【薬剤師になる前に~今だからOTC医薬品を学んでおきましょう!】第3回 OTCの活用1:薬局でできる軽医療~健康カウンセリングとOTC医薬品の適正販売

2015年7月1日 (水)

薬学生新聞

(株)スギ薬局、日本薬剤師会一般用医薬品等委員会委員
藤田 知子

藤田知子氏

 今年3月に実施された第100回薬剤師国家試験問題を入手し、どんな問題があるのかなと、実践問題を中心に覗いてみました。そこには、処方薬や健康食品との相互作用を確認し、適正なOTC薬を選択するなど、薬局店頭における顧客とのやり取りを想定した問題が随所に出ており、その数は私の想像を超えるものでした。

 これら問題を理解し回答するには、OTC薬やサプリメントに普段から触れていなければ難しく、合格点以上の正解を得るためには、しっかりとOTC薬について学んでおかなければならないと感じました。そして、われわれ薬局薬剤師も、実務実習で指導する側として、OTC薬やサプリメントの知識を持ち、商品をそろえ、日常的な健康相談やカウンセリングを通じてOTC薬を適正販売しているか?など見直す必要があると思いました。

 現在、調剤を主体とした多くの薬局では、処方箋を持った患者さんが来局されるため、薬の効果、副作用の有無、OTC薬の服用状況などを確認していると思います。しかし、医療機関で治療中ではない健常人の方の健康相談、さらにはセルフメディケーション範疇の症状に対しては、積極的介入ができていないのではないかと感じています。

 では、一般生活者に対するセルフメディケーションの積極的な介入とはどういうものでしょうか?

実習先で健康相談の体験を

 “ごほっごほっ”と咳をしながら、怠そうに体を無理矢理動かして来店された患者役(Simulated Patient:SP)に、「こんにちは」「どうされましたか?」と薬剤師役が尋ね、「風邪を引いたのでパブロンください」とSPが答える……。これは、前回も紹介したある薬科大学でのセルフメディケーション講座でのロールプレイングの一場面です。

 こうした患者さんに対し、指名された風邪薬をそのまま販売したのでは、積極的な介入とはいえません。ましてや具体的な症状を聞かず「インフルエンザかもしれませんから、向かいのクリニックを受診して、処方箋を持ってきてください」と、最初から受診を促すということがあれば、ファーストアクセス機能を担っているといえません。

 このセルフメディケーション講座では、患者役との対話からどのように情報を聞き出し、判断し、適切な医薬品を選んで勧めればよいか、どのような場合に受診を促したらよいかを学習し、OTC薬の特徴や、その働きを学んだ上で、ロールプレイングを実施しました。

 授業の前後でOTC薬の適正販売への意識調査を行ったところ、「医師の仕事に似ている」とする学生が、授業前には45%ほどだったものが、授業後には77%に増加しました。

 医師のような診断はできなくても、軽医療の薬物治療を担うには、臨床判断能力が必要になってきます。軽医療ではありますが、顧客に対し行う薬物治療の責任を負うことを考えて対応すべきところも「医師の仕事に似ている」と感じたのではないかと思われます。

 まさに、セルフメディケーションの積極的介入の意義がここにあるのです。こうした授業は現在、どの大学でも行われていると思いますが、机上の学習は、現場で使ってみないことにはなかなか身に付かないものです。

 というのも、臨床チェック(バイタルチェック、血液検査等)がないまま、患者さんからの訴えだけで、添付文書に記載されているOTC薬情報をそのまま症状に照らし合わせることは難しからです。

 そこで、個々の人の抱えている問題、既往歴、併用薬、症状など、患者さんが訴えきれないことをさらにもう一歩踏み込み、情報を拾い上げながら、添付文書の情報を活用し顧客の悩みを解消していくことが必要になります。

 実習先の薬局で、いろいろな健康相談実例を体験してほしいと思います。そうすれば今後、薬剤師が「軽医療」へますます積極的に介入していくという時代に向け、有用な体験になることでしょう。

本来の“職能”に社会的期待高まる

 昨年の日本医療薬学会で、「“軽医療”ができる薬剤師こそが、選ばれる薬剤師だと思います」と、厚生労働省保険局医療課の中井清人薬剤管理官が講演されました。続けて、「OTC薬の販売を通じてセルフメディケーションを支援し、地域住民が様々なことを最初に相談できるファーストアクセスの場として薬局を確立する。在宅医療への参画推進、チーム医療の一員として職能を発揮してほしい」とコメントされていました。

 また、このほど塩崎恭久厚労大臣は、プライマリケアを強化するため、2025年をメドに全国5万7000軒の保険薬局をかかりつけ薬局に再編し、地域包括ケアシステムの構築と医療介護サービス体制の改革を行う、「患者のための薬局ビジョン」を年内に策定すると発表しました(薬事日報2015年5月29日)。前回の紙面でも紹介しましたが、「健康ステーション化構想」が本格的なものとなるようです。両者のコメントから、薬局のあり方を大きく変えようとしていることがうかがえます。

 しかし、「薬局のあり方を大きく変える=薬剤師の職能を拡大する」というものではない。本来、薬剤師が行うべき業務、役割、責任をもう一度見直すということだと思います。

 “見直す?”と冒頭にも述べましたが、地域の方のセルフメディケーションへ積極的介入を行うことだと思います。セルフメディケーションや軽医療に対応できるOTC薬はたくさんあります。健康カウンセリングを通じ、軽医療にも対応できるよう、机上だけでなく実務実習で体験してください。増大しつづける国民医療費の削減に寄与できることも実感できるでしょう。



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