薬剤師の夢追いながら全力プレー
星薬科大学の2年生、掛札海さんは硬式テニス部の部長として13人のメンバーをまとめ、春と秋に行われる大会での勝利を目指して日々の練習に励んでいる。昨年春の大会で好成績を収め、チームを取り巻く雰囲気は上り調子だが、秋に部長に就任した頃はリーダーとして部をまとめることに自信が持てなかったという。しかし、チームの「和」を意識して部員に接することで、次第に部長としての自覚と自信が芽生えてきた。高校時代に肩を故障し、様々なプロフェッショナルのケアを受けたことで医療への関心を深めた掛札さん。その中でも、痛み止め薬の効果を実感したことで、薬剤師の道に進むことを決断した。講義や部活にアルバイトと、多忙な日々を過ごす掛札さんだが、病院薬剤師やMRなど、薬のプロフェッショナルになることを夢見て前進し続けている。
星薬大の硬式テニス部は、毎週水曜日と土曜日に大学構内のコートで練習を行っており、「基礎をおろそかにしない」という考えのもと、サーブやレシーブで基本を確認した後で、試合形式の練習に取りかかる。普段は3~4時間かけて練習するが、大会直前になると朝から日没まで熱中することもある。中学、高校からテニスを経験してきた部員が多いが、初心者も歓迎しているという。
昨年の春に開催された、関東の薬学部の学生を対象にした大会では、15校弱の大学が出場する中で3位に入った。近年では突破を阻まれていた予選リーグの壁を越え、部の歴史でも指折りの成績に輝いたことから、チーム内の雰囲気は充実したものとなっている。
今では、春の大会で優勝すること、1~14部にカテゴリー分けされた秋の関東理工科大学硬式庭球連盟団体リーグ戦大会で、現在の9部からより上位のカテゴリーに昇格することを目標に掲げている。普段は協力関係にある女子テニス部が1部リーグに所属する強豪であることから、掛札さんは「負けていられない」と対抗意識を燃やす。
昨秋に3年生が引退した後、13人の部員をまとめる部長に就任した掛札さん。就任直後は、部を引っ張っていけるか不安を感じていたというが、特定のメンバーに肩入れすることなく、中立の立場で部をまとめることを決意。部員全員とコミュニケーションを取ることを心がけるようにした。その結果、部としてのまとまりが徐々に強くなっていることを実感し、リーダーとしての自信を深めている。「試合に出ると応援の力を感じ、仲間がいるという安心感があります。出場する選手とサポートメンバーが仲良くできるように努力したいです」と掛札さん。その言葉には、部長としての強い意識が垣間見える。
静岡県出身で小学生からテニスを始めた掛札さんだが、熱中し始めたのは高校生になってから。進学先が県内屈指の強豪校で、選手層が厚くレギュラーとして試合に出ることが難しかったが、応援メンバーとして選手をサポートする中で、周囲の支えがなければ満足できるプレーができないことに気づいた。「テニスは個人競技ではなく、団体競技だという考えを叩き込まれました」と語る。テニスを高校の3年間だけで終わらせるのではなく、薬剤師の夢を追いながら大学でも熱意を持ってプレーしたいと考え、真剣に活動する星薬大の硬式テニス部に入部することを決めた。
高校時代に肩を故障し、整体院や整形外科でケアを受けたことで、医療に関する仕事への関心を強めていた掛札さん。痛みが続いたとき、痛み止め薬を使用して試合に出場したところ、集中力を切らさずにプレーできたことから、薬の効果を実感し、薬剤師という職業に興味を持った。受験生のころは、整体師や鍼灸師への道も視野に入れていたが、患者に直に接することができる薬局薬剤師を多く輩出している大学に進路を絞り、浪人時代を経て星薬大に入学した。
現在、薬学科の2年生に在籍しているが、入学した年度からカリキュラムが変わり、試験対策などに頭を悩ませる日々。それでも友人と勉強したり、教授に質問に行って課題をクリアし、単位取得は順調とのことだ。「規模が大きい大学ではないですが、人と人の距離が近くて仲を深めやすいですね」と大学の魅力を挙げる。上京した頃は一人暮らしに慣れるのに戸惑ったというが、現在は大学生活の合間を縫って週に3日はファミリーレストランでアルバイトをするなど多忙でも充実した日々を送っている。
薬局の薬剤師になることを目指し、星薬大に入学した掛札さんだが、職場見学や先輩の話から職種の多様さに気づき、薬局以外の進路も検討し始めている。これから具体的に絞っていく考えだが、「病院薬剤師やMRにも魅力を感じています。福利厚生の良さなどより、忙しくてもやりがいを感じる仕事を選びたいです」と将来を真剣な眼差しで見据えた。