【薬局・ドラッグストアの薬剤師の未来予想図】第7回 改正薬事法の動向とOTCネット販売

2014年7月1日 (火)

薬学生新聞


サンキュードラッグ代表取締役社長
平野 健二

平野健二氏

 2006年に成立し、09年から施行された改正薬事法は、一般用医薬品(OTC)が第1類から第3類に分類され、同時に登録販売者制度ができて、薬剤師の手によらず、医薬品が買えるようになったというのが主な内容である。その結果、起きた現象としては、ドラッグストア等の出店が容易になる反面、第1類の入手が困難になる。一方、少しずつではあるが、スイッチやダイレクトOTCの品目数も増えた。ここではそのような目先の問題だけでなく、事の本質から理解していただくことを目的とする。

求められる薬剤師のリーダー的役割

 薬事法改正をもっと広い視野で見た時、浮かんでくるのは、医療費抑制に向けての医療・介護のプレイヤーの役割分担の変更である。日本の医療保険およびそれを裏で支える国の財政が逼迫していることは周知の事実である。医療費抑制には予防の推進やジェネリック医薬品の導入など、凄まじい選択肢が存在するが、この役割分担の変更はその中でも有効性が高い。

 わかりやすく言えば、医師にしかできないことだけを医師に、薬剤師にしかできないことだけを薬剤師に任せることとし、他の業務は必要な知識や技術を持つ(そのために習得させる場合も)ほかの医療スタッフに振っていくことである。

 これを薬局に当てはめると、医薬品の服用に必要なアドバイスのレベルに応じて、薬剤師や登録販売者を配置すればよいというのが、改正薬事法の底流にある理念である。第1類医薬品の中に薬剤師のアドバイスが必要なのかと思いたくなる品目も混じっているが、これは、ダイレクトOTCやスイッチOTCに関して、一定期間は1類として副作用発現等の調査期間を設定したためであり、長期的には解消されるはずである。

 第2、3類は登録販売者が売れることになり入手可能な場所と時間の範囲が広がった。販売のコストも下がったはずである。だからといって、薬剤師がかかわらなくてよいと考えるのは間違いである。OTCを求めるお客様は「自分の症状を改善したい」のであって、それが第何類かは関係ない。たまたま第1類かもしれないし、第3類かもしれないというだけの話である。

 現状、薬剤師が充足していない中で、お客様と最初に接するのは、むしろ登録販売者である。ということは、登録販売者も第1類の勉強をし、「ひょっとすると、この方にお勧めすべきは第1類のあの商品かもしれない」と気づいてもらわなくてはならないのである。その教育を店内でできるのは薬剤師しかいない。

 さらに第1~3類の医薬品のみならず健康食品等との併用チェックも発生する。特に来年には「健康食品の機能表示」解禁が予定されているのため、こうした問題はさらに重要になってくる。薬剤師は薬局における医療チームのリーダーとしての役割が求められるのである。

流通業の次世代制するオムニチャネル

 ネット問題に関しても、「安全性vs利便性」の議論がある。が、「そもそもどの程度のリスクがあるのか(あるとして利便性を上回るのか)」「対面でなくては安全は担保できないのか(対面ならばできるのか~どうすればできるのか)」といった問題に、薬剤師自身も答えを出さなくてはならない。

 しかし、ネット問題の本質はここにあるのではない。従来から第2、3類に関してネット販売は可能であったのに、どうしてネット業者が第1類まで含めた解禁にこだわったのか。実は第1類の解禁は、そのまま医療用医薬品のネット販売に直結するのである。本丸は500億円前後の第1類ではなく、6兆円の調剤市場なのである。

 筆者は、調剤もネットで発注可能なアメリカのメールオーダーセンターを幾度も見学している。1日1~2万処方をベルトコンベアに並んだ自動計数機で処理するが、薬剤師は数人しかいない。それも全て患者との電話対応、医師への疑義紹介に限られている。

 「数える」ことに薬剤師という職能は必要ないとされているのだ。郵送のコストを割り引いても、圧倒的な低コストで運用できるこの仕組みが調剤全体の約3分の1にまで普及した理由は、やはり医療費の抑制である。

 民間保険が主体のアメリカでは、保険者もだが、保険料負担がわが身に降りかかる被保険者(加入者)自身がコスト意識に目覚めていることが背景にある。日本国民も、消費増税1%分をたった2年間の医療費増加で食いつぶしていく現状から、遠からずここに目を向けるようになると覚悟すべきである。

 多くの調剤薬局が介護施設の処方箋を受託しているが、そのほとんどは、施設に薬を届けるだけである。ならばネットで十分と言われたら、どう説明するのであろうか。服薬指導の充実と言うが、個別に訪問して服薬指導する時間をどう捻り出すのか、服薬状況の管理をどうするのか、医師、看護師、ヘルパー等様々な人がバラバラに訪れている非効率と情報の分断に薬剤師ができることはないのか――など、大きな視点から薬剤師の果たす役割を再構築しなくてはならない。ネット問題の答えは、ネットだけを見ていてはならないのである。

 最後に、ネットの属性を考える。ネット先進地のアメリカについて過去15年を振り返ってみると、ネット販売額が急増している一方で、ドラッグストア(薬局)の数も増えている。大きく減少したのは家電やおもちゃの量販店である。ネットがその本領を発揮するのは「大きい」「重い」「低頻度購買」「高単価」「多アイテム=低回転」といった商品なのだ。こうした条件がほとんど当てはまらないドラッグストアは、調剤を含めて最もネットの影響を受けにくい存在であったのだ。

 問題はここからである。オムニチャネルという言葉がある。ネットとリアル(実店舗)の融合を意味するのだが、先に述べたネットの強みを「リアル」が、または最寄りの便利性や接客の良さを「ネット」が手に入れた時、従来型のネット専業、リアル専業は滅び、これまでになかった世界が出現する。社会や流通業の仕組みは20~30年周期で変化していくが、筆者はオムニチャネルこそ次世代を制すると考えている。今後、この連載の中で触れることがあると思うが、懸命な読者は今からこの言葉に注目しておいていただきたい。



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