薬剤師職能の「見える化」目指して
「常に、患者さんに寄り添える薬剤師を目指しています」。阪神調剤薬局の福ふく調剤薬局石川橋店(名古屋市昭和区)に勤務する下村真由さんは、そんな思いを胸に日々の薬局、薬剤師業務に取り組んでいる。2015年3月に名城大学薬学部を卒業。同年4月から阪神調剤薬局に入社後、下村さんの出身地である名古屋市内の薬局で勤務し、まもなく2年が経過しようとしている。
現在、勤務する石川橋店は、名古屋市立大学病院の東側にある閑静な住宅街の中に立地。待合室は5坪ほどの小さな薬局ではあるが、処方箋調剤をメインに医療衛生雑貨などの販売も行っている。処方箋は、門前の内科、一般美容皮膚科の2軒のクリニックをメインに名市大病院も含めて幅広い医療機関から応需するなど、近隣生活者の「かかりつけ薬局」の機能も果たしている。
下村さんの1日は、午前9時前に出勤し、薬局内の掃除や分包機の立ち上げなどの開店準備から始まる。午前9時から薬局のオープン直後から患者が来局。午前10時から近隣クリニックの診察が始まると、ほぼ午後1時頃まで、処方箋調剤などの対応に追われる。その合間を縫って、午後の納品に間に合うよう医薬品の発注作業も行う。その後、昼食休憩に入り、午後は午前の薬歴記載のほか、午後診療の始まる4時頃までは面での処方箋対応をしながら、医薬品の在庫管理も行う。午後の診療時間の対応を終了して帰宅の途につくのは午後7~8時頃になるという。
石川橋店では、1日あたり平均50~60枚の処方箋調剤に対応しているが、入社直後に勤務した薬局は大学病院の門前薬局だったため、抗がん剤や麻薬の取り扱いも頻繁に行われていた。「薬剤師としての基本的な業務内容は店舗で大きく変わることはありませんが、店舗の立地によって患者さんの雰囲気や調剤する医薬品の種類も若干違いを感じています」と下村さん。石川橋店の来局者は比較的、慢性疾患の高齢者が多く、近隣クリニックからは皮膚科、婦人科、小児科の処方箋も応需する。
阪神調剤薬局では、「薬局業はサービス業」と考え、信頼される薬局となるために、きめ細やかな対応を大切にしている。その1つが、『ひざまずき投薬』だ。「カウンター越しに患者さんを呼ぶのではなく。薬剤師が患者さんのところまで行ってひざまずいて投薬するという丁寧な対応をしています」。下村さんにとっては、阪神調剤薬局への入社のきっかけにもなった取り組みだという。その対応の成果として「患者さんから『あの子いますか?』と名前を覚えていただいていたときは、薬剤師をやっていてよかったと感じる瞬間です」と笑みを浮かべる。
薬局の薬剤師は、患者が最後に会う医療従事者とも言われるが、下村さんが対応する患者の中には、主治医に言えなかった内容について相談を受けることもよくあるという。「処方された薬が、ほとんど服用できず残薬が発生しているケースもあります。薬剤の種類が多く、何をいつ、どれだけ飲むのか分からないといった場合には、処方元のドクターに連絡をして、一包化の提案を行ったりすることで解決できることもあります」と下村さん。患者と医師との橋渡し役も薬剤師の重要な仕事と認識している。
そんな下村さんが目指しているのは薬剤師の「見える化」だという。「同じ医療従事者である医師や看護師はドラマの主人公としても取り上げられており、その職能は一般にも知られていますが、薬剤師の仕事は意外と知られていません。たまに『薬を出すだけなのに、どうして時間がかかるのか』という言われ方もします。処方箋調剤から投薬までも、患者さんから見て理解してもらえるよう職能のアピールをしていきたい。もっと1人ひとりの患者さんに関わっていきたいです」と展望する。
就職先選択の目安としたのが、プライベートと仕事のオンオフを切り替えができるよう、完全週休2日制の企業。現在、一般職エリアコースを選択し、勤務地は自宅から90分以内で通勤できる範囲の薬局に限定されている。
名古屋で生まれ育った下村さんは、名古屋を離れることなく薬剤師として働ける環境下で、さらなる高みを目指していく考えだ。