【医学アカデミー薬学ゼミナール】第103回薬剤師国家試験に向けて‐第102回薬剤師国家試験を振り返る

2017年5月1日 (月)

薬学生新聞


医学アカデミー薬学ゼミナール学長
木暮 喜久子

木暮喜久子氏

 6年制薬剤師を輩出する6回目となる第102回薬剤師国家試験は、2017年2月25、26の両日に実施された。受験者総数1万3243名、総合格者数9479名、総合格率71.58%で、101回に比べ総合格率が5.27%低下した。表1図1に示すように6年制新卒の合格率は、85.06%(合格者数7052名)で、101回(86.24%)とほぼ同程度であった。一方、6年制既卒は50.83%(合格者数2295名)で、101回に比べ17.09%低かった。その他(旧4年制卒、4年制卒を含む)も30.21%(合格者数132名)と101回(34.29%)と比べ低い割合を示した。第101回薬剤師国家試験は、15年9月に「合格基準」が改訂されたことや99回や100回に比較して既出問題がそのまま再出題されるなど、解答しやすい問題が多く出題されたことにより合格率が上昇したが、102回は事前に101回より易化することはないだろうと分析していた通りの結果であった。「基礎力」、「考える力」、「医療現場での実践力」を問う問題は継続して多く出題されており、問題解決能力や臨床能力をもつ6年制薬剤師に対する期待を感じさせる傾向は続いている。

 18年春に実施される第103回薬剤師国家試験は、102回と同様の傾向で、実践力・臨床能力を問われる問題は継続出題されると思われる。

1 第102回薬剤師国家試験の総評と103回の合格に向かって

 第102回薬剤師国家試験の平均点(換算点)は、合計(345問※1)では、101回に比べ11.55点(2.6%)低下し、「必須問題」、「理論問題」、「実践問題」のいずれも101回より低い結果となり、やや難しい試験であった。しかし、「必須問題」に関しては、わずかな低下にとどまり、ほぼ同程度であった。「薬ゼミ自己採点システム※2」による102回の領域別正答率(表2)は、例年難易度の高い「物理・化学・生物」で、物理以外は101回と比較して正答率で約10%低下した。「法規・制度・倫理」は101回で正答率が高かったが、102回では例年通りの正答率に落ち着いた。

 1)既出問題の出題は全体の20%くらいとされ、単なる正答の暗記による解答が行われないように、問題の趣旨が変わらない範囲で設問及び解答肢などを工夫することになっている。99回と100回では既出問題そのままの再出題はなかったが、101回では再出題が「物理」と「衛生」で出題された。しかし、102回では既出問題そのままの再出題はなかった(表3)。既出問題を解くことは傾向をつかむために重要であるが、答えを丸暗記するのでなく、参考書などで周辺の知識もしっかり勉強してほしい。

 2)コア・カリキュラムの改訂(改訂コア・カリ)により、19年からの長期実務実習中に必ず体験して欲しいとされる「代表的な疾患※3」が発表されているが、実践問題を中心にその疾患が多く出題され、101回を上回る出題数であった。

 ※1 第102回薬剤師国家試験は4問の解なしがあり、「採点から除外する」ため、合計は341問となる。

 ※2 「薬ゼミ自己採点システム」:3月28日現在、10048名のデータ

 ※3 「代表的な疾患」:がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症(薬学実務実習に関するガイドライン 2015年2月 文部科学省)

2 薬剤師国家試験の概略と103回に向けての対策

 国家試験は、必須問題(90問)と一般問題(255問)の合計345題である。出題試験領域は「物理・化学・生物」「衛生」「薬理」「薬剤」「病態・薬物治療」「法規・制度・倫理」「実務」の7領域である。試験は、領域別に行うのではなく、薬学全領域を出題の対象として、「必須問題」と「一般問題」とに分け、さらに一般問題を「薬学理論問題」と「薬学実践問題」とした3区分で行われる(表4)。それぞれの出題区分は下記のような問題内容で出題される。

