【薬学教育協議会】「就職せず」「未定」がさらに増加‐就職動向調査
薬学教育協議会がまとめた「2016年3月薬系大学卒業生・大学院修了者就職動向調査」によると、6年制薬学部73大学(74学部)の卒業生の進路は、薬局が最も多い傾向は変わらなかったが、就職しなかった学生の総数が1652人と昨年度の1559人から増えた。このうち、進学者は大幅減となった昨年の170人から188人に復調したものの、非就職者と未定者の合計は1445人と昨年の1367人からさらに増えたことが分かった。
第101回薬剤師国家試験の新卒合格率が86.24%と大幅に向上したにもかかわらず、卒業者のうち4分の1が薬剤師資格を取得しておらず、新卒者のうち1161人が薬剤師国家試験を受験しなかったことも明らかになった。
調査は、6年制第5期生を輩出した薬系大学をはじめ、全国の国公私立薬系大学73大学(74学部)から回答を得た。6年制卒業生の総数は9403人と昨年に比べて634人増加した。このうち、大学が進路を把握した就職者は7751人で卒業生の82.4%となった。就職率は82.5%で昨年に比べて0.3%とわずかに低下した。
就職しなかった人の総数は1652人と、大幅に増えた昨年の1559人よりも増えた。その中で、進学者は188人と大幅に減った昨年の170人からやや持ち直したが、非就職者と未定の人の合計は1445人と、昨年の1367人からさらに増えたことが明らかになった。
非就職者と未定の人の割合は全体の15%程度と昨年並みに高かったが、第101回薬剤師国試の新卒合格率は86.24%と大きく改善したにもかかわらず、卒業者の4分の1が薬剤師資格を取得しておらず、新卒者のうち1161人が国試を受験しなかったことも明らかになった。
6年制卒業生の就職先を見ると、最も多かったのは薬局の3199人で、全体の34.0%を占めた。ドラッグストアなどの一般販売業の395人、卸売販売業の48人を合わせると約4割を占め、前年と同様の傾向だった。次に多かったのは、国公私立の大学付属病院・一般病院・診療所薬局の2573人(27.4%)で前年度に比べて227人増えた。
さらに、有給・無給を含め病院・薬局の研究生となった120人を合わせると6335人となり、6年制学科の卒業生の7割近くが薬剤師免許を生かせる医療関係職に就いたことが分かった。
オプジーボ、2月から半額‐16年度緊急薬価改定決まる
高額薬剤をめぐる議論の焦点となってきた抗癌剤「オプジーボ点滴静注」の薬価を緊急的に50%引き下げる緊急薬価改定が、11月16日の中央社会保険医療協議会薬価専門部会と総会で決まった。薬価改定のない年に価格を引き下げる異例の措置で、2月から半額となる。市場に出回っている価格を調べる薬価調査も行わない。この緊急的な薬価引き下げでは、厚生労働省が「オプジーボ」の2016年度の推計販売額を暫定的に1516億円(市場で販売される前の薬価をもとにしたもの)と算出。これが16年度の薬価制度改革で新たに設定した特例拡大再算定という仕組みの最大50%引き下げる条件に当てはまると判断した。
厚労省は、緊急改定で算定するオプジーボ点滴静注の薬価について、同社公表の年間予想販売額1260億円(製薬企業が卸業者に設定する仕切価をもとにしたもの)から流通経費などを差し引き、1516億円と算出。これが特例拡大再算定の「1500億円超で、予想販売額の1.3倍以上」という条件に当たることから、薬価を最大限となる50%引き下げることにした。
これにより、オプジーボの薬価は「同点滴静注20mg」が現行の15万0200円から7万5100円、「同点滴静注100mg」が72万9849円から36万4925円に半額となる。厚労省は、11月24日に引き下げ後の新たな薬価を官報に告示したが、新薬価は医療機関の在庫管理などを考慮して、2月1日から適用する。
患者数の少ない悪性黒色腫の効能・効果を取得し、最初に高い薬価がついた「オプジーボ」は、患者数の多い肺癌の効能・効果を追加したことから「高すぎる。国の財政が破綻する」との意見が続出し、高額薬剤の議論が沸騰。最終的に、薬価改定のない来年度に半額に引き下げるという極めて異例の対応で決着した。厚労省は、今回の緊急薬価改定をあくまでも暫定的なものと位置づけているが、オプジーボ問題が火を付ける形で、薬価制度の抜本的見直しに議論が発展することになった。
化血研で再び不正が発覚‐未不活化原料を用いて製造
また、化学及血清療法研究所(化血研)の不正が発覚した。厚生労働省は10月4日、化血研が日本脳炎ワクチン「エンセバック」について、国の承認書に定められたウイルスの不活化処理を一部行っていない原料を使って製造していたとして、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき報告命令を出した。
当初、2週間以内に業務改善命令を出す予定だったが、化血研が調査報告書を提出したのが12月2日となり、未だに命令は出ていない。1月に組織ぐるみの不正隠ぺいで110日間の業務停止命令を受けたにもかかわらず、再び不正が発覚しただけでなく、厚労省の抜き打ち検査で発覚した。
