実務実習の重要性が際立つ内容‐第99回薬剤師国家試験を振り返る

2014年5月1日 (木)

薬学生新聞

領域別の総評と第100回の傾向

表 第99回薬剤師国家試験の難易度

物理

 難易度は「必須問題」が中程度、「理論問題」と「実践問題(物理)」は高いという結果であった。全体として既出問題からの出題が少なく、グラフや計算問題が多く、必須と理論では高校化学・物理の範囲からの出題が、また実践では実務に際して起こる物理的現象に基づく理由や原理を問う基礎から応用まで出されていた。低学年時の基礎力からそれにつながる応用力まで習得していなければ得点できない試験であった。第100回でも必須、理論、実践にかかわらず、グラフや計算問題が多くなり、難易度は高いであろう。また既出問題の丸暗記では対応できない問題が増えてくると考えられる。

化学

 難易度は「必須問題」が中程度、「理論問題」と「実践問題(化学)」はやや高かった。全体的に正確な知識に加え読解力、判断力、問題解釈・解決能力を必要とする問題が出題されていた。また、必須、理論では、知識のみではなく、理解をした上で考えて答えを出すことが求められていた。既出問題や知識の暗記のみでは対応できず、反応等を理解した上で判断させる問題が多く出されていた。有機化学では構造を書いて判断する出題はなく、与えられた構造から判断する出題がみられた。第100回も、応用力と問題文から課題を抽出する問題解決能力を必要とする出題が続くと予想される。正確な知識を適切に使えるようになる必要がある。

生物

 難易度は「必須問題」は低く、「理論問題」と「実践問題(生物)」は中程度であった。98回と同程度の難易度・傾向であり、正解するためには、正確な基礎知識と、それを応用する力が必要である。実践では、組織図、実験操作、添付文書情報から考えさせる問題も出されており、問題文を理解する読解力が求められた。第100回では、既出問題ベースや新傾向の問題でも理解して、その知識をどう使うか、という問題解決能力が求められる出題が多くなると思われる。

衛生

 難易度は「必須問題」が低く、「理論問題」と「実践問題(衛生)」はやや高い。全体として97、98回に比べると、既出問題の類題や基本的な問題が多いため、理解していれば得点しやすかったと思われる。しかし、実践で見られた社会的に話題となっている新しい内容の出題が多いため、新聞・ニュースなどで正しい知識を知っておく必要がある。第100回は基本的かつ重要な内容から、社会的に話題の事項まで、幅広く出題されると思われる。また第99回で出題がなかった異物代謝、代謝的活性化、化学物質による発癌などの出題が予想される。

薬理

 難易度は「必須問題」が低く、「理論問題」と「実践問題(薬理)」はやや高かった。出題基準を網羅する形で、万遍なく出題されている。医療現場で実際に使用される薬物、新しい薬物が多く出題されている。また、医療現場で想定される場面を意識した問題が増加し、動物実験やグラフ問題など非臨床に関連する問題も出されている。今後は、医療現場で起こりうる状況を問題として問う形式が増えてくることが考えられる。出題される薬物も医療現場での使用状況を踏まえ比較的新しい薬物の出題も増加してくると思われる。また複合問題では、処方形式だけでなく、患者背景を基にした問題が増えてくることが予想される。

薬剤

 難易度は「必須問題」が低く、「理論問題」と「実践問題(薬剤)」はやや高かった。全体的にいままでの既出問題で出された重要な内容と知識が多く出題されていた。必須では具体的な薬物名での出題、理論ではグラフや計算問題が、多く出題されている。また実践は、一般医薬品や副作用、併用禁忌、投与計画に関する内容を中心とする実践的で重要な内容であった。連問間の関連性が年々高まっているなど、より医療現場を意識した出題となっている。今後も計算問題や図の読解の問題に加え、既出問題において重要であった内容に関して、問い方を変えて具体的な薬物を用いることで「考える力」を問う出題がされると考えられる。

病態と治療・情報

 難易度は「必須問題」が低く、「理論問題」は高く、「実践問題(治療・情報)」は低かった。全体を通して実際の医療現場やガイドラインなどを重視する問題が多く出されていた。特に理論では、医療現場で実際問題とされる副作用やガイドラインでの治療方針に関する難しい問題が出されていた。また、情報、検定に関しては例年通り難易度が高く、特に検定、テーラーメード医療に関しては解答が困難な問題であった。出題された疾患は、メジャーな疾患に関するものが多いが、腫瘍崩壊症候群など話題性のある疾患もあり、医療現場を意識した問題が増加している。

 第100回では、必須は一般的な疾患に関する問題が出され、理論では実際の医療現場を重視してガイドラインの詳細や薬剤の特徴などに関する問題、症例問題はより実践的に患者情報を読み取り治療薬などを選択する問題が増えると思われる。また情報・検定は、今後も新しい検定法などの出題が予想される。

法規

 難易度は「必須問題」が低く、「理論問題」は中程度、「実践問題(法規)」はやや高かった。全体的に前回より、やや難しい問題であった。既出問題の知識で対応できる問題は多いが、詳細な範囲まで学習する必要があった。第100回は、改定された法・制度が出題され、法改正にかかわる内容や実践で問われやすい医療保険制度や管理薬の問題が出題されると思われる。今後は、新傾向の問題や「薬局では…」など場面設定を必要とする問題が増えると予想される。また既出問題を解く場合は、暗記ではなく周辺知識を理解することが大切である。

実務

 難易度は「必須問題」が中程度、「実践問題(実務)」は中程度であった。「実践問題(複合問題の実務)」の難易度は、物理と法規が低く、化学・衛生・薬理・薬剤は中程度、治療がやや高く、生物は高かったという結果であった。「実践(実務単問)」の出題は、既出問題をベースにした出題や周辺知識を活用する問題など平易な問題があった。

 しかし、必須、実践ともに例年に比べ、実務実習の経験を問う実践的な内容であった。「複合問題の実務」では、各医薬品の正確な知識が必要とする難しい問題や服薬指導、製剤の特徴について添付文書の詳細な情報まで問われる問題も出されていた。また、症候診断に関する問題など、98回に比べて実務実習の経験を問う実践的な内容の問題が多く出されている。第100回の必須は、出題基準を網羅した幅広い知識が問われることが予想される。また暗記だけでは得点しにくい、応用力が必要な問題や図を引用した問題、実務実習の経験を問う実践的な内容の問題が出題されると予想される。


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