【これから『薬』の話をしよう】真のアウトカムを想像せよ!

2017年3月1日 (水)

薬学生新聞

医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 みなさんこんにちは。前回は基礎研究と臨床研究の違いについて簡単に紹介し、臨床現場で重視すべき情報は、臨床研究の結果、いわゆるエビデンス情報であるということをお話ししました。今回は臨床研究で評価される薬の効果の指標について考えていきます。

 薬が患者さんにもたらす影響を考える際には、患者さんが薬を飲んで幸せになれるかどうか、という観点を見失わないことが大切です。治療行為による臨床上の成り行きを「アウトカム」と呼びますが、薬を服用することで患者さんが幸せになれるかどうかが一番重要なアウトカムなのだと言えましょう。とはいえ、幸福の度合いは人それぞれの主観的な感情であり、他人の物差しで客観的に評価できるものではありません。では僕たちは薬の効果の指標として何を重視すればよいのでしょうか。

 繰り返しますが、薬物治療は少なくとも患者さんに幸せをもたらすものでなくてはなりません。耐え難い疼痛や、日常生活に支障を来すような不快な身体症状を改善すること。将来起こり得る重篤な合併症や死亡を先送りして、健康でいられる時間を少しでも長くすること。こうした効果が得られなければ、薬を服用する意義は大きくないでしょう。

 幸福度の客観的評価は困難ですが、合併症や死亡はそれらの発症率として、また疼痛や身体症状はスコア化(点数化)して定量的に評価することが可能です。このように患者さん自身の生命や生活に直結するアウトカムを「真のアウトカム」と呼びます。一方で血糖値やコレステロール値、炎症メディエーター等の変化は、真のアウトカムに対する影響を予測する指標であり、「代用のアウトカム」と呼びます。

 もちろん患者さんにとっての真のアウトカムは必ずしも長生きすることではないかもしれませんし、血糖値が下がることで安心して生きていけるというのもあるでしょう。ただ少なくとも「真」と「代用」という2つのアウトカムをしっかり意識して、薬の効果を考えていく必要があります。なぜなら、代用のアウトカムの改善が必ずしも真のアウトカムを改善するわけではないという事実は枚挙にいとまがないからです。代用のアウトカムの改善のみに注目することは、薬の効果の大切な側面を見失っていると言っても過言ではないでしょう。



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