新たな感染症治療薬の開発は、製薬会社にまかせているだけでは進まない――。そんな共有認識が9~11日の3日間、神戸市で開かれた日本化学療法学会総会のパネルディスカッションで示された。感染症治療薬の開発の手間やコストと上市後に得られる売上を考慮すると製薬会社は、感染症治療薬の開発に二の足を踏まざるを得ない。特許期間の延長や薬価の優遇、公的な研究費の整備、産官学が一体となった開発体制の構築など、社会的な支援が必要になることが強調された。
日本化学療法学会創薬促進検討委員会委員長の舘田一博氏(東邦大学医学部微生物・感染症学講座)は「製薬会社はビジネスの原理で動いている。飲み続ける必要がある慢性疾患治療薬は儲かるからつくるが、数週間で完治する感染症の治療薬は儲からないからつくらないし、つくれない。ビジネスの原理だけにまかせていいのかという本質的な課題がある。日本だけでなく世界がこの問題に直面している」と語った。