【学校薬剤師の仕事】第1回 学校保健安全法と学校薬剤師

2014年7月1日 (火)

薬学生新聞

日本薬剤師会理事・日本薬剤師会学校薬剤師部会長
村松 章伊

明治以降145年余の歴史

快適環境に向けて
村松章伊氏

 学校保健は、明治初年以来145年余りの歴史を有し、児童生徒の健康の保持増進に大きな役割を果たしており、特に昭和33年に制定された学校保健法により制度的に体系が整備され、それに基づく活動が進められてきた経緯がある。

 しかし、近年の児童生徒等の健康・安全を取り巻く状況の変化は大きい。学校における保健管理と共に安全管理について、地域の実情や児童生徒の実態を踏まえつつ、各学校において共通して取り組まれるべき事項について規定の整備を図る。併せて、学校の設置者ならびに国および地方公共団体および校長の責務を定めた学校保健安全法が平成21年4月に施行された。これによって学校保健の一層の充実を図るための組織的な保健指導の充実が求められた。

 学校環境衛生については、学校保健安全法 第5条(学校保健計画の策定等)で、学校においては、児童生徒等及び職員の心身の健康の保持増進を図るため、児童生徒等及び職員の健康診断、環境衛生検査、児童生徒等に対する指導その他保健に関する事項について計画を策定し、これを実施しなければならない。

 とされ、また、同第6条(学校環境衛生基準)で、文部科学大臣が望ましい基準として学校環境衛生基準を定めている。

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 さらに、学校保健安全法施行規則第24条(学校薬剤師の職務執行の準則)では、(一)学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与すること(二)第1条の環境衛生検査に従事すること(三)学校の環境衛生の維持及び改善に関し、必要な指導及び助言を行うこと(四)法第八条の健康相談に従事すること(五)法第九条の保健指導に従事すること(六)学校において使用する医薬品、毒物、劇物並びに保健管理に必要な用具及び材料の管理に関し必要な指導及び助言を行い、及びこれらのものについて必要に応じ試験、検査又は鑑定を行うこと(七)前各号に掲げるもののほか、必要に応じ、学校における保健管理に関する専門的事項に関する技術及び指導に従事すること。

 学校薬剤師は、前項の職務に従事したときは、その状況の概要を学校薬剤師執務記録簿に記入して校長に提出するものとする。

 として学校薬剤師の職務内容について法的な位置づけが明確化されている。

 このため、児童生徒等および職員の健康を保護する上で学校環境衛生の維持を図るための環境衛生検査の実施は必要不可欠なものといえる。

 また、快適な学習環境を作ることは、学習能率の向上や情操の陶冶を図る上でも意義があることから、児童生徒等および教職員が学校における環境衛生について興味・関心を持ち、そこから得た知識を実際の行動に結びつけられるような指導も求められていると言える。

比類なき日本独自の体制

適正使用を普及

 こうした、学校薬剤師制度は世界に類を見ない日本独自のものである。学校薬剤師は学校保健安全法の定めるところにより、全国の小・中学校および高校には必ず任命・委嘱されている。

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 学校薬剤師は、薬剤師法第一条ならびに薬剤師綱領にもある、薬剤師が広く薬事衛生をつかさどる専門職としての立場から、法律に基づき学校における適切な環境の維持改善および医薬品、毒物、劇物ならびに保健管理に必要な用具および材料の管理等に関し必要な指導および助言を行うため設けられた制度であり、児童生徒等の心身の健康の保持増進を図るために行う学校環境衛生活動等は非常に重要な役割を担っていると言える。

 さらに、中学校では平成24年4月、高等学校では平成25年4月より施行された新学習指導要領でのくすり教育は新改正薬事法(=医薬品医療機器等法)の施行(平成26年6月12日)にも絡んで、専門性が求められる内容でもあり、「医薬品の有効活用」という単元に関しては学校薬剤師の参画を期待する学校関係者の声が多く寄せられている。

 学校薬剤師は今、児童生徒および教職員の保健管理に深く携わると同時に、薬剤師職能としての根幹をなす医薬品の適正使用や指定薬物を含んだ違法ドラッグ問題等、薬物乱用防止活動など、保健教育への参画が強く求められている。



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