今後の対応次第で、製造販売業許可の取消処分を下す可能性もあるとまで厚労省が警告しており、今後の対応が注目される。
行政処分の対象となったのは、日本脳炎ワクチンについて承認書に定められたウイルス不活化処理をしていない一部原料を使って製造していた事実。さらに、業務停止命令を受けた薬機法違反の再発防止に向けた組織体制ができていないことである。今回、化血研は厚労省に対し、適切な説明を行わず、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が資料を精査したところ問題が浮上。厚労省が抜き打ち検査をして違反が発覚したところに問題の大きさがある。
厚労省は、化血研に根本的な原因究明と全56品目について承認書と製造実態に齟齬がないか調査を求める報告命令を出したが、化血研は不正製造の事実はなく、隠ぺいもなかったと発表し、厚労省に真っ向から反論した。
そんな最中、化血研の事業譲渡に向けて交渉していたアステラス製薬は、協議の打ち切りを発表した。塩崎恭久厚生労働相が再三にわたって事業譲渡を促してきたものの、交渉は振り出しに戻ってしまった。塩崎厚労相は、「長年にわたって化血研の製品を販売し、取引があったアステラスとも合意できなかったことは、関係者の化血研への信頼が崩れ、不信感が高まっていることの表れ」と厳しく批判。「事業譲渡しなければ化血研は終わってしまう」と強く警告したものの、未だ決着は見られていない。
抗菌薬適正使用へ国が手引き‐20年の政府目標実現に向けて
厚生労働省は、世界的な課題となっている薬剤耐性(AMR)について、政府の行動計画であるアクションプランの実行に向けた議論をスタートさせた。2020年までに抗菌薬の使用量を約3割減らす目標に向け、国が抗菌薬適正使用の手引きをまとめる。
新たに設置する作業部会で、まず手引き第1版の策定に着手し、日常診療で多く見られるかぜや急性下痢症への対応について具体的な検討を進める。
政府は20年までのAMRに対する行動計画を打ち出し、抗菌薬の適正使用に関して13年比で約3割減少させる目標を打ち出している。厚労省は、AMR対策を強化するため審議会のもとに小委員会を設置し、議論をスタートさせた。アクションプランの重要分野の一つである抗菌薬の適正使用については、さらに専門的に議論するため作業部会を設ける。
作業部会では、一般診療の場で適正使用に重要な項目について、実践的な対応を解説したマニュアル「抗菌薬適正使用の手引き」(第1版)を作成するための検討に取りかかる。手引きは外来診療に携わる医師などの医療従事者が使うもので、基礎疾患のない軽症患者への対応を想定。総論と各論で構成し、第1版の各論では、かぜと急性下痢症について解説する。
各論では、特に抗菌薬を使うべきかどうか迷う状況での助けとなるよう適切な診療の進め方、患者や家族への伝え方について実践的な対応を盛り込む。手引きは30~40ページ程度の簡易なものを目指すとしているが、小児科医の委員からは、「なかなか現場では抗菌薬の選択が難しく、判断に迷うケースが少なくない。全ての病原菌を即座に確定できないので、いろいろな角度から抗菌薬を出す、出さないを含めて判断せざるを得ない」と臨床現場の実情が訴えられ、「現場に役立つ手引きを作るのは容易ではない」と課題も指摘された。
厚労省は、かぜに抗菌薬を使わないための適正使用がまず重要との考え。今後、特に必要な疾患については第2版以降の手引きで対応していくとしている。そのほか、抗菌薬の研究開発や国際協力への対応についても議論していく。
NDBデータ初公表、医薬品の使用量が丸裸に‐降圧剤はARBが上位独占
厚生労働省は、医科や調剤レセプト等の情報を集めて格納した国の「ナショナルデータベース」(NDB)のオープンデータを10月に初めて公表した。2014年度のレセプトデータ約18億8000万件を単純集計し、広く利用者が有効活用できるよう作成したもの。
薬剤データについて、外来で院外処方された内服薬を見ると、糖尿病用薬は「メトグルコ錠250mg」が約11億錠と圧倒的に多く、血圧降下剤は「オルメテック錠20mg」などARBが処方数の上位を独占していることが分かった。安価な降圧剤が使われていないことなど、処方の実態が丸裸になった興味深いデータが公表されたと言えよう。
NDBオープンデータで新たに公表された薬剤データは、処方数量を薬効別に上位30位を選んだもの。そのうち、外来で院外処方された内服薬について、主な薬効別に処方数量の上位を見ると、糖尿病用薬は「メトグルコ錠250mg」が11億4078万9846錠と最も多かった。高脂血症用薬は「クレストール錠2.5mg」が7億3948万8536錠と最も処方されており、血圧降下剤は「オルメテック錠20mg」が3億6325万3110錠、「ミカルディス錠40mg」が3億1089万8058錠、「ブロプレス錠4mg」が2億2115万8570錠とARBが処方数上位を独占した。
