【座談会】これからの保険薬局、求められる人材像と方向性

2015年3月1日 (日)

薬学生新聞

望まれる広い視野の人材

 ――今後の焦点の一つ、在宅医療の話が出ましたが、次代に向けた運営戦略、薬局の方向性についてうかがえますか。これは、各社が求める人材像にもつながると思います。

沢志氏

沢志氏

 沢志 地域によってもニーズは違います。当社では調剤薬局事業と福祉用具事業の二つが大きな柱ですが、地域によっては訪問介護、訪問看護、ケアマネジメント、サービス付き高齢者住宅なども実施しています。医療・福祉・在宅というキーワードのもと、地域の方々のニーズに合わせた健康と暮らしを守るサービスを目指しています。

 ただ、模索中というところです。とはいえ処方箋を待つのみの薬局もあり、今後は、積極的に外へ出ていくことが必要だと思います。

 薬剤師自身が、意識と行動力を持ち対応しなければ、地域の中で他職種の方に遅れを取ります。いまだ、他職種側から見て地域包括ケアシステムの中に薬剤師が入っていないと見られているように思います。実際、多職種による会議に呼ばれない、入っていないということもあります。

 ――その点は、地域薬剤師会の活躍に期待したところです。網さんはいかがですか。

  薬剤師に求められる仕事や役割は、超高齢社会の中で変化してきており、調剤報酬改定の中にも国のビジョンやメッセージが込められています。例えば、後発医薬品の使用促進、在宅医療への関わりの強化などがそうです。

 薬剤師でなければできないことにもっと時間を割けるように、できるだけ機械化を推進し、薬剤師が思考する時間や患者に対応する時間を十分に作る。従来の業務フォローをさらに改善するための対策を打ち出しています。

 時代の変化に沿って求められるものは変化しますが、薬剤師というリソースを適正に活用できる環境を会社側が構築すべきと考え、随時進めています。

役割拡大に向け資質向上を

 ――40枚に1人という規定ですが、1日に20人、多くても30人対応が限界というのが現状だと思います。そういう意味でも機械化、IT化を進めて、環境を整えているということですね。

  薬剤師が患者、あるいは介護の利用者ときちんとコミュニケーションを取ることに、さらに力を注ぐべきだと考えています。

 藤田 薬剤師1人当たり40人という員数問題については、いろいろな見方があると思いますが、員数が少ないほど医療の質は高くなります。一方、経営者の立場では、対応する患者数を増やしてもらわないという思いもあり、難しい問題だと思います。

 松井 在宅医療の充実は必須であり、今後ともしっかり対応していきたいと考えています。ただ、いまだスタンダードがない状況であり、模索段階かなと思っています。

 当社でも網さんも言われたように機械化を進め、作業時間を減らし、薬剤師や医療事務員が、患者にしっかり関わることに重きを置いています。

 その一環として外部からコミュニケーションの専門家を招いて研修を実施、既に4年目です。医療事務員を処方箋内容を入力する事務員という扱いではなく、メディカルコンセルジュという、ホテルライクな職種へと昇華できないかと教育を進めています。

 また、事務員を栄養士、管理栄養士に替えるといった対応も進めています。健康茶話会などを開催し、健康相談や栄養相談の機会を増やし、地域とより深くつながりを持つことで、処方箋がなくても来てもらえる、そういう薬局づくりに努めています。

 その意味では、単に決まった時間だけ働く、言われたことだけするというのでなく、薬剤師というライセンスを持つ人間として、何ができるのか自分で考え行動できる人、そういう人材が求められていると思います。

 橋場 2014年1月に厚生労働省の研究班が「薬局の求められる機能とあるべき姿」をまとめました。14年の調剤報酬改定に組み込まれたところがあります。報告書はすぐに実現することが難しい事項も少なくありませんが、今後いろいろな形で検討され進んでいくと思います。一つの指標にはなります。

 行政がどういう形の医療を目指し、薬局には何が求められているのかを考え、行政と共に進んでいく必要があります。行政との連携を踏まえた薬局運営、業務推進が望まれます。そこで社員には、行政の方向性にも関心を持ってもらいたい、せめて選挙には行くように話しています。

 将来を担う学生にも同様に政治、行政の方向性などを意識してほしいと思っています。そういう意識が、社会性や人間力にもつながると思います。地域の中の薬剤師、人間ということを考えれば、偏らず、広い視野を持てる人材を、現場でも育てていかなければならないと思います。それは薬学生にも求めていくべきことだと思います。

 藤田 先ほど地域包括ケアシステムにおける薬剤師、薬局のあり方について話が出ましたが、在宅医療において薬剤師も含め、多職種が連携する必要性が指摘されています。

 これからの医療全体を考えますと、薬剤師がもっと大きく役割を担うべきだと思います。6年制になった背景には、そういう期待があったと思います。

 医師、薬剤師、看護師、その他医療スタッフの役割はある程度決まってはいますが、医師の負担を軽減する、さらに高度医療に向けもっと薬剤師の職能を拡大していってほしいと考えています。そのため薬剤師、薬学生についても資質向上は重要です。

 高齢者の増加など背景に、医療費は拡大しています。医療経済を考えた対応は必須であり、薬物治療にも医療経済の考え方を取り入れる必要があります。大学教育においてももっと反映されるべきだと思います。

 ――これから就職を考える学生に向け、重要なメッセージをたくさんいただいたと思います。本日はお忙しいところありがとうございました。


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