【薬剤師になる前に~今だからOTC医薬品を学んでおきましょう!】第2回 なぜ?薬学生(薬剤師)はOTCに興味がないのか?

2015年5月1日 (金)

薬学生新聞

(株)スギ薬局、日本薬剤師会一般用医薬品等委員会委員
藤田 知子

藤田知子氏

 数年前に、ある薬科大学の4回生を対象にOTC薬やセルフメディケーションについて講義をしたことがあります。その授業では薬局でよく遭遇する軽度な疾病に対し、模擬患者さんの訴えに合うOTC薬を適切に選択し、販売するロールプレイングも行いました。当時の学生の意識や、その授業の効果、影響を知りたくて「OTC薬の販売には薬剤師が必要か?」という質問を授業の前後で行いました。結果、授業前は、「必要48.5%」でした。その頃、改正薬事法施行で登録販売者が多くのOTC薬を販売ができるようになったこともあり、半数以上の学生は薬剤師の必要性を感じてはいませんでした。しかし、授業後の回答では、「必要87.8%」(p<0.001)に上昇しました(日本社会薬学会2009年発表)。当初は、OTC薬販売等には薬剤師がわざわざ介入するものではないと感じていた学生も3コマの授業だけで意識が変わることを知りました。興味を持つということは、まず、知るということなのかもしれません。そこで、今回は、OTC薬の存在を再認識してもらい、薬剤師が介入することの重要性について触れてみたいと思います。

小児用OTC薬への薬剤師介入の重要性

 はじめに、存在価値はとても高いのにその存在が薄い(あくまで私見ですが)と感じる「小児用OTC薬」についてです。子供は、よく胃腸の不具合を訴えます。また風邪をよくひきます。熱を出し、便秘にもなります。皆さんは、子供が飲めるOTC薬をどのくらいご存じでしょうか?

 小児の場合は軽度な症状でも病院に行くケースが多いため、処方薬はすぐ思いつくもののOTC薬はすぐに思いつかない、あまり知らない人も多いのではないでしょうか。

 では、「なぜ?」すぐに病院に連れていくようになったのでしょうか。もちろん乳幼児は容態が急変することも多く、また重症化すると成長に悪影響もあるため初期対応が重要で、受診したほうがいいという考え方があります。さらに、それ以上に医療費の無料化による受診のしやすさもあるのでしょう。1970年代以降、「乳幼児等医療費助成制度」を各自治体が導入し、子供の医療費無料化が進みました。2010年以降、無料化の制限年齢を引き上げる自治体も出ています。自己負担も掛からない制度ということもあり、薬局で薬を購入するよりも医療機関に連れて行くケースが増えるのは自然な流れであります。

 しかし、薬局には、虫刺され、あせもなどの皮膚疾患にも効果のある皮膚薬や、夜泣き、疳の虫など成長段階において効果のある乳児の漢方薬、せき、鼻づまりを緩和するために胸に塗る薬や、しもやけの軟膏、ちょっとしたやけどの薬、プールや海で泳いだ後の目薬などもあります。日常的に見られる子供の症状に対応できるOTC薬は薬局には多く存在するのです。

 医療費が無料化になる前には、それらのOTC薬が薬剤師の手から販売され、使用されてきました。時に、お腹を壊し下痢をしたといえば、その便をおむつごと持って薬局に行き、整腸薬にするのか、受診するのか薬剤師が相談に応じたと聞きます。当時、乳幼児を持つ親たちにとって薬局は「ファーストアクセスの場」であり存在価値の高い場所であったと思います。

 ちなみに“奇応丸”を知ってますか?どんな状況で服用させるのか?どのように飲ませたらいいか、用法用量は?など調べてみてください。その種類、カテゴリーの広さ、そして歴史など、様々なことを知ることができます(参考※1)そして知るほどに、「薬剤師が介入しなければ」と思えるようになるでしょう。

 次に、これからのOTC薬の動向や、新発売の話題に注目してみましょう。国は、13年から本格的に「健康情報拠点構想」を推進し、「効果的な予防サービスや健康管理の充実により健やかに生活し、老いることができる」=「健康寿命」の延伸を目指し、その拠点を薬局としています(※2)。そして、薬局が予防、未病そして軽医療を担うために医療用成分だったものが12年度は栄養補給目的のビタミン剤、14年度にはうがい薬の単体処方が診療報酬改定で保険外しが実施されました。そして、次は、第一世代の外用消炎鎮痛剤を保険適用から除外するような提言も行われているようです。

 また、医療用からのスイッチ化も進み、既にロキソニン、アレジオン、そして要指導医薬品も登場し、アレグラも販売されています。昨年、フッ化物ナトリウムの洗口剤が(医療用の濃度の半分ですが)要指導医薬品として承認されました。販売されれば、薬局店頭でより効果的な虫歯予防を推進することができます。

“スイッチ化”でセルフM推進

 また、糖尿病薬のスイッチ化があります。医療の分野では、ボグリボースが境界域にある糖尿病予備軍に対し、重症化を防止するために投与することが保険(耐糖能異常に対する2型糖尿病の発症抑制:錠0.2mgのみ)で承認されています。薬局でのいろいろな整備が必要ですが、これがスイッチされるようになれば、まさに「効果的な予防サービスや健康管理の充実」が薬局で実現できるでしょう。

 このように薬局が予防、未病そして軽医療を行う健康ステーション化構想は、ここ数年でどんどん進められています。その実現のためには、医療機関との連携、薬局の環境整備が課題です。学生の皆さんが卒業し薬剤師となり、現場に出られる頃には、さらに状況は変わっていると思います。ぜひ、OTC薬もしっかり学んでいただくと同時に医療用医薬品や検査薬のスイッチ化をはじめとしたセルフメディケーション推進の活動にも注目してほしいと思います。

 ※1:家庭薬ロングセラーの秘密―昔も今もこれからも“日本の元気”を守る家庭薬(薬事日報社)
 ※2:薬学生新聞3月1日号4面参照



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