ニュースダイジェスト

2017年5月1日 (月)

薬学生新聞

薬剤師の専門性発揮へ提言‐働き方ビジョン検が報告書

 厚生労働省の「新たな医療のあり方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が報告書をまとめた。医師の過重労働が課題になる中、医療従事者間の業務分担と協働を最適化する観点から、薬剤師に対して「これまで以上に専門性や能力を発揮することが期待される」と強調。薬剤師によるリフィル処方への対応を可能とするよう検討すべきとしたほか、処方箋40枚につき薬剤師1人の配置基準の見直しや箱出し調剤への移行、かかりつけ薬剤師指導料の要件見直しなども提言し、薬剤師の業務を後押しする内容が並んだ。

 報告書では、医療従事者の生産性と付加価値を向上させる上で、薬剤師の専門性や知見は極めて重要とし、これまで以上にその能力を発揮することが期待されると強調。今後、人材不足に対応し得る効率的で生産性の高い業務にシフトしていくため、薬学6年制教育で培われた専門的知見を生かし、調剤主体の業務構造からの変革を提言。専門職として処方内容を分析し、薬物療法のプロトコルを策定する機能を強化すべきとした。

 一定期間内であれば繰り返し利用可能となる「リフィル処方」の導入についても触れ、予め医師から指示されている場合に、医師との連携のもとで薬剤師等によるリフィル処方への対応を可能とするよう検討すべきと明記。さらに調剤業務について、機械化、オートメーション化できる部分については効率化を進めるとし、処方箋40枚につき薬剤師1人の配置等、処方箋の枚数に応じた薬剤師の配置基準は、「実態と今後の効率化の可能性を踏まえて見直すべき」と踏み込んだ提言を行った。

 2016年度調剤報酬改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」の要件見直しも要求。薬剤師の多様な働き方を確保する観点から、同加算の施設基準である週32時間以上勤務などを念頭に、実質的に常勤薬剤師に限定されることのないよう要件見直しを図ることを求めた。

肝炎偽造薬で業務停止命令‐奈良の薬局、東京の卸業者に

 奈良県と奈良市は3月16日、1月に県内の薬局でC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が患者に調剤された事件を受け、薬局チェーンの関西メディコ(奈良県生駒郡平群町)に対し、薬機法に基づく5日間の業務停止命令を出した。また、東京都は4月12日、ハーボニー偽造品流通に関与した卸売販売業者であるエール薬品と大興薬品の2社に対し、薬機法に基づく業務停止命令を出した。停止期間は、それぞれ12日間、8日間。奈良県の事例では、管理薬剤師が責任を果たしていなかったとして管理者の変更も命じた。薬局が業務停止命令を受けるのは初めてのケースとなった。

 奈良県と奈良市の行政処分の対象となったのは、サン薬局平群店で偽造品を仕入れて、箱や添付文書がないことを確認しなかったこと、平松店で偽造品に疑問を持たないまま譲り受け、調剤して患者に交付した行為。県は、これら行為を重く見て、今後偽造薬が流通したときに対応できるよう薬局の体質を改めさせるためには、薬機法に基づく厳しい処分が必要と判断した。

 一方、東京都による業務停止の行政処分対象となったのは、エール薬品と大興薬品の2社。都は3月に業務改善命令を出していたが、エール薬品はハーボニー偽造品を個人から仕入れ、薬機法に規定された譲渡人に関する記録を正確に行わず、架空の会社名を記載。また大興薬品は、エール薬品から偽造品を仕入れ、卸売販売業の許可を得ていない大阪府の業者に販売したことが薬機法に抵触すと判断した。

 2社の処分期間の違いについては、エール薬品は法的に見て個人から偽造品を仕入れた点、架空の会社名を記載する意図的な記録の改ざんを行った点で悪質性が高いとし、エール薬品には4日間長い業務停止処分を下した。

臨床研究法が成立、「特定臨床研究」を規制‐中止命令、罰則規定も

 臨床研究の実施手続きや製薬企業から受けた資金提供について契約締結や公表を義務づける「臨床研究法」が4月7日、参議院本会議において全会一致で可決、成立した。未承認薬や製薬企業から資金提供を受けて実施される臨床研究を「特定臨床研究」と位置づけ、これらにモニタリングや監査を義務づけるほか、実施基準に違反した場合は厚生労働大臣による中止命令、3年以下の懲役か30万円以下の罰金の罰則規定を設けた。今後、省令で定める臨床研究実施基準等で被験者保護などについても明確に規定する。

 特定臨床研究の実施に当たっては、臨床研究法を遵守する義務が生じる。既承認薬を用いた製造販売後の臨床研究や製薬企業から資金提供を受けていない臨床研究、手技などに関する臨床研究を行う場合も法律を遵守することを努力義務とした。

 採決に当たっては、臨床研究法の施行に当たり、国際人権規約の規定の趣旨を尊重し、被験者保護に万全を期すことや実施基準で被験者の権利尊重を明確に規定することなどを求める附帯決議を採択している。

 審議を行った衆院厚生労働委員会、参院厚生労働委員会では、委員から被験者の人権保護、権利規定を明確化するよう求める声が相次いだことから、附帯決議では、国際人権規約の規定の趣旨を尊重し、被験者保護に万全を期すことや実施基準等で被験者の権利尊重を明確に規定することを求めた。

 また、臨床研究法の対象とならない手術、手技等の臨床研究対象者を含め尊厳、権利を保護する対応の検討を求めた。



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