第4回 薬局薬剤師と在宅医療~薬剤師業務の再構築~

2015年7月1日 (水)

薬学生新聞


うえまつ調剤薬局・宮城県名取市
轡(くつわ) 基治

医療用麻薬使用のポイント

轡基治氏

 かつて日本は、癌性疼痛の治療について後進国といわれてきた。痛みをはじめとする苦痛症状に適切な緩和医療を施すという概念そのものが浸透しておらず、痛みを耐え忍びながら療養生活を強いられるのが、日本の癌患者と終末期のあり方だった。

 しかし、がん対策基本法の施行や種々の医療政策、また日本緩和医療学会や日本緩和医療薬学会などの関連団体による啓発普及活動も相まって、癌の診断時、あるいは早期から症状緩和のための治療を施す場面は着実に増加している。

 医療用麻薬(オピオイド)はこの10年余りの間にモルヒネに加えてオキシコドンやフェンタニル、メサドン製剤などが発売され、作用機序や投与経路、徐放設計の異なる製剤から最適なものを選択できるようになった。

 その一方、一般的にはこれらの医療用麻薬は終末期や治療を諦めたら使用するものという先入観はまだ払拭されていない。ある俳優の『担当医に生きているだけならモルヒネで殺してくれと言いました。安楽死ってやつですか、そのほうが楽ですから……』というコメントが当たり前のごとく報道されていたことからも、そのようなイメージは根強いままであることがうかがえる。

 とはいえ、現在では、癌治療と並行してオピオイドを用いる疼痛管理を受けている患者は増加している印象がある。すなわち外来と在宅を問わず保険薬局でも医療用麻薬を調剤し、服薬支援を実施する機会が一般的になりつつある。基本的には外来患者でも在宅患者でもオピオイドに関する服薬支援のポイントは変わらない。以下、要点を述べる。

オピオイド使用の成否は投与開始時のサポート次第

 痛みに対するオピオイドの必要量は患者によって異なることが知られており、開始時は痛みの緩和に加えて用量決定(『タイトレーション』と呼ばれることがある)も処方目的の一つとされている。外来ではオピオイド徐放性製剤の定時内服+頓服(レスキュードーズ)用の速効性製剤との組み合わせで処方されるのが一般的である。定時内服とレスキュードーズの効果をモニタリングしながらオピオイドの至適用量を決定するが、入院治療や在宅医療の場面では観察機会が確保されているので短期間で用量を確定しやすい。

 一方、外来では次回受診時まで評価される機会がないことが多い。また、同時に副作用対策も実施される。オピオイドは消化管の蠕動運動と腸管分泌を抑制する作用をもち、これによる便秘と嘔気はQOLを低下させる因子となりやすい。またこれらの症状に苦しむことで患者は自己判断で服薬を中止してしまうことがある。

 このような事態を防ぐために、初めてオピオイドを使用する患者(『オピオイド・ナイーブ』と呼ばれることがある)には緩下剤と制吐剤が併せて処方される。嘔気そのものは数日から長くても2週程度で耐性を獲得するため制吐剤は不要になる。制吐剤にはドパミンD2受容体遮断薬が多く用いられており、これによる錐体外路症状などの副作用の懸念があるため、嘔気が落ち着いたら必ず中止する。

 便秘は耐性を獲得しないためオピオイドの服用中は緩下剤も含めて排便管理を継続する。保険薬局ではこれらのプロトコルがどのように設定されているかを確認しつつ、痛みの緩和と継続服用が両立するよう患者を支援する。

 支援するためには観察と評価が必要だが、実は外来患者の場合には在宅患者と異なり次回の受診・来局までその機会がない。投与開始時期の効果と副作用の評価は重要であり、必須となる。そのため、予め患者に伝えておいて服用開始から2~3日目を見計らって電話などで使用状況を尋ねてみるとよい(

 この段階でもし問題が見つかれば、速やかに対処することができ、スムーズな導入を図ることができる。問題が見過ごされてしまった場合は、痛みの治療が遅れるだけでなく、それ以後の疼痛管理が進まなくなる可能性がある。

在宅医療では副作用観察も多職種で実施する

 在宅医療では、医療従事者の眼が常に患者に届いているわけではない。また、患者を直接観察できる時間は、患者の生活時間全体に対しほんの僅かで、終末期癌患者を例に挙げても1週間のうち医師・看護師・薬剤師の訪問時間の合計は、長くても6~7時間程度である。患者が薬剤を服用する場面も、そのほとんどは医療従事者の眼に触れることがない。

 オピオイドを使用している場合、痛みが強くなった際のレスキュードーズの服用は基本的には患者の自己判断で行われる。基本的には、レスキュードーズは痛みが緩和されなければ追加服用が可能であり、患者にもそのように説明される。

 腫瘍による内臓痛にオピオイドが処方されている患者を例に考える。

 「普段患者は腹部にときおり現れる痛みにレスキュードーズを服用し、1回の服用で十分な効果を得られていた。ある日突然、腰に強い痛みを覚え、レスキュードーズを服用した。しかし痛みは全く治まらず、『じゅうぶん効くまで30分ごとに追加服用してよい』と指導されていたのを思い出してもう一度服用した。それでも痛みは変わらず、さらに追加した。……」

 これは、腫瘍の腰椎転移から脊椎損傷に至る例で、これに伴う痛みにはオピオイドはほぼ無効である。患者は楽になりたい一心でレスキュードーズを服用するが、追加服用を重ねるうちに薬理作用が過剰となり意識障害と呼吸数の低下に陥る可能性がある。

 在宅医療や外来治療では、このようなケースや、あるいは誤用(服用時間や回数など)により重篤な状況に至る可能性があるが、オピオイドの場合、これを防ぐためにはその薬理作用に基づき縮瞳・傾眠・呼吸数の3項目を観察する(http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/2012iryo_tekisei_guide_065.pdf

 観察は薬剤師だけが実施するのではなく、医師や訪問看護師にも伝え、より多くの観察機会を設け、オピオイドの過量状態にいち早く気付ける環境を構築する。また、これらの薬理作用は外見上での観察が比較的容易であるため、ホームヘルパーや家族とも情報共有しやすい。



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