第100回薬剤師国家試験を振り返る

2015年5月1日 (金)

薬学生新聞

第100回の領域別総評と第101回に向けて

物理

 難易度は「必須問題」は中等、「理論問題」「複合問題(物理)」は高く、「複合問題(実務)」は中等。既出問題からのアプローチを変えた問題、計算問題、グラフ問題、深い知識が求められる問題、他科目の知識を用いて解答する問題、新傾向問題などが出題されていた。高校から大学で学ぶ基礎的内容を含め学習しないと高得点は望めない考える力を必要とする問題であった。第101回でも必須、理論、実践にかかわらず、グラフや計算問題が多く難易度は高く、既出問題の丸暗記では対応できない問題が増えてくると考えられる。

化学

 難易度は「必須問題」はやや高く、「理論問題」は高く、「複合問題(化学)と(実務)」は中等。全体的に化学構造に関する出題が多くみられた。化学の基本的知識を応用する力や考える力を要する問題が多く、今後も、基本的な化学知識を医薬品に応用する問題が増えると予測される。一方、複合問題の実務では、手術時および術後の血糖コントロールに関する問題(問208)など、より実践的な内容を問う問題が出題された。第101回も応用力と問題文から課題を抽出する問題解決能力を必要とする出題が続くと予想され、正確な知識を適切に使える必要がある。

生物

 難易度は「必須問題」「複合問題(生物)」はやや平易、「理論問題」はやや難、「複合問題(実務)」は中等。全体的に第99回と比べやや難易度が上昇、必須、複合生物は同程度であった。理論問題では図表、グラフを使った問題が10題中8題で、思考力が必要とされるため、試験時間内で正答を出すことは難しかったと考えられる。出題分野は機能形態が7問、生化学4問、遺伝子3問、免疫3問、微生物3問と幅広かった。第101回では、既出問題ベースや新傾向の問題でも、理解し、その知識をどう使うか、という問題解決能力が求められる出題が多くなると思われる。

衛生

 難易度は「必須問題」は平易、「理論問題」「複合問題(衛生)と(実務)」はいずれも中等。既出問題をベースにした出題が多いが、得点しやすい問題と難易度の高い問題に二極化。丸暗記ではなく、本質を理解しているかを問う出題が多く、グラフや構造式の出題数は例年よりも増加、難易度のやや高い問題であった。いつも出題される社会的話題になったニュースは、08年に起きた事故米について出題された。第101回は基本的かつ重要な内容から、社会的話題まで幅広く出題されると思われる。

薬理

 難易度は「必須問題」は平易、「複合問題(薬理)」はやや平易、「理論問題」「複合問題(実務)」は中等。全体的に例年通り未出題薬物が多く出題されたが、過去によく出題された薬物で正誤の判断ができる問題が多く解答は可能であった。しかし、多くが既出問題の文章をモディファイした形式で、より応用力が必要となっている。第97~99回の問題からも類似問題が出題されていた。薬物の出題傾向は、実習の際に医療現場で使用されていた薬物の出題が増加している。

 今後は、医療現場で起こりうる状況を問う問題形式が増えてくることが考えられ、出題される薬物も医療現場での使用状況を踏まえ比較的新しい薬物の出題も増加してくると思われる。

薬剤

 難易度は「必須問題」は平易、「複合問題(実務)」は中等、「理論問題」「複合問題(薬剤)」はやや難。既出問題の内容をより深く掘り下げた知識を問う問題が多かった。また、テーラーメイド医療や服薬指導につながる剤形に関する内容など現場を意識した出題が多数あった。第99回と比べ計算問題の出題数は、理論は同等、必須・実践は減少。今後も計算問題や図の読解の問題に加え、既出問題において重要であった内容に関して、問い方を変え具体的な薬物を用いて「考える力」を問う出題されると考えられる。

病態と治療・情報

 難易度は「必須問題」は平易、「理論問題」は高く、「複合問題(治療・情報)」は中等、「複合問題(実務)」はやや難。第99回と同様に必須では点数の取りやすい内容が多かった一方、理論や複合問題に関しては考えて解答する問題が多く、難しい内容であった。特に複合問題ではお薬手帳や処方から確認する内容や糖尿病患者の対応など実践的な内容が多く、現場を意識したものが目立つ印象であった。また、第99回同様に遺伝子や受容体といったテーラーメード医療に関する問題も出題され、トピックスを意識したものが増加傾向であった。第101回では、必須は一般的な疾患に関する問題が出題され、理論では医療現場を重視しガイドラインの詳細や薬剤の特徴などに関する問題、症例問題はより実践的に患者情報を読み取り、治療薬などを選択する問題が増えると思われる。情報・検定は新しい検定法などの出題が予想される。

法規

 難易度は「理論問題」は平易、「複合問題(法規)」は中等、「必須問題」「複合問題(実務)」はやや平易。全体的にやや平易だが、必須問題は例年に比べ難易度は高いと思われる。出題範囲や傾向は第97回以降毎回変わっており、新傾向問題が増えている。また、複合問題だけでなく必須や理論においても計算式を読み取る問題(問79)や図を読み取る問題(問145)が見られるようになった。なお、薬事法改正は出題されず、14年10月施行の内容(医薬品リスク管理計画)が問146で出題された。今後は改定法・制度が出題され、法改正に関わる内容や実践で問いやすい医療保険制度、管理薬の問題が出題されると思われる。また既出問題を解く場合、暗記ではなく周辺知識を理解することが大切。

実務

 難易度は「必須問題」は平易、「実践問題(実務の単問)」は中等。問題配分はチーム医療など薬剤師の基礎から生活指導まで網羅されており、副作用関連問題や熱中症の対応、メタボリックシンドロームに関する問題など生活指導関連の出題が目立った。長期実務実習の成果を問う多くの出題がされ、今後も出題基準を網羅した幅広い知識が問われると予想される。暗記だけでは得点しにくい、応用力が必要な問題や図を引用した問題、実務実習の経験を問う実践的な内容の問題が出題されると予想される。


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