【日本薬学生連盟】薬剤師の人材紹介事業を創業‐ヴィンテージ・クリエーション代表 椎木倫太郎さんに聞く

2024年9月15日 (日)

薬学生新聞

椎木倫太郎さん

椎木さん提供

 日本薬学生連盟広報部は、薬剤師の人材紹介事業等を手がける会社を創業した薬剤師の椎木倫太郎さん(ヴィンテージ・クリエーション代表取締役兼CEO)にお話を伺いました。塚本有咲(大阪医科薬科大学薬学部3年生)が聞き手となり、事業に対する思いや自身の経験から大事にしている考え方について語っていただきました(原稿は日本薬科大学薬学部3年生の佐藤匠真が執筆しました)

「仕事をより価値あるものに」‐成長型マインドセット高める

 ――2023年にヴィンテージ・クリエーションを起業されましたが、どのような事業や活動に取り組んでいますか。

 医療業界の転職サイト「ジョブメディ.com」を運営し、薬剤師等の人材紹介事業を行っています。会社で掲げるコンセプトやビジョンに近付けるよう、徐々に事業を展開しています。私自身が製薬企業で働いていた経験も活かせるので、最初は薬剤師の新卒と転職の人材紹介から行っています。また、薬剤師が多い地域から不足している地域への人材の異動を支援する、地方創生にアプローチした事業も現在走り出しています。

 薬剤師の魅力を伝えて成り手を増やし、なりたい職業ランキングTOP10入りを目指す「薬剤師サミット」という団体を立ち上げて事業を行っています。

 ほかには、薬学生向けの「薬剤師就職活動ナビ」という就活情報を詰め込んだ雑誌を独自で作成し、全国の薬系大学に配布する活動も行っています。経営者団体での活動などにも取り組んでいます。

 ――掲げているコンセプトやビジョンとはどのようなものですか。

 全世界の人に仕事を通じて成長できる環境を作るというビジョンを掲げています。「仕事をより価値あるものに」というフレーズも大事にしています。仕事は1日の半分以上の時間を費やすもので、この先人工知能(AI)が発達したとしても、人間が生きていくために仕事はとても大事なファクターです。せっかくなら、生活のためだけでなく、仕事を通して楽しく成長するという人間の本能にしっかりアプローチしたいというコンセプトがあります。

 成長することとは、成長型マインドセットを持つ、すなわち心のあり方として自分は成長できるという自信を持てる環境をどんどん作ることです。つまり、これから新しい能力を身に付けられると思っている心のあり方と、挑戦して失敗してもやり続けたら成功が待っていると信じる力の二つを持つことです。

 これらを持つ人々が増えると、自己啓発ができるようになり、利他の精神が備わって人のために動ける人が増えていきます。

 このように新たな能力を身に付けたり、失敗を乗り越えた瞬間に人は一番楽しさを感じると思います。成長型マインドセットを高めることは、仕事を通じて本人が楽しくなることに通じています。これは年齢と共に下がっていく傾向にありますが、環境と外部刺激が与えられることで高められることが分かっています。

 いくつになっても成長でき、自身の価値を高めていくことができると思ってもらいたいという思いから経営理念を作りました。

目標宣言して自分を鼓舞‐提案できる人が求められる

 ――起業するまで製薬企業で働いていた経験が、現在においてどのように生かされていますか。

 営業とマーケッターをしていた当時の経験が、大きく今の仕事に生きていると思います。

 まず営業に関しては、最初は会社として信頼を得るために初めてのところに伺う機会が多いですが、経験からマインドとテクニックの面で営業に対する怖さはなかったです。

 マーケティングに関しても、どういう広告を打つとどれくらいのビューやコンバージョンがあるのかといった知識が、会社の根幹である売上を上げる部分で役立っています。

 仕事をするにあたって「宣言効果」と「一枚岩」の二つを大事にしていました。宣言効果は、目標を言葉にして周りの人たちに言い続けることで自分を鼓舞し、目標を達成することです。さらに目標を達成するために大事になってくるのがチームで一枚岩になることです。

