ニュースダイジェスト 「薬事日報」の紙面から

2025年6月15日 (日)

薬学生新聞

【公布後、段階的に施行】改正薬機法が可決、成立‐指定乱用防止薬の規制も

 改正医薬品医療機器等法が5月14日の参議院本会議で賛成多数で可決、成立した。医薬品の品質・安全性確保に向けた製造販売業者等の責任役員に対する変更命令、創薬力強化に向けた「革新的医薬品等実用化支援基金」設置のほか、処方箋に基づく医療用医薬品の販売を原則とすることなどを盛り込んだ。政府は同21日に公布し、改正内容は段階的に施行することとしている。

 政府が提出した原案通りの内容で成立した改正薬機法では、医薬品等の品質・安全性を確保するため、製造販売業者・製造業者の医薬品品質保証責任者と医薬品安全管理責任者の設置を法制化した。また、法令違反が確認された場合、厚生労働大臣が薬事関連業務に責任を有する役員の変更命令を可能としている。これら改正内容については、公布から2年以内に施行することとした。

 「後発品製造基盤整備基金」を設け、品目統合、事業再編等の計画を認定し、生産性向上に関する設備投資や事業再編等の経費を支援し、企業間の連携・強力・再編を後押しする。創薬関連では、革新的医薬品等実用化支援基金を設け、創薬クラスターキャンパス整備事業者の取り組みを支援する。両基金の設置等については、公布から6カ月以内に施行する。

 薬局・薬剤師関連では、厚労省が指定する「指定乱用防止医薬品」については20歳未満への大容量製品・複数個の販売を禁止し、公布から1年以内に施行する。また、届出制である現行の健康サポート薬局については、地域住民による主体的な健康の維持・増進を積極的に支援する薬局を都道府県知事が「健康増進支援薬局」として認定制度となる。

 薬局における医療用医薬品の販売(零売)については、「やむを得ない場合」の具体的内容と運用について、国民の医薬品へのアクセスを阻害しないよう十分に配慮すること、過度な指導や規制により営業継続が困難とならないよう必要最小限かつ合理的な規制措置にとどめるよう求めた。

 小児用医薬品の開発促進に向け、医薬品の有効性・安全性等に関する資料の収集計画策定を製造販売業者の努力義務とすること、条件付き承認制度を見直して臨床的有効性が合理的に予測可能である場合に承認可能とすることなども1年以内の施行とした。
薬局が所在する都道府県知事の許可により調剤業務の一部を外部委託すること、薬剤師等が常駐しない店舗でも遠隔管理下で一般用医薬品の販売を可能とすることは2年以内の施行となる。

 3年以内に施行するものとして、製造販売承認事項の一部変更承認について、品質に与える影響が小さい軽微変更については、届出に代わって年度ごとに厚労大臣に報告する特定軽微変更として確認を受けられることなどとしている。

 一方、今通常国会では、野党議員が提出し、厚労大臣の裁量に委ねられている診療報酬改定の実施時期を法律に位置づけ、診療報酬の基準は2年ごとに必要な改定を行うことを原則とすることを求める「医薬品不足を解消するための中間年改定廃止法案」も並行して審議されたが、現時点で成立には至っていない。

(2025年5月16日、同26日掲載記事を改編)

【規制改革推進会議が答申】乱用薬販売個数は個別判断‐穿刺血検査薬はOTC化を

 政府の規制改革推進会議は5月28日、規制改革推進に関する答申を取りまとめ、石破茂首相に提出した。乱用の恐れのある一般用医薬品の販売個数・容量制限は科学的知見等を踏まえて個別製品ごとに検討すること、「時期尚早」と判断された一般用検査薬の導入に関する一般原則の見直しの再検討などを求めた。

 健康・医療分野では、乱用等の恐れのある一般用医薬品の販売規制適正化を記載。販売個数・容量の制限、購入者の手が届かない場所への陳列など、頻回購入防止と薬剤師等に求められる情報提供の実効性が確保される対策を検討し、年内に結論を得た上で来年上期に法令上の措置を取る。販売個数・容量の制限については、成分、薬効群、製品ごとに科学的知見や乱用実態も踏まえて個別に検討し、制限するとした。

