【世界の薬学教育】第1回 FIPと薬剤師

2015年3月1日 (日)

薬学生新聞


城西国際大学薬学部
臨床統計学教授
山村 重雄

 このコラムでは薬学生の皆さんに、世界の薬剤師・薬学教育事情を紹介して、薬学生として、日本の薬剤師の将来だけではなく、世界的視点でこれからの薬剤師の果たすべき役割について考えてもらえたらと思っています。今回はInternational Pharmaceutical Federation(FIP)の紹介と世界の薬剤師に関係した統計を紹介します。

世界的に関心高まる“薬学”教育

FIPにて

FIPにて

 FIP(国際薬学連合)は1912年に創設された世界中の薬剤師や薬学関連の連合体で、現在132の加盟団体で構成されています。1)

 FIPはWHO(世界保健機関)とも密接な関わりを保ちながら、世界の300万人の薬剤師、薬科学者(薬学の基礎研究者)を代表する団体です。日本からは、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、日本薬剤学会、日本薬学会の4団体が加盟しています。参加者は、薬科学者と実務薬剤師が中心です。

 FIPの中には、大きく二つの部門があり、BPS(Board of Pharmaceutical Sciences:主に薬学の基礎研究者が集う部門)とBPP(Board of Pharmaceutical Practice:主に薬剤師など実務家が集う部門)に分かれています。FIPが自らの任務として「薬剤師実務と薬科学を進歩させることで、世界の保健衛生を向上させること」を掲げています。

 世の中の急速な進歩に対応しつつ、この任務に対応するため「教育」の改革が必要であると考えて、FIP2020ビジョンに「薬学・薬科学教育におけるFIPの役割を高める」ことが目標として掲げられました。そのため、最近は薬学教育に関わる参加者も増加し、薬学の研究、実務、教育の全体をカバーする学会となっています。

各国の参加者と討論する筆者

各国の参加者と討論する筆者

 FIPの教育部門の中で中心的に活動しているのがFIPEdという組織です。FIPEdには、教育に関わる国レベルの組織、教育を提供する学術機関、教育と研究に携わる個人が参加しており、AIM(Academic Institutional Membership)、Pharmacy Education TaskforceそしてFIPのAcademic Sectionからなる組織です。FIPEdは、薬科学者と実務薬剤師の代表者が参加して運営されている点で、FIPの中でも特別な組織となっています。また、FIPEdでは2014-2018年の5年間の活動計画を作成し、公開されています。2) FIPEdは世界的な視野で薬学教育を取り扱っていますが、詳細については続報で紹介したいと思います。

各国で多様な薬剤師事情

 さて、突然ですが、世界中で薬剤師が何人くらいいるか知っていますか?正確な数値はわかりませんが12年にFIPが中心になって調査した結果、回答した76カ国の平均は人口1万人当たり6.02人でした。日本は約22人で、世界で2位でした。しかし、1位はマルタであり、人口が非常に少ないために薬剤師密度が高くなっていると考えられますので、日本が事実上最も薬剤師密度が高い国と考えてもよいでしょう。薬剤師密度として見た場合、日本は世界の中でやや特異な国です。ちなみに、日本の次は、ヨルダン、エジプト、台湾の順番です。ここまで、人口1万人当たりの薬剤師数が15人以上です。3)

 この調査でわかったことは、アフリカでは薬局・薬剤師数が非常に少ないことです。人口1万人当たり薬局は0.6、薬剤師は0.5人しかいません。アフリカ全体で国や地域の衛生状態を保つのが困難になっている原因でもあります。

 アフリカ諸国で薬剤師が少ないのは薬科大学が少ないのも理由の一つです。薬科大学がない国も多く、あっても多くの国で1つだけという状況です。薬剤師を増やそうにも増やせる環境にはありません。国の保健衛生を確保するには薬剤師の活躍は欠かせませんから、教育問題は重大です。

 日本の状況を見ておきましょう。皆さんご存じの通り、現在日本では薬学部、薬科大学は国公私立大学を合わせて74あります。世界で4位(中国と同じ数)です。もっとも薬科大学の数が多いのはインドで1026!!。日本は薬科大学が多いといわれますが、インドの人口が日本の10倍としてもさらに多くの薬科大学があることになります。次いでブラジルの417、アメリカの129と続きます。4) 国の間で教育事情は大きく異なっていることがわかります。

 薬科大学に平均何人くらいの学生がいるかの統計もあります。その統計では日本は1学年120人くらいになっていますが、実際はもう少し多いように思います。一番多いのはエジプトで1学年平均480人もいるそうです。平均は1学年当たり71人だそうです。十分な職能教育にはそれくらいの人数に絞った方がよいのかもしれませんね。

多くは実務経験後に“登録”

 各国において薬剤師になるための薬学教育の年限も異なります。日本では6年の大学教育を終了して薬剤師国家試験に合格すれば薬剤師として働くことができます。

 しかし、多くの国では、大学を卒業してから一定期間の実務経験をした後に薬剤師として登録されるのが一般的です。たとえば、オランダでは6年の大学教育の後、2年間の実務経験をして薬剤師となります。大学での教育と共に実務経験が重要視されていることがわかります。

 今回は、FIPの紹介と薬剤師に関する世界的な統計の結果を紹介しました。順次、世界で進められている薬学教育の考え方などについて紹介したいと思います。


1)http://www.wppf.org/images/stories/fip_2020_vision_JP.pdf
2)http://www.fip.org/files/fip/PharmacyEducation/FIPEd_Action_Plans/FIPEd_ActionPlan_2014-2018_Japanese.pdf
3)http://www.fip.org/static/fipeducation/2012/FIP-Workforce-Report-2012/?page=hr2012
4)http://www.fip.org/files/fip/FIPEd_Global_Education_Report_2013.pdf



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