【明日の山に向かって~「病棟薬剤師」その先へ~】第2回 人病院薬剤師の企み―「倉庫番」が病棟進出を狙う―

2015年11月1日 (日)

薬学生新聞


明治薬科大学臨床薬剤学教授
加賀谷 肇

全てが患者に向かう仕事

加賀谷肇氏

 1975年から北里大学病院では、全病棟に内服薬の与薬車を導入することになり、薬剤師が増員され14人の新人が採用されました。その中の一人として、私の薬剤師人生がスタートしました。病院薬剤部では通常、新人は調剤からスタートするものですが、この年は新人が多く、私は「薬品管理課」に配属されました。もちろん、調剤は新人研修のプログラムでしっかりと学びました。

 薬品管理業務というと、かつては「倉庫番」といったイメージだったかもしれません。しかし当時、薬剤部長の朝長文弥先生は「単なる倉庫番ではない、医薬品費は病院支出で人件費に次ぐもので、ここの仕事は医療経営と直轄だ」と教育されました。

 「先入れ先出し」という、薬品管理のイロハから医薬品の取り扱いを叩き込まれ、薬剤師がやるからには有効期限の問題、温度管理、光線管理等の品質管理、さらに“命に関わるものであり、在庫がなかったでは済まされない仕事だ”ということも徹底的に教育され、薬品管理の仕事は、全て患者に向かっているんだなと心に刻まれていったように思います。

 次第に仕事に慣れてくると、生意気にも病棟にどれだけ薬があって、処方箋を通してどう動いているか分からないのでは意味がないと思うようになりました。

北里大学病院全景(入職当時の写真)

北里大学病院全景(入職当時の写真)

 同じ薬品管理課に配属された同期3人(私は消化器内科病棟、もう1人の新人男性は外科病棟、もう1人の新人女性は耳鼻科病棟)が、それぞれの病棟の医薬品供給担当者となりました。新人ながら、病棟看護師からの薬品請求による供給では飽き足らず、「もっと能動的な薬品管理」を行いたいと考えるようになりました。

 受け身ではなく、病棟に出向いて医師のオーダー、注射指示箋等の内容を把握することで、どの程度医薬品を使うか予測がつく。また、病棟に最低限どれだけの医薬品があれば良いか分かれば、無駄な在庫も省ける――と考えて、「薬品請求は病棟の看護師が行うのではなく、薬剤師が病棟に出向いて行うべき」と上司に提言しました。

 新人のこの提言が認められ、試行的に3病棟で薬剤師による薬品請求が始まりました。私自身は、薬品管理をきっかけに病棟で仕事ができないかと思っていましたが、これを機に新人薬剤師3人が病棟に出入りするようになりました。振り返れば、臨床に近づくアプローチの仕方として薬品管理は適していたと思います。

 それまで、病棟では医薬品の有効期限のチェックは不十分で、薬剤師が随時チェックすることにより、期限切れで廃棄されるという無駄もなくなりました。

 当時の在庫管理は、医薬品卸業者が納めた数と薬品庫から、どれだけ出庫したかのチェックしかしてないという病院がほとんどだったように思います。

「病棟」から「病床」へ展開

 北里大学病院では、ABC分析という重点管理方法により合理化を図っておりました。100品目あるとして、そのうちの10%が薬価の高いAランクの薬とした場合、品目で10%を管理すれば、総金額の90%を管理できるという理論により、病棟で重点管理方式を実践していました。

ナースステーションにて(中央が薬剤師)

ナースステーションにて(中央が薬剤師)

 薬剤師の業務の幅を広げるためには、もっと医療の最前線に近づかなければならないという命題を立て、そのためのアプローチとして、まず薬品管理を通して病棟との関連を密にするストラテジー(戦略)は、見事に的中しました。

 病棟で薬品管理の仕事をしていると、知り合いの医師が「薬剤師さんも病棟に来るんだ?!」などと、声をかけてくれました。そこで、「実際に病棟に供給した医薬品がどのように使われているか、回診のときに見させていただくことは可能ですか」と聞くと快諾され、われわれ薬剤師は、医学部学生より『特等席』で回診に同行させてもらえるようになりました。

 実際に、患部から取り出した緑色になったガーゼの臭いを嗅がされ、「これが緑膿菌だよ」という体験をする機会も得ました。「それでこの患者にゲンタマイシン注が投与されているんだ!!」と身をもって体験できました。

 当時は、病棟には出入りできても、薬剤師の場合は大義がなければベッドサイドまでは行けませんでしたが、このような様々な経験を通じて、臨床の重要性を強く認識し、臨床上のいろいろな課題が見えてくるようになりました。これらが、病院に就職し、最初の数年間で目覚めた臨床業務の基礎となりました。

 次回は「病棟業務開発プロジェクトの結成」について述べる予定です。

 (続く



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