 要指導医薬品は全品目を対象にオンライン服薬指導可能とすることを検討した上で、オンライン販売を原則可能とすることも検討する。緊急避妊薬など薬剤師の面前で直ちに服薬する必要がある品目は当面はオンライン販売の例外にしつつ、オンライン販売を不可とする品目を設ける場合は判断時に具体的理由を明らかにし、他の品目に共通して合理的に適用できる基準の作成を検討する。また、要指導医薬品として3年経過後も一般用医薬品に移行せず、要指導医薬品に指定し続けられる制度の新設も検討することとした。

 自己穿刺による穿刺血を検体に用いた検査薬の一般用検査薬への転用に関して、まずは自己血糖測定検査薬のOTC化に向け、対象となる使用者の範囲や販売者側の実態等を調査し、OTC化に向けた検討を行う。検討の結論を踏まえ、穿刺血を検体に用いた生活習慣病や性感染症等の検査薬のOTC化を可能とするため、薬事審議会医療機器・体外診断薬部会で「時期尚早」と判断された「一般用検査薬の導入に関する一般原則」の見直しなど必要な措置を取ることとした。

 一般用医薬品の第3類品目のうち、うがい薬や洗眼薬等について医薬部外品に移行することを今年から検討し、来年度までに結論を得ることとした。

 治験に関する広告規制の見直しも求めた。医療機関で実施されている臨床研究情報を公開している臨床研究等提出・公開システム(jRCT)に掲載された信頼性の高い治験情報等について、治験広告に掲載された二次元コードからウェブサイトにアクセスして治験情報を得るなどの方策について、患者団体や製薬団体から意見を踏まえて検討する。結論を得次第、同サイトについて、実施医療機関など患者の閲覧ニーズが高い情報を掲載できる箇所の新設、検索システム見直しによる検索精度向上、患者が被験者となり得る治験に関する情報についてプッシュ型で情報提供できる方策を検討する。

 在宅医療における円滑な薬物治療の提供に向け、事前に訪問看護ステーションに配置できる新たな医薬品の具体的要件や保管方法等を年内に明確にするよう求めた。その後、地方公共団体や関係団体の協力を得ながら、全国の在宅医療における薬物提供体制の実態を継続的に把握し、方策の見直しの要否を2027年までに結論を得ることとした。

(2025年6月2日掲載)

【米トランプ大統領】薬価引き下げ大統領令署名‐高価格構造への切込み促す

 米ホワイトハウスは5月12日(現地時間)、トランプ大統領が米国内の処方医薬品価格を、他国と同水準まで引き下げ、患者に提供する大統領令に署名したと発表した。30日以内に関係機関と調整して、「米国の患者の価格を同等の先進国と一致させるため、最恵国待遇の価格目標を製薬製造業者に伝達する」方針。米国民は海外より約3倍高い価格を支払わされているとしているが、下げ幅は明示していない。

 対象範囲、実施手法は不明で、日本の業界関係者は「注視」の構えだが、大幅強制引き下げは「現実的ではない」との声もある。大統領令からは、そもそもの価格の高さに加え、PBM(薬剤給付管理会社)など中間業者を介したリベートを伴う取引、他国の低価格に問題意識を示している。米国内の価格形成への切り込み、対外通商問題として取り組む姿勢がうかがえる。

 米国研究製薬工業協会(PhRMA)は同日、スティーブン・J・ユーブル理事長兼CEOの声明を発表し、「米国の価格が高い本当の理由に対処する必要がある。それは、外国が公平な負担をしていないことと、仲介業者が米国の患者の価格を押し上げていること」などと表明した。

 今回の大統領令は、第1次トランプ政権で提案されながらも実現しなかった、処方薬について先進国の公的保険で支払われる最も低い価格水準に抑える参照価格・最恵国待遇方式を意図していると見られる。

 大統領令では、保健福祉長官が米国の患者に対して最恵国価格で製品を販売する「直接購入プログラムを促進する」としている。「直接購入」とわざわざ言及したことに、中間業者を介する取引への問題意識が垣間見える。

 米国内では以前から、使用薬剤や価格の権限などを持つPBMに対し、薬剤費を不必要に上げることになっていないかとの指摘はあった。米国では価格設定は自由だが、PBMを介して民間保険上の提供価格は引き下げられる一方、製薬企業からは薬剤取り扱いに対するリベートも提供され、PBMの収益になっている。

