医薬品開発がやりたいならCRO

2016年3月1日 (火)

薬学生新聞

 製薬企業の新薬開発には、医薬品開発受託機関(CRO)の存在がある。医薬品が承認されるには、ヒトに投与し、開発候補物質の有効性・安全性を評価する“治験”で患者データを集積する必要がある。本来は製薬企業が行っていた治験業務だが、近年は製薬企業から委託を受けて、CROが実施していることを薬学生の皆さんに知ってほしい。CROの市場規模は年々拡大し、2014年には前年比約5%の成長を実現。以前は「医薬品開発=製薬企業」のイメージが強かったが、現在は「医薬品開発=製薬企業、CRO」と言っても過言ではなく、薬学生の先輩たちが多く活躍している業界だ。薬剤師だけを志望しているキミ、CROもチェックすべし。

「薬学」の強み、生かせる仕事‐市場規模は右肩上がりに拡大

製薬企業からの外部委託加速

 新薬開発といえば、化合物を合成するプロセスを思い浮かべる人が多いかもしれない。しかしそれは出発点でしかなく、病気に効果があると期待されて生み出された化合物は、細胞、動物を対象とした非臨床試験、ヒトを対象とした臨床試験で薬剤の臨床的な価値を評価されて選び抜かれる。既存治療法を上回る有効性や安全性を証明した薬剤、治療法が少ない疾患で薬効が認められた薬剤のみが、国の審査を受けて承認される。その確率は3万種類の化合物のうち、たったの1つ。「3万分の1」に過ぎない。

 その期間とコストは、かつて「10年、100億円」と言われていたが、現在では「20年、1000億円」とも言われるほどに難しい時代に直面しているという。日本は世界でも有数の新薬創出国として、多くの革新的新薬を生み出してきた。しかしここ数年、新薬開発の成功確率が低下の一途をたどり、新薬を開発する製薬業界、病気で苦しむ患者に一日も早く治療法を提供したい医療現場にとっても、大きな課題に直面している。

 医薬品開発受託機関であるCROには、そんな苦境を打開する役割として大きく期待されている。昨日できて急に大きくなった業界ではなく、1990年代に国内に誕生して以降、製薬企業や医療機関から地道に信頼を積み上げてきた。以前は製薬企業が研究から開発、販売、製造まで全てを自社で行っていたが、他社や大学と連携して新薬を生み出すオープンイノベーションを志向する時代に突入している。医薬品開発業務では事業環境が大きく変化するにつれて、人員削減や効率化が進み、CROに医薬品開発業務を委託するようになった。

 CROへの外部委託が始まった頃は、製薬企業で人手が足りない試験に関してのみ、CROに委託する限定的な活用だったが、次第に新薬を「早く、安く、確実に」開発するため、CROへの依存度は強くなっており、複数の化合物に関する治験を委託するような戦略的パートナーシップを結ぶようになっている。

 その証左として、日本CRO協会会員社の市場規模の推移を見ていただきたい()。新薬開発が厳しくなったとはいえ、2010年の1132億円から、15年は1535億円に拡大する見込みだ。従業員数も1万0126人から1万3484人へと増え続けている。新卒採用も今年4月の入社予定者が732人と安定した人数で推移している。医薬品開発業務においては、製薬企業による人材採用が減る傾向にある一方で、CROは新卒採用を積極化している。「医薬品開発に携わりたいながら、CROに入社すべし」という環境が形成されている。

 CRO業務の主体は、治験に参加した被験者データを収集し、科学的見地からデータが正しいかをチェックするモニタリング業務という仕事だ。臨床開発モニター(CRA)が、治験実施のルールである「GCP」に基づいて、医薬品開発に重要なデータ品質を担保する。その後、データマネジメント/統計解析、メディカルライティングと各部署が協力、分担しながら承認申請に必要なデータを作成する流れだ。

グローバルに広がる可能性

 学んだ薬学知識を生かすことができるのもCROの魅力の1つ。実際、最も採用学部が多いのが薬学系で、15年新卒では12社が採用を行っている。製薬企業は、癌や中枢神経系といった難治性疾患で医薬品開発を進めており、そこに高度な知識が要求されるからだ。皆さんの先輩も、医療現場でCRAとして活躍し、入社後数年で臨床試験を指揮する立場にあるプロジェクトマネージャーへと登用されている。

 CROが活躍するフィールドは、国内だけではなく、グローバルへと広がっている。国際共同治験という言葉を聞いたことがあるだろうか。製薬企業による新薬の世界同時開発が進むのを背景に、日本単独ではなく、世界各地域で同時に承認を取得するために行われる大規模な治験だ。国内を拠点とするCROも海外拠点とやり取りを行い、協力して医薬品開発を行う。世界基準での治験業務は、当然厳しさもあるが、医薬品開発が成功したときには、治験にかかわる国内外の治験スタッフの仲間たちと「おめでとう」「ありがとう」と言い合う。多くの患者の治療に貢献できる喜びや達成感を共有できるのも医薬品開発の大きな醍醐味だ。

 折しも製薬企業で構成された業界団体の日本製薬工業協会では、製薬産業が10年後に目指す姿として、「産業ビジョン2025」を定めた。日本発医薬品を増やすことを目標に掲げ、世界最高レベルの治験実施体制を構築する方向性を示している。日本から生まれた化合物を、世界で同時に開発して承認を目指す日本発国際共同治験を実践していく上で、CROの貢献が欠かせない。

 日本CRO協会では、「パートナーから自立したプレイヤー」を旗印に、業界全体でレベルアップに取り組んでいる。医薬品開発の領域だけではなく、承認された医薬品が未知の副作用を引き起こしていないかを販売後の医療現場で調べる安全性管理業務や、製薬企業が開発を手がけにくい患者数の少ない稀少疾患医薬品での事業展開、医療機器、再生医療への挑戦など幅を広げている。新薬開発、国内からグローバル、医療分野での新たなビジネス立ち上げも実現できる可能性がある。

 ぜひ薬学生の皆さんには、今後、将来性豊かなCRO業界を見ずに、就職活動を終えることのないよう、積極果敢にチャレンジしていただきたい。



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