【キャンパスライフ】被災地の様子を伝え続けたい‐ボランティアサークル「IVOLEA(アイボリー)」 東京薬科大学3年 金子真之亮さん

2017年1月1日 (日)

薬学生新聞

ボランティア活動に全力投球

金子真之亮さん

 東京薬科大学の3年生、金子真之亮さんはボランティアサークル「IVOLEA(アイボリー)」の取りまとめ役として、東日本大震災の被災地復興支援や大学周辺の知的障害者施設、保育園の訪問、清掃活動などに精力的に取り組む薬剤師の卵だ。震災から約6年の歳月が経過し、被災地にボランティアとして足を運ぶ人が減る中、金子さんは「生の目で見た現地の様子を伝え続けていきたい」との思いから、長期休暇を利用して宮城県や岩手県などの被災地で津波を防ぐ松林の保護活動を行ったり、薬剤師から被災当時の話を聞くなど、現地に寄り添う形で復興のサポートに力を注ぎ続けている。

 昨年は、震災の発生日である3月11日を含めた3泊4日で、宮城県石巻市でボランティア活動を実施した。地元の人に被災前後の変化を聞きながら震災の遺構をめぐったり、津波の被害を受けた大川小学校の視察では、子供を亡くした人の講演を聴き、改めて震災の怖さを肌身で感じた。また、夏休みに訪問した岩手県の陸前高田市では、竹を加工して海岸の松林の苗を保護する柵を製作するなど、地元の人と一緒に汗を流しながら、復興活動に取り組んだ。

 それ以前にも、薬剤師の視点から見た被災地を知るため、釜石市の薬剤師に災害医療に関する講演をしてもらった。震災発生後、仮設の薬局を始めるまでに10日かかったことや、開設までは医師や看護師と協力して在宅訪問を行ったこと、処方の際には普段から服用している薬の名前を知らない人が多く、お薬手帳が役立ったことなどを知った。

 防波堤の建設や住宅地のかさ上げが進む一方で、復興の遅れも実感したという金子さんだが、現地で接した人の多くが被災した事実に正面から向き合っていることも感じた。ボランティア活動中に感謝の言葉を贈ってくれる人もいれば、被災時を思い出して涙ぐむ人がいたことなどが強く記憶に残っている。被災地の現状を自分の目で確かめることで、「何が足りていて、何が足りていないかを知ることができた」と金子さん。アイボリーに入るまでは被災地の手助けをしたいと思いつつも、行動に移す勇気がなかった。しかし、ボランティア活動を通じて「観光としても来てほしい」という現地の声を聞き、今では「必要とされなくなっても、足を運び続けたい」と力強い決意を抱いている。震災の発生から6年が経過し、当時の記憶の風化が進んでいることを実感しているが、大学の学園祭で活動を報告することで、1人でも多くの人に被災地の「今」を伝えたいという。

 金子さんは、復興支援以外にも、大学周辺の知的障害者施設や保育園を訪問し、子供たちと障害物競走や手品、かるたで遊ぶなど、地元の住民と触れ合う機会を大切にしている。さらに、町田市と八王子市が合同で開催した防災イベントにも参加。空き缶や牛乳パックでご飯を炊いたり、パラボラアンテナで集めた太陽光を利用してホットケーキを調理したほか、災害に備えた活動をしている大学から防災活動に関するアドバイスをもらった。近隣の大学と協力して地域の祭りに餃子店を設け、売上をネパール地震への義援金に充てたり、江ノ島の海岸で清掃活動を行ったりもした。

震災契機にサークル立ち上げ‐熱心な活動、日野市から表彰も

 アイボリーは、東京薬科大の学生だった浅見友一さんが東日本大震災で被災した地域の復興活動のため現地に赴き、「大人数で長期的な支援が必要」と感じたことをきっかけに、2012年に立ち上げた新しいサークル。「ボランティアには『愛』が必要」というコンセプトのもと、「AI」と「LOVE」を掛け合わせた名前となっている。

 薬学部と生命科学部の1~6年生、計130人ほどのメンバーが活動しており、2年生が代表を務めているが、講義や実験などで本格的に忙しくなる4~6年生に代わり、3年生の金子さんが全体を取りまとめている。被災地のボランティアセンターからの依頼のほか、メンバーの企画によって活動内容を決めている。平日は講義や実験で大人数のメンバーで集まることが難しいため、長期休暇を利用して被災地の支援を行っている。月に1度の土・日曜日には、近隣の知的障害者施設や保育園を訪問している。「上下関係は緩い」としつつも、活動にはメンバーが一体となって取り組むなど結束力は強い。その熱心な活動が認められ、昨年3月には日野市の社会福祉協議会から表彰された。

 中学卒業時に東日本大震災の報道に接したことから、「被災地でボランティア活動に携わりたい」との思いを強くしていた金子さん。大学に入学後、その願いを実行に移すためアイボリーに入会した。

 群馬県の実家が薬局を経営しており、幼い頃から薬剤師の仕事に興味を持っていたという金子さんだが、現在のところ家業を継ぐ考えはなく、地元の病院で薬剤師として在宅医療に関わりたいという夢を持つ。

 水曜日の午後や休日には塾講師のアルバイトにも励むなど、忙しい日々を送る中でも、バスケットボールや睡眠でリフレッシュを欠かさない。

 薬剤師の夢を追いつつ、ボランティア活動にも全力で取り組む金子さん。春休みに再び石巻市を訪問する予定だが、費用や時間の問題から、熊本地震の被災地への支援活動に参加できなかったこともあり、機会があれば熊本にも行きたいと考えている。「薬剤師になっても、OBとしてできる限りサポートしていきたいですね」と金子さん。その顔には、アイボリーへの熱い思いが満ちていた。



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