 1)「必須問題」は、全領域で出題され、医療の担い手である薬剤師として特に必要不可欠な基本的資質を確認する問題であり、共用試験と同様の五肢択一の問題である。また「必須問題」は、一般問題に比べて比較的正答率が高い問題が多く得点源である。「必須問題」は、80~90%の得点率を目指して勉強してほしい。また表4に示すように足切りラインを「必須問題」の各科目の得点の30%に引き下げたことや、100回まで足切りにかかる受験者が多かった「物理・化学・生物」では薬ゼミ自己採点システムにおいて85.1%と高い正答率であったため、今回は足切りで不合格になった受験者はほぼいなかった。

 2)一般問題の「薬学理論問題」は「実務」を除く全科目で出題され、6年間で学んだ薬学理論に基づいた内容の問題であり、難易度は必須問題より高い。102回は、101回と比較して薬剤の正答率は約10%高く、101回で平易であった法規は約30%低かった。例年通り、物理、薬剤、実務を中心にグラフ・計算問題が多く出題され、化学は医薬品構造式に関する問題が多かった。今後もこの傾向は変わらないと考えられる。改訂コア・カリで統合された薬理と病態・薬物治療は、国試の出題基準では別々になっているが、102回の「薬学理論問題」において、同一症例に対する問題で薬理と病態・薬物治療の連問として出題された。

 3)一般問題の「薬学実践問題」は、「実務」のみの単問と「実務」とそれ以外の科目とを関連させた連問形式の「複合問題」からなる。「複合問題」は、症例や事例を挙げて臨床の現場で薬剤師が直面する問題を解釈・解決するための資質を問う問題で、実践力・総合力を確認する出題である。102回の複合問題には、化学療法のレジメンをもとに遺伝子診断に関する実践的な問題が科目をまたいだ4連問(薬剤、薬理、2題の実務)で出題された。今後も長期実務実習の成果を問う実践的な問題は継続的に出題されるであろう。

 4)薬剤師国家試験は2日間で実施され、「必須問題」は1問1分、「一般問題」は1問2.5分で解くことになっている。時間配分を考えて、難易度の高い問題を飛ばし、解きやすい問題から解くのもよいであろう。その際は、マークシートのつけ間違いには十分に注意してほしい。

 5)101回から適応された改訂後の合格基準を表4に挙げている。合格基準は一部改訂され、これまでの「総得点率65%以上という絶対基準」から「平均点と標準偏差を用いた相対基準」に変更となり、必須問題を構成する各科目の足切りを50%から30%に引き下げたほか、35%に設定されていた理論・実践の各科目の足切りは廃止となった。しかし「当分の間、全問題への配点の65%以上であり、かつ、他の基準を満たしている受験生は少なくとも合格となるように合格基準を設定する」とある。

3 科目別総評と科目別102回の傾向

■「物理」

 難易度は、「必須問題」はやや平易、「理論問題」はやや難、「実践問題」は物理:難、実務:中等であった。必須問題は、101回と同様に知識の確認をする問題が多かったが、他科目の知識を必要とする問題もみられた。理論問題は、物理化学ではグラフや文章を読み取り解答する問題、計算問題などが難解であった。一方、分析化学は例年通り局方の問題が多く、既出問題を解くことで正答できる問題が出題されている。実践問題の物理領域は難易度が高く、図から状況を判断して解答する問題、グラフを用いた問題、構造式を用いて考える問題が出題されているため、考える力や他科目とのリンクが重要であった。全体として、既出問題からそのままの出題は非常に少なく、今後も既出問題を暗記ではなく理解して解き、出題されている内容を応用できるようになる必要がある。

