非臨床試験受託機関(CRO)のイナリサーチと、実験動物の供給事業者である日本エスエルシー、韓国のDNA Linkは、患者由来の癌細胞をマウスの生体内に移植させたモデル「PDXマウスモデル」を医薬品開発に有効利用する共同事業を開始した。ヒトの癌細胞ライブラリーを保有するDNA Linkから提供されたアジア人の癌細胞を用いて、日本エスエルシーがPDXモデルを作製。イナリサーチが製薬企業から非臨床試験を受託し、最適なPDXモデルを用いて抗癌剤を対象とした薬効試験を実施する。イナリサーチの中川賢司社長は、18日に大阪市内で会見し、「日本でのPDXモデル作出と商業利用は初となる。これまでも癌領域に力を入れてきたが、PDXモデルを用いた試験をビジネスの柱にしたい」と語った。
PDXモデルは、抗癌剤の薬効試験に多く用いられており、ヒトの癌細胞を用いることで、ヒトの生体内環境に近く、治療効果の予測能力を引き上げるモデルとして期待が高い。特に抗腫瘍効果や腫瘍増殖抑止効果で最適なモデルであり、新しく発見した遺伝子異常の機能的な意義や、新規化合物のメカニズム解明など、生きた腫瘍細胞を使わなければならない研究にも活用されている。