【学校法人医学アカデミーグループ薬学ゼミナール】国試直前、最終チェックポイント

2025年1月20日 (月)

薬学生新聞

物理科目責任者 上赤 伸吾、化学科目責任者 上田 敬太郎、生物科目責任者 石塚 博康、衛生科目責任者 大内 邦弘、薬理科目責任者 齋藤 篤、病態・薬物治療科目責任者 安澤 寛、薬剤科目責任者 横井 宏哉、法規・制度・倫理科目責任者 重枝 礼、実務科目責任者 政野 敬史

 第110回薬剤師国家試験が今年2月22、23日に実施されます。2022年に改訂された薬学教育モデル・コア・カリキュラムでは「疾病の予防や個々の患者の状況に適した責任ある薬物療法が実践できる薬剤師の育成」などが重要視されました。第109回国試でも、「プロフェッショナリズム」「解剖・生理学」「疾病の予防」など改訂コアカリに準拠した内容が多く出題されており、今回も注意が必要です。薬学ゼミナール全9領域の科目責任者が第110回国試に向けた「最終チェックポイント」を紹介します。

 始めに国試の合格基準をおさらいしましょう。合格基準は、[1]問題の難易を補正して得た総得点について、平均点と標準偏差を用いた相対基準により設定した得点以上であること[2]必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれの配点の30%以上であること――の要件を全て満たすことで、禁忌肢の選択状況も加味されます。

表

 薬ゼミ自己採点システム(登録者数1万人以上)の結果より、近年の国試において禁忌肢が合否に影響を与えた事例は少ないと推測されます。マークミスにより間違えて禁忌肢を選択しないためには、▽時間配分をしっかり行って余裕を持って問題を読むこと▽「1つ選べ」が続いた後の「2つ選べ」などでマークミスをしないこと▽「適切でないのはどれか」などの否定形のリード文で選択ミスをしないこと――等が重要です。

 必須問題については「各科目の得点がそれぞれの配点の30%以上であること」という条件(いわゆる『足切り』)があり、第109回ではこの足切りに該当する受験生が例年より多くみられました。苦手科目をなくし、どの科目も基礎的な問題で得点できるようにしておきましょう。参考正答率の高い既出問題を繰り返し学修することも効果的です。

 薬ゼミLINEで既出問題の解説を確認することができますので、活用してください。過去問解説動画(100~109回)にアクセスするには、薬ゼミLINEアカウントにて「109-1」「109 13」のように国試の回数と問番号を入力して送信してください。

薬ゼミLINEのURL
https://liff.line.me/1656872021-gB4GGQbK/d1d91698df194e68a1625e4abb11509b

各科目最終チェックポイント

物理

 物理で高得点を取るためには、三つのポイントを意識した学習が効果的です。

 [1]用語の意味を理解する:既出問題を解く際に出てきた用語の意味を、自分なりに説明できるようにしましょう。

 [2]グラフや表を読み解く:グラフや表が何を表しているのかを正確に把握し、そこから必要な情報を読み取る練習をしましょう。

 [3]計算問題を解く:問題文から使用する適切な式が選べるようにしましょう。苦手な人は解説を参考にしながら自分で解けるように練習しましょう。

 物理は「物理化学」と「分析化学」の二つに大別できます。出題頻度が高い範囲として、「物理化学」では熱力学、反応速度論、分子間相互作用、放射線と放射能、「分析化学」では酸と塩基、定量試験、クロマトグラフィー、分光分析法、画像診断技術が挙げられます。既出問題を繰り返し解くことで、出題傾向を把握し、知識の定着を図るようにしましょう。

化学

 化学では始めに基礎事項、立体化学、酸塩基を徹底的に理解しましょう。化学反応は、主生成物がなぜ生成するのかを意識して学修してください。「糖やアミノ酸などの生体成分の構造と性質、関連する生体反応」「医薬品の化学」は、既出問題で問われた内容を自分で説明できるようにしましょう。最後に、「局方生薬」「生合成経路」「代表的な漢方処方とその副作用」も忘れずに。

 近年の化学では構造式を読む力が重要となるため、化学に留めることなく、他科目でも構造が関わる範囲については積極的に身に付けた知識と構造をリンクさせることを意識して学修してください。

生物

 生物は、基本的内容から、構造や図などを用いる応用力を必要とする問題まで幅広く出題されています。また、頻出範囲から満遍なく出題される傾向にあるため、広範囲をバランス良く学修する必要があります。そのため、問題演習時には、既出問題の正誤を確認するだけでなく、その問題に対する周辺知識も把握し、構造や図などにつなげる意識が重要です。

 最重要の範囲としては、「解剖・生理学」と「生化学」があげられます。解剖・生理学は「他科目につながる臓器や組織の機能」、生化学は「各栄養素の構造と代謝」について学修することで効率的な学修および得点の向上を目指すことができます。上記の範囲を中心に最終確認を実施しましょう。

