患者に寄り添い、新薬送り出す‐CRCのやりがいを実感 医療システム研究所 湊有希さん

2019年3月1日 (金)

薬学生新聞


湊有希さん

 治験施設支援機関(SMO)の治験コーディネーター(CRC)は私にとって天職――。SRDグループのSMO「医療システム研究所」で働く湊有希さんは、近畿大学薬学部卒では初となるSMO所属のCRCだ。「『患者さんと接する仕事×新薬開発』が叶えられるのは、CRCしかない」という強い挑戦心で、自身のキャリアを切り開いた。臨床試験に参加する患者のつらさや喜びと寄り添い、新薬を社会に送り出してきた経験はかけがえのない大きな財産となっている。現在では2児の母として後輩CRCを指導し、成長を見守る立場になったが、「この仕事がとても好きで、私が求めていたものを掴むことができた。もし機会があれば癌や皮膚科領域での治験を担当してみたい」と、後輩の指導、自身の成長と、実現したい目標はまだまだたくさんあるようだ。

 高校で理数系の科目が得意だった湊さんは、「資格を持ってずっと仕事をしていられる学部がいい」との母からの薦めもあり、薬学部を志望し、近畿大学薬学部に入学した。授業が続き多忙な大学生活では、バレー部での練習や、家庭教師とうどん屋のアルバイトと、充実した日々を送っていた。大学4年生時に所属していた研究室での研究にのめりこみ、大学院へと進み、2年の修士課程を経て、医療システム研究所のCRCへと入社した。

 近大薬学部卒業生では、湊さんがSMOに所属するCRC第1号で、薬学卒CRCの開拓者といってもいいかも知れない。大学で免疫抑制剤の作用機序を解明する研究を続けてきた経験から、新薬開発に携わりたいとの挑戦心が大きくなった。でも、患者と接する仕事もやってみたい。二つの要素を兼ねる仕事を探したときに、CRCがぴったりとはまった。医療システム研究所は、新卒社員を一定数採用していることに加え、給与や福利厚生なども充実していた。

 大阪支店に配属され、最初は先輩CRCと同行して、担当する医療機関で治験に参加する被験者の同意を取る仕事が任された。患者、治験を実施する医師、製薬企業、看護師、臨床検査技師、治験業務を受託するCROの臨床開発モニターと、様々なステークホルダーが治験に関与する中でCRCが調整役となる。決められたスケジュール通りに、事前に策定した治験実施計画から実際の治験業務で逸脱がないよう、スムーズに進めていかなくてはならない。

 「先生の了解が取れていても、看護師さんの了解が取れていなければ、治験がうまく進まないこともある。普段の診療で多忙な方々に対して、相手の立場に立って、治験の依頼をするように心がけた」と湊さんは話す。きめ細かな対応と周囲への気配りで、いっしょに仕事をする医師や看護師も次第に信頼を置いてくれるようになった。

医師と患者の架け橋に

 患者と接する中で、CRCのやりがいに気付いた。通常診療で潰瘍性大腸炎が悪化した方を対象とする治験で、従来使われている潰瘍性大腸炎の標準療法の継続か新薬かに分かれ、薬剤の効き目と副作用などの安全性を検討する二重盲検試験を担当した。同意説明を行っていたとき、恐怖と不安から泣き出してしまった患者がいた。治験開始時、治験薬投薬後2カ月後と、複数回にわたって大腸内視鏡検査を実施するのだが、最初に受けた検査が、患者にとって負担の大きいものだったからだ。

 「説明の途中で患者さんが泣き出すのは初めての経験で、内視鏡検査がここまでつらいものだったのか、患者さんの気持ちに寄り添わなければと思った」と湊さん。精神的に落ち着くまで、背中をさすりながら、『ゆっくり考えましょうか』と声をかけ、心の不安を取り除くようにした。医師には患者の思いを伝え、患者の負担が少ない形で、内視鏡を実施する方法を相談した。

 その結果、次の検査では痛みを抑えるために麻酔薬の使用を検討すること、観察部位を限定することで通常よりも短い時間で内視鏡検査を実施することが可能になり、患者も納得して治験参加を希望した。その患者は、みるみるうちに正常な状態へと回復していった。「本当に湊さんで良かった」。温かい言葉が今も忘れられない。

 治験に参加する患者から医師にはなかなか要望を伝えづらい側面もあり、そんな場面ではCRCが患者と医師の架け橋になる。治験実施計画で決められたルールが患者の治験参加のハードルになる場合に、内容を変更するのはなかなか難しいが、患者の負担が少しでも軽くなるよう、調整できるところは調整し、納得して治験に参加してもらえる環境を作っていく。

良き伴走者として指導

 現在は夫の仕事の都合で東京本社に転勤し、2人の子どもがいる。2度の産休・育休を経験し、時短勤務で後輩を指導しながら、CRCとして現場で働く毎日だ。数人のCRCが一つのチームで仕事を行い、患者に新薬を届けていく。チームの仲間に支えられているからこそ、自分も支えていく。後輩CRCの指導という明確な目標もできた。

 「自分もいろんな患者さんと接しながら、日々何をすべきかを発見し、成長してきた。自分の経験を伝えたい」。“失敗してもいいから、一緒に頑張ろう”とのスタンスで良き伴走者になり、後輩CRCが課題を乗り越えたら、褒めて成長の樹を伸ばす。後輩CRCが担当する医療機関でなくてはならない存在に育っていることが、湊さんにとって何よりも嬉しい出来事だという。

 まだまだCRCとしての目標もある。これまで経験してこなかった皮膚科・癌領域を対象とした治験を担当し、新たなステージに進みたい考えだ。

 薬学出身者として薬学生の後輩たちとも一緒に仕事をし、経験を伝えたい。「薬学部で学んだ知識があれば、CRC業務へスムーズに入ることができるし、病院での治験では何らかの資格を持った人でなければ、担当できない施設もある。薬剤師免許を持ったCRCは有利だと思う」。これから挑戦する仲間にも、大きな期待を寄せる。



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