【対談 薬剤師×薬学生】薬局薬剤師の役割は一次予防にあり!

2017年3月1日 (水)

薬学生新聞


札幌市西区 二十四軒薬局
高市 和之さん

「かかる前薬局」機能を果たすべき‐患者のストーリーに最期まで寄り添う

対談 薬剤師×薬学生

 国の医療費が膨らみ続ける中、OTC医薬品によるセルフメディケーションを推進していく政策が打ち出されています。今まで以上に地域住民が自ら健康を作り上げていく時代となる中で、薬局薬剤師のあり方はどう変わってくるのでしょうか。私たちは、その1つの道しるべとして検体測定に注目しました。今回、薬局における検体測定の先駆者であり、100%面分業を実践されている札幌市西区の二十四軒薬局の高市和之先生を訪ね、薬局薬剤師のあるべき姿についてお話を聞かせていただきました(日本薬学生連盟2016年度広報統括理事=小池雄悟:立命館大学4年、九州支部長=比嘉遼太郎:九州保健福祉大学3年)

 ――高市先生が検体測定を始めた理由を教えてください。

 私は大学卒業後、薬局薬剤師として働き始めましたが、OTC医薬品も取り扱っていました。その時に、「喉が乾く」と言ってドリンク剤を買いに来る人が何人もいて、その中に「もしかしたら、糖尿病かな」と疑ったケースがありました。案の定、病院に行ってもらうと血糖値は大幅に基準を超えていました。そこで、思ったんですよね。「糖尿病って、もしかして放置されているんじゃないか」と。

 当時は、今ほどいい薬もありませんでしたし、糖尿病性腎症で透析患者もうなぎ上りに増えていました。また、当時の生活指導と言えば、叱って叱って叱り倒すようなものでした。私自身、叱られるとやる気をなくすタイプでしたから、ふと思ったんです。糖尿病の治療とは医療モデルではなく、教育モデルではないかと。

一次予防が大切と語る高市さん

一次予防が大切と語る高市さん

 そんなとき、海外から自己血糖測定器が輸入されてきて、測定器を使う医師も出てきました。ただ、それを一次予防目的で使おうと考える人は、ほとんどいなかったのですが、私は自己測定こそが糖尿病の特効薬になると思ったんですよね。糖尿病になるか、ならないかの人にとって、自分で数値を見ることにより、人から言われてやるのではなく、自分から生活習慣の改善を心がけるようになると考えたのです。

 糖尿病の予防は、二次予防でも三次予防でもなく、一次予防をやるべきだと思ったんです。糖尿病について勉強して、薬物療法の専門家になりたかったわけではなく、全体として糖尿病を発症する人を減らしていかなければいけないと思ったのが、現在の行動につながっています。

 ――検体測定を始めてみて、実際はどうでしたか。

 病院に行っていない人が多すぎて驚きましたが、自己血糖測定器を使いこなしている人は、グングン数値が改善していきました。数値が分かるというのは、こんなにも人に影響を与えるのかと思いましたね。やはり叱られても、隠れて食べてしまう患者さんって多いんですよね。それが自分の目で数値を見ながら「自己責任だよ」と言うと、これくらいなら食べてもいいと、プラス思考に変わっていきます。このように、血糖管理を「これもダメ、あれもダメ」という“引き算”から、「これならいい、これくらいならいい」という“足し算”に変えると、患者さんの気持ちも明るくなります。自己血糖測定器1つで、患者さんの人生を明るくすることができるということを実感しましたね。

検体測定の先駆者で苦労も‐100%面対応で集客努力

 ――検体測定を始めるに当たって苦労はありましたか。

 勢いよく始めてみたものの、最初は様々なところから忠告や非難を受けました。「自分のやっていることは間違いなのか」と絶望しかけたところ、応援してくれる先生が出てきて、次第に仲間が増えていきました。そこからは団体を作ったり、様々な先生と連携したりと活動の幅が広がっていきました。また、いざ自己血糖測定を始めても、当時は自分たちですら不慣れでしたし、患者さんがうまく使いこなせないことも多々あり、メーカーと一緒に、より使いやすくするためにはどうしたらいいか試行錯誤しながらやっていましたね。