■「化学」

 難易度は、「必須問題」はやや平易、「理論問題」は中等、「実践問題」は化学:やや難、実務:中等であった。必須問題は近年の傾向と同様、全ての問で構造式が出題されていた。また生体成分のアミノ酸の部分構造と関連させて塩基性の強さを問う問題もあった。理論問題は近年の傾向と同様、生薬の1題以外は構造を絡めた問題であった。化学反応の問題は、単に反応生成物を問うのではなく、反応機構を理解した上で解答する問題も出題された。実践問題の化学は、医薬品の作用機序を化学反応で問う問題、グルタチオン抱合体の構造を問う問題など、医薬品に化学反応を絡めた出題が見られた。全体的に構造を絡めた問題、生体成分や医薬品を絡めた問題など、暗記ではなく、構造を見て判断させる問題が多く出題されていた。生薬は、既出の「日本薬局方」生薬ではなく、初出題が例年に比べ多かった。

■「生物」

 難易度は、「必須問題」は平易、「理論問題」は難、「実践問題」は生物:やや平易、実践:中等であった。必須問題は、既出問題の内容を理解していれば解答を導きやすい問題であった。例年通り、模式図(消化器)を用いた問題や真菌の特徴を問う基本的な問題が出題された。理論問題は、近年では最も難易度が高かった。図や構造式などを用いた問題は5題あり、siRNA導入実験、移植片拒絶反応と遺伝子型に関する問題は初出題であった。既出問題の知識だけではなく、幅広い深い知識と文章の読解力、考える力が必要とされた。実践問題は、「バイオ後続品」、「エコノミークラス症候群」、「褥瘡」、「統合失調症」、「高カロリー輸液療法」など、より実際の医療現場を意識した問題が出題された。全体的としては、既出類似問題が複数出題されているが、一方でバイオ医薬品や褥瘡の問題に見られるように、今まで以上に医療を意識した幅広い深い知識が求められる問題が多く出題された。

■「衛生」

 難易度は、「必須問題」はやや平易、「理論問題」は中等、「実践問題」は衛生:やや平易、実務:平易であった。必須問題は、構造の知識を問う問題が多く、毎年話題となった感染症などの事項が出題されるが、今回は風疹やE型肝炎について2題が出題された。理論問題は、計算問題が例年と比べて多く出題された。法律に関しては、101回に引き続き、新たに制定された食品表示法の内容に関しての出題があった。実践問題は、既出問題を理解していれば解ける問題が多かった。「高カロリー輸液」、「予防接種」、「乱用薬物」、「医療廃棄物」、「話題性のある感染症(院内感染症や性感染症)」などが出題された。また、学校薬剤師に関する問題が2題と多かった。全体的に、近年とほぼ同じ難易度であった。基本は既出問題の知識で解けるものではあるが、図表などでの出題が多いため、問題を解く前にまず問題文をよく読み内容を理解することが重要である。

■「薬理」

 難易度は、「必須問題」は平易、「理論問題」は中等、「実践問題」は薬理:やや平易、実務:やや平易であった。必須問題は、既出の薬物名及び作用機序を問うものが中心であった。また、シルデナフィルと硝酸薬の相互作用、利尿作用を生体物質の変化で問う問題など新傾向の問題も出題されている。理論問題は、未出題薬物の作用機序を問う内容も出題されているが、既出問題の内容を理解していれば正解を導ける問題がほとんどであった。また、化学構造から考える問題、薬理と治療との連問など、新傾向の問題があった。実践問題は、現場を意識した内容が中心であり、初めの問題で正解を導けないと、次の問題も正解することができないものが多く出題された。新傾向では、検査所見から原因医薬品を推定する問題が出題された。全体として、未出題薬物も出題されたが、既出薬物の作用機序を理解していれば正解できる問題であった。しかし、病態・薬物治療との複合性が高い問題が出題されており、既出内容の徹底した理解と治療との壁をなくした学修が求められる傾向であった。