 そのため、メーカー側の定価と提供価格の大きな乖離は以前から指摘されている。メーカーには価格を守る引き上げ誘因とPBMのリベート獲得誘因が一致し、高価格になるとの見方がある。

 その点、PhRMAの声明で「仲介業者が米国の患者の価格を押し上げている」と指摘しているのは、価格形成の構造への問題意識がうかがえる。

 声明では「米国はPBM、保険会社、病院が医薬品に費やされる全ての支出の50%を受け取ることを許可している世界で唯一の国。これら仲買人に送られる金額は、ヨーロッパの価格を超えることがよくある。このコストを患者に直接渡すことで、医療費が削減され、ヨーロッパの価格との差が大幅に縮小される」と、価格構造への切り込みを促している。

(2025年5月16日掲載記事を改編)

【東京地裁】零売薬局の地位確認求める‐訴訟初公判で原告が訴え

 医薬品医療機器等法で指定された処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売(零売)を厚生労働省通知によって制限するのは違法として、零売薬局事業者3社が原告となり国に地位確認と国家賠償請求を求める訴訟の初公判が5月16日、東京地方裁判所で開かれた。意見陳述で原告は「零売制度があいまいな通知によって実質的に封じ込められ、薬剤師の職能が奪われている現状を問いたい」などと主張し、やむを得ず販売を行わざるを得ない場合でなくとも零売を行える地位の確認を求めた。また、訴訟代理人弁護士は初公判が訴訟提起から約4カ月間を要し、改正薬機法成立から2日後の開催時期になったことに対し「極めて遺憾」と批判した。

 今回の請求では、▽処方箋の交付をされていない者に対し、やむを得ず販売を行わざるを得ない場合でなくとも、医師の受診勧奨を行うことなく、処方箋薬品以外の医療用医薬品の広告を行うことができる地位を確認▽医療用医薬品以外の医薬品の広告を行うことができる地位を確認――などを求めている。

 また、国に対しては、原告の長澤薬品に64万9399円、まゆみ薬品に34万3761円、グランドヘルス(金額非開示)への支払いを求めている。

 長澤薬品代表取締役の長澤育弘氏は、「零売専門薬局を営んでいたが、行政指導と医薬品卸業者との取引遮断で廃業に追い込まれた」と吐露。「薬剤師は薬を渡すだけでなく、服薬指導を通じて地域医療を支える存在で、零売は病院に行けない人の重要な受け皿。行政通知一つで排除するような動きは国民の不利益につながる」と訴えた。

 まゆみ薬局代表取締役の山下吉彦氏も「現行の零売制度の実績が十分に評価されないまま、通知一つで封じ込められている状況は制度と現場の信頼関係を損なうもの」と主張。通知によって零売を制限する不当性を指摘した。

 訴訟代理人弁護士の西浦善彦氏は、「薬機法の趣旨を逸脱しており、法令の根拠を欠く行政解釈・通達であることが明らか。広告表現の制限についても薬機法は虚偽・誇大広告等を禁じているに過ぎず、表現内容を細かく規制することは薬機法の規制範囲を超えており、日本国憲法が定める表現の自由を侵害する違憲・違法な規制」と国の対応を厳しく非難した。

 第1回口頭弁論が訴訟提起日から約4カ月後と遅れたことに対しては、「訴訟提起後、薬機法改正案が提出され4カ月間のうちに零売規制を盛り込んだ改正薬機法が成立してしまった。国は改正法成立が見込まれる時期を見越して期日の指定を要請したとしか考えざるを得ない」と疑問視。裁判官に迅速な訴訟進行を要請した。

 初公判後の記者会見では、原告とその弁護団から「国が時間稼ぎをしているのではないか」との声が飛んだ。西浦氏は「訴訟提起から状況が全く変わった。4カ月はさすがに遅すぎる。薬機法が施行されれば請求が却下されかねない。(法が施行されるまでの間の)1年以内で決着を付けたい」と強調。薬機法が施行となった場合でも「憲法違反での主張を継続していく」とした。

 第2回公判は7月30日に行われる。

(2025年5月19日掲載)



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