“ママモニター”として復職‐マイクロン 比留間一恵さん

2017年1月1日 (日)

薬学生新聞

娘と過ごす休日

娘と過ごす休日

 薬局薬剤師からCROの臨床開発モニター(CRA)に転職したマイクロンの比留間一恵さん。“患者さんの力になりたい”という彼女の強い気持ちがモニターを目指す原動力となった。マイクロンに入社し、モニターとして成長し活躍する中、プライベートでは結婚、そして出産、1人の娘の母になった。現在は育休中の身だが、「子育てしながら、モニターをやっていきたい」と復職を予定している。“ママモニター”としての再出発。薬学生の皆さんには、ママになっているかもしれない10年後の自分の姿を想像して参考にしてみるといいかもしれない。

薬学知識を生かす‐環境を変えて挑戦

 薬学生の頃は、病院薬剤師、薬局薬剤師の2つの進路しか見ていなかった。脳裏に浮かぶのは、患者に薬剤を渡すときに、「この薬を飲めば元気になりますよ」と声をかける白衣を着た自分の姿だった。重症度の高い患者を前に、元気を与えられるという自信はなんとなく持てなかった。だから病院薬剤師ではなく、薬局薬剤師になろうと思った。

 転機になったのは、「患者さんの力になりたい」という思い。勤務先の調剤薬局は、大学病院の前に位置し、重度の病気を持った患者が多く来局した。どちらかといえば、病気を治すというよりも、病気の症状をコントロールする維持療法で使われる薬が多い。いつもなら笑顔といっしょに「この薬を飲めば元気になりますよ」と元気よく声をかける比留間さん。しかし、薬を飲み続けなければならない患者を前にすると、その言葉が出てこない自分を情けなく思うこともあったという。

 本当に患者さんの力になれているのか――。そんな自問自答と同時に、薬学生の頃は物怖じしていた「重症度の高い患者さんに希望を与えられるようになりたい」という気持ちが高ぶった。環境を変えて挑戦したくなった。

 治療満足度が低い疾患で、苦しむ患者を治す仕事。いろいろと探す中で出会ったのが製薬企業の新薬開発をサポートするCROという業界。薬学知識も生かせる。「これだ」と思った。中でも、医用画像を活用して薬剤の効き目や安全性を調べる“イメージングCRO”のマイクロンは、業界で先駆的な取り組みを行う1社。その“新しさ”に惹かれた。

 想いが叶って採用、モニターとして働き始めた。薬剤師のように患者さんに触れ合えなくても、治験に携わる人たちからの話、カルテ上から患者の症状改善が把握できることから、「なんとなく患者さんと触れ合えている」気分になれたという。

 薬学部で薬学知識を学び、調剤薬局で薬とかかわってきた比留間さんでも、治験段階で明らかになる薬の威力に驚いた。流産を経験した女性が不妊治療薬候補の投与で妊娠に成功したり、脳腫瘍の高齢女性で「癌の再発まで著明に延長する」という高い奏効率の症例も目の当たりにした。「薬ってすごいな」。改めて感じた。

医師が教えてくれた大事な患者視点

 比留間さんが大事にしていた患者視点。忘れられないエピソードがある。前立腺癌の骨転移を対象とした治験。既存療法に比べ、開発薬の上乗せ投与で期待される延命効果は2~3カ月間と聞かされたとき、心のどこかでは、「たったの2~3カ月間か」というやるせない気持ちになった。

 そんなときに治験責任医師が教えてくれた。「たとえ延命効果が2~3カ月間であっても長く生きることで、その患者さんの人生が変わることもある」。その言葉で、やるせない気持ちが使命感に変わった。癌の患者にとっては1日1日がとても重要であることを改めて実感し、「1日でも早く新薬を出したい」という想いが溢れてきた。

 「自分にできることは全てやる」と決心をした。それまで担当してきた治験以上に医師とコンタクトを取る頻度を多く設けた。大学病院で実施される治験は、各部署で工程が分かれて分業で進められるため、つぶさに治験の進捗を確認した。ある部署で業務が停滞していれば、治験責任医師に直談判し、スピードアップするようお願いすることもあった。そうする中で感じたのは、製薬企業、医療機関、治験のスタッフのみんながモチベーションを高めていき、「この薬剤を1日でも早く上市させたい」という一体感だった。

患者と家族のために再出発

 結婚し、1人の娘の母になった。今は育児休業を取得しているが、「家族のために」と「患者のために」、「子育て」と「モニター業務」の両立という新たな目標を描く。“ママモニター”としての再出発に向け、「“やれる”というイメージはまだ具体的につかめていないけれど、制約された時間の中で精一杯やっていきたい」と語ってくれた。

 マイクロンは、女性のライフステージに合った働き方を支援できるよう、会社として模索を続けている。産休・育休後の復帰率は、96%を超えるという。また、モニター職においては、家庭と仕事の両立を考える場合、会社の近隣医療機関を担当しつつ、経験豊富なモニターは後進モニターの指導役として組織の中で能力を発揮できる環境づくりが進められている。比留間さんは、女性が活躍する先陣を切ることになる。

 働く上では周囲のサポートも必要になるが、「社内の雰囲気もよく、苦しいときでも互いに励まし合える。いい仲間に恵まれています」と感謝する。そして薬学生の後輩たちには、「私は学生時代にもっと選択肢を増やしておけばよかったと今でも思います。薬学部だから薬剤師ではなく、本当にやりたいことを見つけてトライしてほしい。モニターは薬学知識を生かせる仕事でもあり、ドクターから最新の疾患知識や、各疾患の治療に関する情報が得られるといった意味でも、やりがいのある職種だと思います」と推薦する。



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