった。京都薬大のある年度における学生を対象に調べると、入学前に学修習慣が身に付いている学生の方が、入学後の成績は良かった。さらに、各年次の専門必修講義科目の成績や模擬試験の得点が良い学生は、国家試験の合格率が高かった。細井氏は「過去の傾向を参考に、今何をすべきかを主体的に考えて未来を切り拓いてほしい」と話している。

 細井氏らの研究グループは、薬学教育6年制のある年度における学生を国家試験合格群と不合格・卒業留年群に区分した。その上でまず各群ごとに、4年次に実施した2回のCBT模擬試験の平均得点や、5年次から6年次にかけて実施した計6回の国試模擬試験の平均得点を算出した。

 その結果、国家試験合格群の各種模擬試験における平均得点は、全ての試験において不合格・卒業留年群より高かった。

 4年次までの専門必修講義科目の成績と国試合否との相関を調べると、同科目の評定平均が80点以上の学生に国家試験不合格者はいなかった。「1年次から普段の講義や実習などにしっかり取り組むことが重要。4年次までに合否を分ける学力差がついている」と開氏は話す。

 さらに、2年次、3年次、4~6年次の専門必修講義科目の評定平均と国試合否・卒業留年との相関に焦点を当てて分析すると、国試合格群の評定平均はどの年次においても不合格・卒業留年群より高く、学業成績が良い学生は国試合格率も高いことが明らかになった。

 2年次の専門必修講義科目の評定平均と国試合否・卒業留年の相関を詳しく分析すると、2年次の評定平均が80点以上の学生は全て国家試験に合格しており、75点以上80点未満の学生の国試合格率も94.1%と高かった。一方、60点以上65点未満の学生の国試合格率は51.7%、60点未満の学生の国試合格率は30.0%と低かった。

 「最終的に国家試験に合格した学生群は、4~6年次、3年次の成績が良く、2年次まで遡っても成績が良かった」と開氏。低学年の段階で既に、学業成績が将来の国家試験の合否につながっていることが明らかになったという。

練習問題への取り組み率が相関

 それでは、学業成績の良し悪しや国家試験の合否は一体、何によってもたらされるのだろうか。ひとつの要因として研究グループが注目したのが日頃の学修習慣だ。

 京都薬大は以前、4年次にCBT対策として年間8回、自主練習問題を学生に渡して取り組ませていた。その取り組み率が高い学生ほど国家試験合格率は高く、日頃の学修習慣が国試合格に相関することが示された。その学生群は振り返ってみると2年次の評定平均も高かった。「身に付いた学修習慣はそう大きくは変化しない。2年次の学修習慣が4年次のCBT練習問題取り組み率にも表れているのだと思う」と開氏は語る。

 研究グループはさらに入学前の学修習慣と入学後の学業成績の相関を調べた。京都薬大は推薦入試合格者に対して入学までの約3カ月間に計4回課題を授与。課題提出締切日の1週間前に、課題に着手しているかどうかを確認し、まだなら取り組むよう促している。

 調べてみると、締め切りの1週間前に物理、数学、生物の3科目全ての課題に取り組んでいた学生は、大学入学後1年次から4~6年次までにわたり専門必修講義科目の評定平均が常に学年平均より高かった。4年次のCBT体験受験の得点、6年次の実力試験の得点も高かった。

 一方、1週間前になっても課題に取り組んでいなかった学生は、取り組み開始が遅れた回数が多いほど入学後の評定平均は低かった。4回の提出期限を全て守った学生でも、締め切り1週間前を過ぎてから取り組み始めた学生の入学後の評定平均は、1週間前に取り組んでいた学生より低く、差があった。

 この結果から、高校生の時からの日頃の学修習慣が大学入学後の成績を左右することが明らかになった。「高校生の時にどれだけ学修習慣が身に付いているかが、6年次の実力試験の得点にまで影響している。今後さらなる解析を行う予定であるが、おそらく国家試験の合否にも相関していると思う」と開氏は話す。

 細井氏も「低学年次に、いかに学修習慣をしっかり身に付けさせるかが大事になる」と強調。ただ、高学年次で学修習慣が身に付いてない学生であっても「リカバーはできる。この結果をネガティブに捉えるのではなく、現時点でどのように計画的に勉強を進めるのかを主体的に考えるきっかけにしてほしい」と話している。



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