【各業界の動向と展望をチェック!】医療DXへの対応力がカギ~保険薬局~

2023年11月15日 (水)

薬学生新聞

 保険薬局業界では調剤を主とする対物中心の業務から、患者・住民との関わりの度合いが高い対人業務へのシフトがさらに加速していくことが予想される。来年4月には診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定が行われる予定で、年内には各報酬の改定率が決まる見通し。特定の医療機関からの処方箋集中率が高く、処方箋調剤に依存した薬局には厳しい改定が待っている。一方で、患者・住民の薬物療法や健康維持・増進の支援を行う薬局には手厚く配分する方向にある。薬局の今後は、在宅医療や健康相談、休日・夜間24時間対応など、地域におけるかかりつけ機能をいかに示せるかにかかっている。

 2022年度調剤医療費は前年度比1.7%増の7兆8332億円と、新型コロナウイルスの感染拡大で市場が低迷した一時期から回復を遂げている。技術料も5.8%増の2兆1264億円と伸びた。

 しかし、実態は依然として厳しい。大手調剤薬局チェーンの決算では、増収企業が多いものの、利益面を見ると、新型コロナウイルス感染症対応による人件費増や薬価改定、調剤報酬改定による影響で減益となるなど苦戦が続いている。

 人口減少を背景に処方箋発行枚数は増えていない。病院や診療所の外来で処方箋を受け取った患者のうち、院外の薬局で調剤を受けた割合を示した処方箋受取率も約75%と頭打ちとなり、処方箋獲得によるビジネスモデルで持続的成長を図るのは、もはや望みづらい状況だ。今後、市場が縮小する可能性がある中、薬局数は年々増加し、21年度には過去最多の6万2000軒を突破するなど競争は熾烈を極めている。

 一方で、患者中心の業務を行う薬局のかかりつけ機能は定着していない。改正医薬品医療機器等法で継続的な患者フォローアップが義務化され、多くの薬局が取り組み始めているものの、個々の患者に対するフォローアップはまだ十分に確立していない状況だ。

 医療DXへの対応力もカギとなる。医療DXの基盤となるオンライン資格確認等システムが4月から原則義務化となり、電子処方箋の本格運用も始まった。政府が打ち出した「医療DX令和ビジョン2030」の柱となる「全国医療情報プラットフォーム」の構築も予定され、診療情報や特定健診情報、電子カルテ、電子薬歴などの医療情報を医療機関や薬局で共有可能な環境整備も進む計画だ。

 将来は、患者がスマートフォンの健康アプリやウェアラブルデバイスなどから送られるデータを保持し、薬局薬剤師に提示した上で健康相談を行うといったケースも考えられる。患者個人の医療情報が広がり、薬局でも確認できるようになることで、薬剤師には患者の主訴と個人の医療情報を用いて総合的に判断する能力が求められる。

 患者を熟知するかかりつけ薬剤師が健康相談からフォローアップを行い、問題があれば服薬アドヒアランス改善、医療機関への受診勧奨、OTC医薬品の提案に取り組むなど、薬剤師が介入する機会の増加にもつながる。

 今後の診療報酬改定でも医療DXへの対応が評価される方向にあるが、単なるインフラ整備ではなく、患者対応や医療機関との連携などの業務変革に生かそうとする薬局は活路を見出すだろう。



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