広くかぜの発熱時などに使われている解熱鎮痛消炎剤は「ロキソニン錠60mg」が4億8404万4009錠、抗凝固薬は「ワーファリン錠1mg」が7億0947万2907錠、「ワーファリン錠0.5mg」が9442万2498錠と依然ワーファリンの支持が厚かった。
外用薬の消炎鎮痛剤は、「モーラステープL40mg 10cm×14cm」が8億4000万8238枚、「モーラステープ20mg 7cm×10cm」が6億2949万7804枚とモーラステープ群だけで約14億7000万枚も処方されていることが分かった。
【災害医療センター】敷地内薬局公募を中止‐厚労省、「望ましくない」と見解
敷地内薬局の誘致に動いていた国立病院機構災害医療センター(東京都立川市)が、厚生労働省が出した「望ましくない」と問題視する通知により、薬局の公募を中止する事態となった。規制緩和を受け、敷地内薬局の誘致が各地で活発になっていたが、厚労省が所管する独立行政法人である国立病院機構本部が誘致する動きに対しては、さすがに厚労省がストップをかけた格好となった。
厚労省は、災害医療センターが進めてきた敷地内薬局の誘致について、「患者本位の医薬分業の実現に向けて、かかりつけ薬剤師・薬局を推進する方針をとっており、その政策と合致しない」と指摘。厚労省が所管する独立行政法人としては「望ましくない」との見解を国立病院機構本部に伝えた。これを踏まえ、災害医療センターは公募の中止を判断したようだ。
現在、災害医療センターでは、有事に即座に対応できるよう、院外処方だけでなく、院内処方でも対応している。そうした中、敷地内に薬局を設置して院外処方を促す方針が問われた。
ただ、敷地内薬局の設置を主導した政府の規制改革推進会議は、さっそく厚労省に事実関係の説明を求めたが、会議側は、「明確な回答が得られなかった」として、今後の会合でも継続して説明を求めていく方針。
会議の場で委員からは、公募の取りやめに関する事実関係を説明するよう求める意見が相次いだ。これに対し、厚労省は「望ましくない」との見解を示した理由について、「立地条件上、困難と思われたため」と説明。他の委員が「何をもって『望ましくない』とするのか」と質したものの、会議側は「明確な回答が得られなかった」と判断。引き続き、ワーキンググループで説明を求めていくことにした。
処方権と調剤権で激しい応酬‐後発品「変更不可」に問題意識
医師の処方権と薬剤師の調剤権をめぐって激しい議論が勃発した。事の発端は、診療報酬の点数を決める厚生労働大臣の諮問機関「中央社会保険医療協議会」で、サラリーマンなど健康保険料を支払う側の委員を務める健康保険組合連合会の幸野庄司理事の発言だ。
10月に名古屋市で開かれた日本薬剤師会学術大会で幸野氏が講演し、「医師の処方権があまりにも強いため、薬剤師の調剤権と格差がありすぎる」との発言や調剤権の拡大、強化を2018年度診療報酬改定の重点事項の一つに位置づける考えを示したことが、日本医師会の怒りに火を付けた。
講演が行われた後日、中医協の総会の場で、医師など診療側委員を務める日本医師会の中川俊男副会長が、幸野氏の発言を問題視し、激しい応酬に発展。中川氏は、幸野氏の発言の真意を質したが、「(保険料を支払う)保険者は医師の処方権、薬剤師の調剤権には格差があると感じている。以前から持っている持論を話した」と否定しなかった。
さらに、医師の強い処方権のもとで医薬分業が進んだ結果、多くの薬局・薬剤師が「立地」の優位性だけをビジネスモデルにしたことにも問題はあるとしつつ、「医薬品に関しては、医師と同等の立場で調剤権を発揮できるように頑張ってほしいというエールを送るつもりで私見を申し上げた」と説明した。
処方権という医師の根幹に関わる部分の発言だけに、中川氏は怒り心頭。「診断結果に基づき、医師が薬物治療が必要かどうか、どの薬を使うかを判断し、処方箋を発行して薬剤師が調剤するという仕組みについて、格差がありすぎて医薬分業を歪めているというのは非常におかしな話。医師の処方権と薬剤師の調剤権は全く違う。どこでバッティングするのか」と疑問視した。
これに対し、幸野氏は、改めて処方箋に記載されている後発品への変更不可欄について「おかしい。医師は一般名を処方し、後発品への変更は薬剤師が判断すべき」との持論を展開。薬剤師が残薬を確認した場合の対応についても、「医師に疑義照会をしてからではなく、薬剤師自ら調剤できるような仕組みを作っていくべき」と主張し、溝は埋まらなかった。
しかし、薬剤師代表の委員である日本薬剤会の安部好弘常務理事は、「調剤権を拡大するということではなく、薬剤師が調剤する上でどういう義務を負っているのか」を考えることの重要性を示し、「医師の負担軽減が重要視される中で、医師と薬剤師がお互いの理解と連携の中で機能を発揮し、義務を果たすことがわれわれに求められている」と述べるにとどめ、調剤権の拡大を主張することはなかった。