■「薬剤」

 難易度は、「必須問題」はやや平易、「理論問題」は中等、「実践問題」は薬剤:中等、実務:やや難であった。必須問題は、既出の知識を中心とした出題であり、既出問題の知識が定着している学生には得点しやすい問題であった。また、薬剤では初めて化学構造を選択肢に使用した出題もあり、出題の切り口の工夫がうかがえる内容であった。理論問題は、幅広く学習をしていた学生は得点しやすい問題であった。また、物理薬剤学の範囲では物理化学(基礎)に近い内容の出題が見られた。製剤学の範囲では17局改定内容についても触れた出題があった。実践問題は、現場で実際に使用されている薬物を中心とした出題であった。病院薬剤師の現場を想定した出題が多数みられた。また、製剤学の範囲では17局改定内容について触れた出題があった。全体的に、必須問題と理論問題は既出問題における出題内容の理解、実践問題では現場で使用される薬剤についての知識を意識した出題傾向であった。計算問題は例年通り出題されている。

■「病態・薬物治療と情報」

 難易度は、「必須問題」はやや難、「理論問題」は難、「実践問題」は病態・治療:中等、実務:やや難であった。必須問題は、病態・薬物治療10題、情報・検定5題の出題であった。情報・検定では、t分布に関する問題が新規の内容であった。理論問題は、病態・薬物治療11題、情報・検定3題、テーラーメード1題の出題であった。全体に病態・薬物治療の問題は、比較的正解しやすいものが多いが、病態と生体リズムに関する問題など難解なものが含まれていた。情報・検定に関しては、検定手法を問う問題などが出題され、詳細を問う内容であり、難解であった。実践問題の患者の症状より重症度を判定し薬物を選択する問題、ブルーレターが発出されている薬物に関する内容は、医療現場を反映する問題であった。インタビューフォームの情報を利用して解答する難しい問題も出題されていた。全体的に難易度が高かった。新規の疾患での出題はないが、今まで出題された疾患においても出題の傾向が変わり、より詳細な内容を問う問題が多かった。情報・検定に関しては、検定法の選択など実践的なものが出題され難易度は高かった。

■「法規・制度・倫理」

 難易度は、「必須問題」は平易、「理論問題」はやや難、「実践問題」は法規:中等、実務:平易であった。必須問題は、9割以上得点することも可能であったと考えられる。内容は97回以降の国試で既に出題されたものが多かった。理論問題は、医薬品医療機器等法の問題が3割と多かったが、他の問題は偏りなく出題されていた。例年よりも解答し難い問題が増えており、半数以上の問題に1~2記述は新傾向または10年以上前の既出問題の記述が見られた。なお、旧制度名が関係する問題が初めて出題された。実践問題は様々な場面で薬剤師としての対応を求める問題が多かった。個人情報の保護に関する法律、CRCとしての役割は新規の内容が3~4記述含まれており、より深い知識や考える力が求められた。また、医薬品・医療機器等安全性情報報告書を用いた記入事項に関する内容は初めて出題され、実践的な問題であった。全体的に、近年の試験では最も難易度が高かった。範囲は満遍なく出題される傾向は変わらず、内容については、既出問題中心の知識だけでは解答を導けない問題が増加している。

■「実務」

 難易度は、「必須問題」は平易、「実践問題:実務の単問」は中等であった。必須問題は、薬剤師業務の基本的用語~漢方の副作用と基礎的な内容、病院や薬局に関する業務内容についての出題、既出問題に類似した内容が多く出題されており、得点しやすい問題であった。特定生物由来製品や血液汚染など血液関連問題が多く(3題)出題されている。また、新しい用語(MMSE)についても出題された。実践問題(実務)は、副作用・中毒関連の問題、計算問題、注射・輸液関連の問題が多く、出題範囲に偏りがあった。また、考える力や問題解決能力を必要とする問題も多く出題されていた。全体的に、既出内容の理解や計算問題・情報活用問題など新問への対応ができれば得点は伸びたと思われる。実務実習の成果を問う問題も多く出題されていた。



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