 ――患者さんとのコミュニケーションも大切になってきますね。

 いろいろな人がいますから、コーチングが大切になってくると思います。当然、怒らせてしまって、もう二度と薬局に来なくなっては意味がないわけです。薬剤師としては、継続的な血糖値の推移を聞きたいわけで、それぞれの人に合わせて良好な関係を築けるよう、コミュニケーションを図ることが大切だと思います。「指導」と思われても、上から目線と感じてしまうかもしれないので、「一緒に頑張っていきましょう」と利用者さんに投げかけています。

 実はこれ、処方箋についても同じことが言えるんですよね。私の薬局は完全に100%面対応で、目の前に病院があるわけではありません。遠くの病院にかかって、わざわざうちの薬局を選んで来てくれる患者さんがたくさんいます。そういう人たちに少しでも「この薬局にもう来たくない」と思われてはいけないわけです。

 他のどんな職業でも「集客」はしています。様々なサービスや態度で、リピーターを獲得するように努力しているはずです。薬局の薬剤師にも、患者さんにまた来てもらうためにはどうしたらいいのか、常に考え続けることは必要だと思いますね。

OTCに測定を持ち込む

 ――これから薬局も集客の意識が広がってくると思いますが、どんな手法で進めていくべきなのでしょうか。

 それは「使えるものは何でも」です。人間関係から始まって、薬局の機能やサービスを何でも使うし、何でもします。患者さんが望むこと次第と言えます。これからはセルフメディケーションとして、OTCを販売していくという流れがありますが、順番に気をつけなければいけないと思います。

薬局薬剤師のあるべき姿に熱心に耳を傾ける

薬局薬剤師のあるべき姿に熱心に耳を傾ける

 例えば、かぜ薬の処方箋を持ってきた患者さんにマスクを販売するだけでは、薬局としての機能を果たしているとは言えませんよね。具合が悪くなったときにまず薬局を訪れてOTCで対応する、あるいは重症な場合は病院を紹介するという役割が求められると思います。私はこれを「かかる前薬局」と呼んでいます。

 いわゆる門前薬局であっても、いつもその患者さんに薬を調剤しているわけですから、医師にかかる前に薬局に寄って、「今日は何を聞いたらいいですか」と薬剤師に聞いてくれればアドバイスできますよね。門前薬局であっても、「かかる前薬局」の機能は果たせると思います。薬物療法のプロであるから、薬が処方されなければアドバイスをしないという姿勢ではなく、あくまでプライマリケアとして一次予防や一歩前の段階から治療に関わることこそが、今の薬剤師に求められていることではないでしょうか。

 ――院外処方箋が普及する前は、そのような機能は果たせていたのではないでしょうか。

 かつて地域住民の相談を聞いてOTCを販売していたのは確かだと思います。しかし、その部分のエビデンスが希薄で、経験則に基づくことが多かったと思います。だからこそOTCに測定を持ち込みたかったんですよね。客観的なチェックがそこには必要だと思います。

 ――このような取り組みは地域の住民にも理解が得られているのですか。

 十分とは言えません。検体測定に関してはネットで調べてわざわざ来てくれる人はいますけど、近所でたくさんの人が来てくれる段階には達していません。検体測定を実施している薬局もまだ少ないです。札幌が発祥の地ですから、もっと増えてほしいという気持ちはあります。

 ――検体測定が広がっていかない理由はどこにあるとお考えですか。

 薬局に来てもらうための手段として考えていない薬局が多いのではないでしょうか。検体測定自体にもコストがかかりますし、検体測定に関連する商品のバリエーションを揃えなければならないとなると、なかなか始めるのは難しいのかもしれません。処方箋調剤中心の薬局では、なおさらですよね。検体測定を行って、病院で測った検査値と違っていたりしたら、ややこしいことになりかねません。薬局における検体測定が有用であることを、もっと周知させる必要があると思います。

 そこで大切なのは、測定をスクリーニングと考えないことです。これによって処方箋が何枚増えたということではなく、健康な人にこそ検体測定に来てほしいのです。数値上は異常がなくても、遺伝的に血糖値が高い人などは定期的にチェックしたいですしね。


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