【対談 薬学生×薬剤師】薬のプロとして医療現場を支える‐病院薬剤師に求められる専門性

2017年7月1日 (土)

薬学生新聞


子育て中のスタッフが活躍中‐終身雇用にこだわる必要はなし

 ――大学の授業や一般教養以外で得た知識で役に立つことはどんなことでしょうか。

 石井 たくさんあると思います。患者さんと日々コミュニケーションを取るために雑学がとても役に立っています。学生の時から会話の引き出しを増やしておいたほうがいいですね。

 内海 薬学生って、他の学部よりも忙しいと思うんですね。勉強も授業も多いし、研究もあります。学業が忙しいので、どうしても視野が狭くなってしまいがちな部分があります。石井先生のおっしゃる通り、会話の引き出しを増やす、つまりいろいろなことに興味を持ち、勉強以外のこともできる範囲でやったほうがいいと思います。薬剤師になっても役に立ちますよ。

 ――休日はどのように過ごしているのでしょうか。

 内田 休日といっても、1~2割ぐらいは仕事をしていて、残りがプライベートという感じです。私は楽器が趣味で音楽をやっていますが、休日の使い方は人によってさまざまだと思います。休日でも自分の担当している患者さんが心配になる時がありますから、オンとオフを100%切り離せるかというと難しいと思うんですよね。医療従事者とはそういうものでしょうか。

 ――薬剤師の中で結婚、出産を経験し、子育てをしている方はどのぐらいいらっしゃいますか。

 石井 たくさんいますよ。子育て中のスタッフには、もちろん生活を考えて仕事をやってもらっています。例えば、DI室は17時には終わるので、なるべく「お母さん薬剤師」はDI室に配属して、早く帰れるようにシフトを工夫しています。それでも、お母さん方はとても頑張り屋で、週末でも自主的に出勤していたりするんですよ。

 私は管理職として、スタッフの家族の出産予定日を把握しています。男性の場合でも、妻の出産前後には夜勤に当たらないように配慮しています。その分は、他のスタッフが埋め合わせをするわけですが、自分が受けた恩を次の世代に返していくように上手く継続しています。

 ――結婚、出産などの大きなライフイベントをきっかけに、現場から離れていくことをどう思いますか。

対談 薬学生×薬剤師

 石井 私が考えるのは、大学病院は教育機関でもあるので、ここで学んだ経験をいろんな場所で広めてほしいですね。大学病院での経験を生かし、他の施設でもリーダーシップを取ってほしいです。また、教員として学生の育成に携わるのもいいですし、今は以前のような終身雇用の考え方は必要ないのではないでしょうか。しかも、薬剤師というライセンスがあるので、そのライセンスを武器にいろいろなことができるわけです。そういう意味では、どんどんプロモーションをかけてほしいですね。

 駆け出しの薬剤師であれば、レジデントとして2年間の間に全ての業務を経験した上で、病院に残ってさらに専門性を深めていくのもいいでしょうし、他の病院に異動して様々な経験を積んでいくのも良いと思います。そういった人材の流動の中で、自分が経験した良い部分は広め、足りない部分はフィードバックしていくサイクルができるのが私の理想ですね。

 大学病院は、やはり難しい疾患を抱えた患者さんが多くいますし、薬をたくさん使う患者さんもいるわけですから、大学病院でしか経験できないことを生かして、病院のみならずいろいろな分野でも活躍してほしいと思っています。終身雇用にこだわらずに、もっと将来について柔軟に考えてみてはいかがでしょうか。

勉強と遊び、バランス良く‐多様性に触れる経験が役立つ

 ――大学院に進学することについてはどう思われますか。

 内田 私が進学した当時は4年制薬学教育の時代だったので、薬学部を卒業して薬剤師免許を取得し、その後2年間の修士課程、4年間の博士課程に進みました。まずデメリットから言いますと、お金がかかることと、博士課程修了後の年齢ですかね。いまは6年制ですから、大学を現役で卒業して、ストレートで大学院に進学したとしても就職するのは29歳になりますし、20代の後半という青春時代の一番いい時期を研究室に閉じこもることになります。それをどう考えるかということでしょうね。

 私は現時点で大学院に進んだことを後悔していません。大学院で行った研究がいまの薬剤師業務に役立っているかというと、直接関わっていません。ただ、そういうことではなく、大学院では疑問点を見つけ、それに対してどうアプローチして結果を出せば知りたかったことが分かるのか、それをどう論文にまとめて発信していくのかという一連の思考プロセスが身につきます。その経験は、病院薬剤師になった現在でも役に立っています。

 ――学生時代に頑張ったことや心がけたことはありますか。

 内海 私は「とにかくいろんなことをやる」ことを目標にしていて、勉強も部活にも力を入れていました。学生時代は剣道をやっていたのですが、勉強しながら週5回は剣道に打ち込んでいましたね。もちろん、アルバイトもしていましたし、友達と遊んだり飲み会に参加するのも好きで、いろんなことを楽しんでいました。このように全てを後悔のないようにしたいと思っていて、学生時代にできることは全てやろうという意気込みでした。

 石井 私も部活に力を入れていましたね。全学部共通の部活に入っていましたので、学部を越えた交友関係がいまでも続いています。薬学部の中だけにこだわらず、いろんな人と出会い、付き合ってみてください。研究も学生の時にしかできませんので、社会人より時間も体力もある学生時代にぜひ研究に打ち込んでほしいです。

 ――最後に薬学生へのメッセージをお願いします。

対談を終えて

対談を終えて

 内海 勉強と遊びのバランス良く学生生活を過ごしてほしいと思います。私は大学院に進学しませんでしたが、いま薬剤師として仕事をしながら「もっと考える力をつける訓練をしておかなければいけなかったな」と実感しています。大学の6年間でも考える力を伸ばすことはできると思いますので、勉強や研究もしっかり取り組みつつ、自分のやりたいことにも力を注いでほしいです。一生懸命取り組んだ経験は、薬剤師でなくてもどんな仕事でも役立つと思います。ぜひ、考えるということを念頭に置き、いろいろなことに取り組んでほしいなと思っています。

 内田 学生時代は遊びつつも、礼儀などの基本的なマナーを身につけておくと、社会人になってスムーズに仕事ができると思います。研究についても、実験したら結果をきちんと考え、その結果が何を意味しているかまで考えてほしいです。教科書とは違い、答えが書いていないからです。まず自分で考え、そのデータを見てどう考察するかって部分が大事ですね。臨床現場に出ると分からないことだらけですので、自分がどう考えるかという思考を磨き、答えがないことにもチャレンジして取り組んでほしいです。残りの学生生活を勉強して、遊んで充実して過ごす中で、臨床現場に興味があったらぜひ薬剤師を目指してください。一緒に頑張りましょう。

 石井 最近は、連携や患者さんとの信頼関係ということがよく言われるようになりましたが、そこに至るには多様性を乗り越えなければなりません。薬学生の皆さんは、お互いに感性が似ていますので、一緒にいて居心地がいいと思います。

 でも、医療現場ではスタッフから患者さんまで、本当に多種多様な人がいます。それら全てに対応できるよう、多様性を受け入れる力を少しずつ訓練していかなくてはなりません。例えば、幼少期にお爺さん、お婆さんと過ごしてきた人は、病棟ですぐに年配の方と打ち解けて会話ができたりするんですね。ところが、お年寄りと全く会話にならない人もいます。そうした多様性を受け入れられる、「社会にはいろんな人がいるんだな」ということを、少しずつ学生の時から知る機会を意識して作り、それに慣れていく。そういう学生生活を過ごしてほしいと思っています。


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