 製薬企業時代に結果を出すことができたのは複数のメンバーに目標宣言をし、なぜその目標を達成しなければいけないのかという趣旨の共有を大事にしたからだと考えています。

 例えばただ薬の出荷量や処方量を多くして全国1位になるという目標を持つだけではなく、その目標を達成した後の景色を伝えます。私たちの目標達成を通じてどんな人たちが笑顔になるのか、その笑顔の数がどれだけ多くなるのかといった自分たちの仕事の意義みたいなところも言葉にしていきます。

 また、少しでもチームとしての成果が出たら賞賛しまくることも大事です。褒められることというのは人の行動の活力です。夢や目標を語ることは、機械やAIにはない、人間を鼓舞する力を持っているものだと思います。今はたいしたことなくても本当にやり遂げるのではないかという期待感から、一緒に仕事をしたいと言ってくださる方々も多いです。

 ――近年、薬業界や薬剤師の役割が変化する転換期にあるとよく耳にします。椎木さんの経験から、今後どのような薬剤師が選ばれ、求められる人材になると感じますか。

 これから求められる人は、やはり提案できる人です。どの職場にも課題は必ずあり、またずっと同じところで働いている人たちは固定観念になってしまうことが多いので、それに対して解決策を提案できる人材は求められ、価値があると思われます。

 では提案できる人になるためにはどうすればいいのでしょうか。まずは目の前のタスクをやり抜くことが大事です。そもそも言われた宿題をやり抜く方法を知らない人間には、新たな提案をすることもできないと思います。目の前のことを全てやり抜いていくと経験による効果でどんどん早く完了できるようになり、できることが増えていきます。

 それから自己啓発です。自分が何かに対して努力できるエンジンを作っておき、努力する時間を確保する習慣を作ることが大事です。このエンジンを持っておくと、キャパオーバーになることなく余裕が生まれ、追加で課題を出された際に対応することができます。

 この二つの両輪をバランスよく回している人はよりたくさんの経験値を積むことができるので、提案がどんどん出てきます。

やりたいこと優先しても良い‐自分を深掘りする時間持って

 ――進路を考える際に、自分が求めることと社会から求められることの間にはジレンマが生じていると思います。進路に悩む薬学生にメッセージをお願いします。

 まず自分のやりたいことや好きなこと、自身が求めることを優先していいと思います。自分と社会は両方ともとても大事ですが、社会課題というのは本当にたくさんあるので、自分が求めて進んでいった道の先には絶対に課題があります。最初は漠然としていても、だんだん課題が分かってきますし、それも少しずつ変化していきます。

 私自身も解決したいと思っていた課題やビジョンが、起業してから少しずつ変わっていきました。始めから社会で解決したいことに対する強い思いが定まっている人はそのまま進めばいいと思います。でもそれがないとしても焦る必要はないです。

 その中でもやってもらいたいことがあります。優先して考える自分のやりたいことに関して、それをすることによって誰を笑顔にしたいとか、どういう人が行動を変えるだろうとか、与える影響力について考えてほしいです。

 ここから言える皆さんにやってもらいたいことが二つあります。まず自分自身を深掘りする時間を持ってください。何度も自分に質問をして、なぜ自分はこう思うのか、どういう影響力があるだろうかといったことを考える時間を作ってほしいです。

 それから内省の際に必要な情報は、プロフェッショナルや実績を残した人から聞いて得るべきです。例えば就活生なら、自分の行きたい会社から内定を取った人、それも直近の1年前に、自分の理想像で就活を成功させた人から話を聞くことだと思います。今はネットの情報も溢れていますが、本当に実績を残した人間からのアドバイスを聞くことが、血が通っている情報を効率よく得られる一番良い方法だと思います。



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