【これから『薬』の話をしよう】薬の“効果”を考える

2016年11月1日 (火)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 みなさんこんにちは。栃木県で病院薬剤師をしています青島周一と申します。僕は薬の調剤や患者さんへの服薬説明のほか、“薬の効果”について医師に情報提供しながら処方支援を行っています。薬の効果については、皆さんもたくさん勉強されていると思いますが、ひとえに「効果」と言っても様々な考え方があります。

 例えば、薬理学の教科書には糖尿病治療薬の1つ、シタグリプチンの作用機序が書いてあるかと思います。いわゆるDPP-4阻害薬という薬剤ですが、その名の通り、ジペプチジルペプチターゼ-4(DPP-4)を阻害し、インクレチン濃度を上昇させることでインスリン分泌を促し、血糖値を下げると言われています。こうした薬理学的な観点からすると、シタグリプチンの効果は血糖値を下げる効果ということができるでしょう。

 ところで、自分がシタグリプチンを飲むことになったとして、一番気になる薬の効果とは何でしょうか。血糖値が下がればそれで十分でしょうか。糖尿病の治療目的をあらためて考えてみましょう。糖尿病患者さんは、そうでない患者さんに比べて、腎障害、神経障害、網膜症、あるいは心血管疾患のような合併症が発生しやすい状態です。つまり、糖尿病の治療はこれらの合併症を予防するために行われるのであって、血糖値を下げることは手段でしかありません。

 “人の将来にどのような影響を及ぼしていくか”という薬の予防的効果を知るためには薬理学的知見だけでなく、臨床医学に関する論文情報を知る必要があります。シタグリプチンは2型糖尿病患者さん1万4671人を対象にした臨床試験が行われており、心血管合併症に対する効果はプラセボとほぼ同等だったという衝撃的な論文が報告されています[PMID:26052984]*

 同様の報告はサキサグリプチン[PMID:23992601]、アログリプチン[PMID:23992602]でもなされており、DPP-4阻害薬の合併症予防効果は現段階で証明されていません。

 それにもかかわらず、DPP-4阻害薬はメトホルミンと並びわが国で最も多く使用されている薬剤なのです[PMID:27549920]

 糖尿病治療に限らず、合併症予防という観点からすれば、著明な効果を有さない薬剤が、実際には数多く使用されているという現実は確かに存在します。このような状況がなぜ生じてしまうのか、とても重要な問題ですが、それを話し出すと長くなりそうなので、また別の機会にしたいと思います。

 *PMIDとは、文献検索サイト PubMedが各論文へ割り振っているID番号です。この番号をトップ画面の検索窓に直接打ち込むと、対象論文の抄録にアクセスできます。



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