衛生

 衛生では、次に挙げる出題頻度が高い範囲は必ず見直してください。「保健統計」の死亡原因の推移はグラフ・表での出題が多いため、年次推移の理由を必ず理解しましょう。「予防接種」は予防接種法での分類(A類・B類)、ワクチンの分類(弱毒生・不活化・トキソイド)、接種時期と回数を確認してください。「感染症」は母子感染、性感染症を特に確認しましょう。

 「ビタミン」「食品添加物」は構造式での出題が多いため、構造式を見て物質名、機能や用途が分かるようにしましょう。「発がん物質の代謝活性化」は特に既出問題の類似が出題されやすいため、代謝酵素と究極的代謝活性体の分類を目標に学修しましょう。「水環境」では水道水質試験法の原理、活性汚泥を用いた下水処理の原理を簡潔に説明できる状態を目指しましょう。

薬理

 薬理は、例年出題基準から満遍なく出題されています。そのため、全範囲を満遍なく見直して総仕上げをしましょう。具体的には、既出問題で出題済みの薬物は、作用機序と薬理作用をつなげて暗記・理解しておく必要があります。薬物の作用機序だけの暗記では、必須問題は解けても理論問題で薬理作用がひっかけられた時に間違えてしまう可能性があります。従って、既出問題の中でも理論問題の解きなおしを中心に「薬物名+作用機序+薬理作用」の最終確認をしましょう。特に、自分が何回も間違えてしまった問題は優先して見直しをしましょう。

 また、[1]代表的な薬物の構造[2]言葉の意味(耐性、身体依存、pA2など)[3]薬理作用が複雑な薬物(ファスジルやトロンボモデュリンなど)[4]抗体医薬品とチロシンキナーゼ阻害薬――の最終確認もお忘れなく!

病態・薬物治療

 本領域は「病態・薬物治療」と「情報・検定」の範囲から出題されます。病態・薬物治療では、臨床現場で対応する機会の多い一般的な疾患が出題される傾向があるため、「循環器系、泌尿器系(腎)、消化器系、代謝・内分泌系、中枢・精神系、悪性腫瘍」の分野を中心に他科目との知識を関連付けて学修しましょう。近年の実践問題では、複数の疾患を合併している患者に対して、治療薬の使用の可否を判断する出題が増加しています。そのため、個々の患者において「最も適切な治療は何か」を考えながら問題を解きましょう。

 情報・検定では、やや難易度が高いものの、一般的な医薬品情報源や検定・推定の手法についての問題が多く出題されるため、既出問題を中心に学修を進め、理解を深めることが効果的です。

薬剤

 近年の薬剤では、グラフや図の読解が必要な内容が多数出題され、実践問題では投与計画や薬物相互作用など、個別最適化医療を意識した内容が多いです。なお、計算問題は例年5題程度の出題が見込まれるため、公式の確認と計算問題の演習も合わせて行いましょう

 優先的に確認すべき頻出内容は、薬物動態学ではトランスポーター、遺伝的多型、代謝の誘導と阻害、投与計画を含めたTDMです。物理薬剤学では物質の溶解や分散系を中心にグラフで頻出されます。製剤学ではDDS(放出制御、ターゲティング、吸収改善)、製剤添加物が具体的な製剤例とともに頻出されます。既出問題を単純に暗記するのではなく、内容の理解を大切にして学修を進めましょう。

法規・制度・倫理

 近年の国試においては、倫理の範囲では新傾向の問題が多く出題されていますが、受験者間で然程大きな得点差は見られない傾向があります。法規・制度については、薬剤師に必要な資質や臨床現場を意識した内容も含めて幅広く出題される傾向があります。既出問題の内容を理解していることで得点できる設問も多いので、特に次の範囲の既出問題を中心に確認しておきましょう。具体的には、[1]薬剤師法[2]医薬品医療機器等法[3]承認後の制度(再審査・再評価、副作用等報告)[4]麻薬及び向精神薬取締法[5]介護保険制度――の領域です。既出問題通りでの出題は少ないですが、余裕があれば医療法や医療保険制度の範囲も学修を進められるとより高得点につながります。

実務

 実務は全体345問のうち95問と出題数が多く、幅広い知識を必要とする科目ですが、既出問題の内容を理解し、関連する知識の定着を図ることで得点力の向上が期待できます。薬理や薬物治療の知識が基盤となる問題も多いため、実務で副作用や服薬指導等の範囲を勉強した際には薬理・薬物治療に戻り、薬の作用機序や医薬品の適応を確認しておくことをおすすめします。

 実務の中で重要度の高い範囲としては、チーム医療や副作用、相互作用、服薬指導等があります。特に副作用については、近年、薬剤師に服薬後のフォローが求められていることから、検査値を基に患者の状態を判断する症例問題への対応が必要です。基準値を確認した上で、既出問題を用いた検査値の読み取り練習をしておきましょう。また、改訂コアカリにおいて重要となる個別化医療の観点から、併用薬を考慮した処方提案ができるよう、既出問題に見られる代表的な相互作用の組合せは必ず把握しておきましょう。



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