ドラッグストアで求められる薬剤師‐多岐にわたる役割へ、期待大きく

2015年3月1日 (日)

薬学生新聞

石橋氏

石橋氏

 ドラッグストア業界は、長く続くデフレ不況の中でも成長を続けてきた業態だ。一方で、現在に至っては成長の伸びがやや鈍化している傾向にあり、ドラッグストア商圏の狭小商圏化や医薬品ネット販売への対応、消費税増税への対応など、取り巻く環境にも大きな変化が見られている。今後のドラッグストアには、地域で最も身近な「生活便利店」としての役割を堅持しつつも、健康のハブステーションとしての役割等が期待されている。マツモトキヨシホールディングス(HD)で人事を担当する石橋良次氏は、「ドラッグストアで働く薬剤師には、医療人として治療という面で患者様等に接することと共に、健康~予防~未病といった面を担う役割も求められていく」ことを強調する。

健康~予防~未病への対応も重要

 ドラッグストア業界の現状を見ると、1999年頃には約2兆円だった業界規模が、現在では3倍の6兆円にまで成長している。一方で、ここへ来て成長の伸びは鈍化している。石橋氏は、「ドラッグストアが強みとしていた医薬品や化粧品などの各シェアが60%を超えてきて、伸びしろが少なくなってきている部分は現状としてあると思う」とする。その一方で、「まだ伸びる余地があると思う分野は、医薬品では調剤分野、あと個人的には健康食品も伸びてくると思っている」と語る。

 業界規模だけでなく、そのほかにもドラッグストア業界には、著しい狭小商圏化、医薬品ネット販売の解禁、さらには今後予定されている食品の機能性表示制度の導入など、取り巻く環境の変化は少なくない。

 こうした現在の変化を的確に捉え、新しい成長の可能性を作り上げることが、今後のドラッグストアには求められており、ドラッグストアで働く薬剤師に期待されている役割も大きく、多岐にわたっていくことが予想される。

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 石橋氏は、「これからドラッグストアで働く薬剤師には、医療人として治療という部分で患者様に接していくことはもちろんのこと、健康~予防~未病といった部分においても、しっかりと患者様に対応していくことが求められていくと思う」と指摘。

 「健康~予防~未病といった部分を担えるのは、唯一ドラッグストアなのではないかという思いは昔から変わらず、治療や介護に加え、健康~予防~未病といった部分においても患者様との接点を増やし、地域におけるかかりつけの拠点になっていくことが重要」との考えを強調する。

 そうした中、マツモトキヨシHDが採用に当たって薬剤師(薬学生)等に求める人材像について石橋氏は、▽医療人として地域医療に貢献していく人▽自分なりのビジョンとそれを実現する意欲を持った人▽高い志や夢を持った人――という三つを挙げる。

 採用に際して接した薬学生に関しては、「真面目であり、医薬品や医療についての知識はしっかりと身に付けてきている」と評価する。

 その上で、「知識はあくまで知識であって、実践の場では同じ知識を伝えるに当たっても、患者様等一人ひとりによって全て伝え方が変わってきたりする面がある。それは現場でしか分からないこと」とし、「医療人は情報を提供するところから始まるわけではなく、患者様等に必要とされて生きるものだと思う。自分が興味あることだけでなく、興味のなかったことに対しても積極的にチャレンジして吸収していくことが必要であり、そうした意識を持ってほしい」とする。

 また、実際に薬剤師として働き始めた後には、研修等を通じて自己研鑽していくことが大切になってくる。例えばマツモトキヨシHDでは、様々な研修等が充実しており、自分を磨き、成長させる環境は整っている。

 このうち、同社のブラザーシスター制度は、新入社員に対して比較的年齢の近い先輩社員が付き、3年間指導を行うと共に個別面談など相談にも乗りフォローするというものだ。石橋氏は、「3年間で、まずは薬剤師として最低限必要なスキルと知識を持った形に育てていこうという制度」と説明。

 同制度は薬学教育6年制を卒業した1期生が入社した年にスタートし、今年3月にはその1期生がブラザーシスター制度を終え、4月からはブラザーシスター制度の指導係を務める人もいるという。

未来は自ら切り開いていける

 人口減少や超高齢社会といった社会環境の中、「薬学生の皆さんが、“このような薬剤師になりたい”と思うことはもちろん重要だが、われわれは必要とされて初めての医療人であり、今後の日本においては、“どのような薬剤師が必要とされるのか”ということを、いろいろな話を聞いたり、いろいろな体験などを通じて自分自身で見つけてもらいたい」とする石橋氏。

 薬学生に向けて「就職はゴールではなくスタートライン。まずは足場を固めて、しっかりとスタートを切ってほしい。その後は、自分で自分自身の未来を切り開いていくことができるので、医療人として患者様等に自分として何ができるのか、逆に患者様等は自分に何を求めているのかというものを、しっかりと見極めながら仕事に取り組んでいってほしいと思う」とメッセージを送る。



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