【座談会】これからの保険薬局、求められる人材像と方向性

2015年3月1日 (日)

薬学生新聞

解禁日の変更が相互に影響

 ――採用に向けてどのようなアプローチをしていますか。

 沢志 今の学生は就職先を決めるに当たり、採用担当者の説明だけでなく、実際に働いている先輩社員や友人から情報を得ているようです。

網氏

網氏

  Webでの情報や合同就職セミナーなどが学生側との一次的な接点ですが、それとは別に同じ大学出身の先輩と話をさせたり、現場で働く職員と接点を持ってもらい、働く環境を具体的にイメージがしやすくなるよう努めています。

 われわれのような採用担当者はどうしても「話がうまい」と思われます(笑)。学生は「自分が働く場としてどうか」という観点で、情報を取りたいようですから、現場の人間と交流させることは彼らのニーズに合っているのです。

 橋場 われわれのような規模の企業の場合、採用活動に多くを割けないので、大手求人媒体、学内企業説明会でファーストコンタクトを取るというのがメインです。

 ただ、富山出身者が関東・中京圏・関西にも分散し、各大学の富山出身者は1人、2人ですし、そこに人材投入し、求人活動を行うのは困難であり、課題でもあります。

 ――就職活動の時期が繰り下げられましたが、内定を出すまでのスケジュールはどうなりますか。また、どういう対策をとっていますか。

 藤田 これまで就職説明会の解禁日は12月1日、翌年4月には内々定が出ているという流れでした。しかし、今年から就職説明会の解禁が3月1日以降、採用試験の開始は8月1日以降と大きく変わりました。企業側も学生側にも戸惑いがあります。3月1日までの採用に関わる活動も課題です。

 そこで多くが求人活動とは別に、求人媒体などの主催による国試対策の勉強会など介し、3月以前から学生と接点を持とうと試みています。わが社も独自に4、5年生を対象に勉強会を1月に実施しましたが、あまり集まりは良くありませんでした。

インターンシップで企業体感

 ――アイセイ薬局はどうですか。

  国家試験対策に向けたサポートのほか、インターンシップを始めています。店舗業務から、医療モール開発のマーケティングなどの仕事まで、志向に応じて幅広く体験してもらっています。学生側のニーズもあり、1年次から参加できるプログラムにしており、相互にメリットがあると考えています。

松井氏

松井氏

 松井 当社も同じくらいのタイミングで、取り組んでいます。薬局で働くということだけに興味を持つ学生は減っているように思います。特に実務実習を経験するので、インターンシップで薬局業務を体験することには、あまり興味がないようです。

 私のような人材採用の仕事のほか、営業、教育研修、薬の購買など多種多様な部署、業務があります。そのため本社業務を体験してもらったり、薬局業務でも在宅に特化した研修や私が在籍した大学に一緒に行き、就職窓口の方と話をするといった体験・機会も提供しています。インターンシップは総合的に「企業で働くこと」を経験してもらう、有用なツールだと思っています。

 藤田 私も大手求人媒体を介しインターンシップ参加を呼び掛けていますが、なかなか集まりません。何年生が中心で、何人くらいですか。

 松井 昨年はインターンシップだけで40人。年明け後は30人の学生が参加しています。やはり実務実習の合間に来る5年生が中心です。

 昨年度までは12月から求人活動をスタートできた状況を考えると、この時期に接している薬学生の数は圧倒的に少なくなっています。

  わが社も5年生が多いです。「何社くらい参加しましたか」と聞くと、だいたい「3社」や「4社」という答えが多く、参加する学生は、非常に感度が高い印象を受けます。

 ――期間は。

  本来的なインターンシップは1~2週間ですが、実際には1日、2日というケースが多いです。

 松井 1日完結型ですが、連続しない3日間、あるいは4日間という日程を用意しています。

入社後の研修は各社が工夫

 ――ところで6年制の薬剤師が輩出されて3年経ちましたが、何か4年制との違いは感じますか。

 橋場 コミュニケーション能力が高くなっていると感じます。外部に長く実習に出すので、大学側もそういう面で学生を鍛える努力をされているのでは。

 ――長期実習による効果という面ではいかがですか。

  OSCEに通って実務実習も2カ月半ですし、職員並みに動いている学生もいます。

 松井 実務実習を経験しているため、入社後の研修期間を短くした会社もあると聞いていますが、当社は基本が大事と考え、従来通りの期間行っています。

 また、私もコミュニケーション力や場慣れという部分では変化を感じます。ただ、気になるのは、決まった部分はこなすのですが、例外や突発的な事に対する対応力という面では、大きな差があるようには思えません。

 橋場 フロンティアさんでは入社後の研修を一般社員と合同で行われていると聞きました。一般社員に比べていかがですか。

  グループ各社の大卒新入社員と一緒に1カ月間研修を受けてもらいます。その中にはマナー研修や自己啓発のほか、グループワークもあります。各班からの発表に順番が付けられたり、班内のディスカッションにおいても聴く姿勢や発言内容に対し、互いに評価を行います。

 学生時代は自分の言動を評価されたり、自らの意見を否定される経験もなかったと思います。その場ではつらい思いをしているようですが、ほとんどの新入社員がこの研修を通して、一回りも二回りも人間的に成長してくれています。

 ――入社後の研修の話が出ましたが、アイセイ薬局ではいかがですか。

  導入研修として、まず4月に2週間の研修をします。次に1カ月半の実務研修をOJTで行います。

 松井 期間は3カ月半ですが、中身は少し特徴的です。始めの2~3週間、集合研修した後、現場で1カ月強、薬局業務の基本となる調剤を身に付けていただきます。

 その後、本社で服薬指導、疑義照会、薬歴の書き方など、次のステップの集合研修を行います。その後再び現場に出てもらい実践し、最後に再び本社でフォローアップ、まとめをします。集合・現場研修を交互に行っています。

 集合研修では教える側も大変ですが、各段階ごとに到達目標を立てて一つひとつ丁寧にという考え方です。

 藤田 私どもは入社後、社会人としてのマナー講習を2日間、次いで2カ月間、座学とマンツーマンのOJTを各店舗を回りながら行います。特徴は社内講師と社外講師を組み合わせた研修方式です。

 社内講師は例えばMR等の多職種経験者もいるので業界の話題、あるいは癌、在宅業務など専門分野に特化した講義をします。医療全体についてなるべく広く知ってもらうのが狙いです。

 その一環としてアメリカの医療事情に触れる研修もあります。初年度から約1週間、ロサンゼルスの病院と薬局、老人ホームなどを見学します。

 昨年も5月に実施しましたが、今年は、少し実務経験した後の9月に変更し、随行を含め7人で、1週間の研修を実施しました。

 橋場 わが社も集合研修はしますが、基本的にOJTが中心です。

 今までの調剤薬局業務は患者中心、処方医との連携が重要でした。今後は地域包括ケアシステムの中で多職種と連携も必要です。より一層、コミュニケーション能力が必要とされます。

 先ほど、訪問看護事業を始めたと申しました。地域に貢献したいというのが大きな目的ですが、薬剤師に臨床経験をさせたいという思いもありました。社内にそういう部門があれば、自前で研修できるメリットもあります。

 いまだ、通常研修に落とし込む段階には至っていませんが、地域社会の中での多職種と連携した研修体制を構築したいと思っています。薬剤師と看護師が相互に分かり合った上で、トータルで地域の在宅医療体制に貢献していきたいと思っています。


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