就職戦線に異状あり?なし?‐各業界の動向を知ろう!~保険薬局の動向~

2017年3月1日 (水)

薬学生新聞

制度改正が業界再編の引き金に

 保険薬局業界は、2016年度調剤報酬改定で導入された「かかりつけ薬剤師」制度、健康サポート薬局制度の届け出スタートという大きな制度改正を受けた動きが注目されている。特に調剤報酬改定や薬価引き下げなどの影響は、主な調剤チェーン各社の中間業績にも表れており、多くの企業はM&Aを含めた新規出店効果で売上増を確保しつつも、利益面では厳しい状況に直面している。そのため、調剤チェーンなどによるM&Aが活発化してきており、今後もこうした再編含みの流れは加速しそうで、就職先選びの参考としたい。

 16年度改定では、「かかりつけ機能を手厚く評価し、門前薬局の評価は適正化する」との方針のもと、服薬状況の一元管理などを行う薬剤師を評価する「かかりつけ薬剤師指導料」(70点)が新設される一方で、いわゆる大型門前薬局を想定した調剤基本料が創設された。これらの影響は調剤チェーン各社を中心に薬局を直撃し、直近の17年2~4月期決算の主な調剤チェーンの中間業績にも色濃く表れた。

 多くの企業が、M&Aを含む新規出店効果等で売上高については何とか増収を確保したものの、薬価改定と調剤報酬改定の影響を受け、利益面は軒並み減益となっている。

 また最近では、M&Aによる再編が活発な業界として調剤薬局が挙げられていることも注目だ。日本M&Aセンターによると、数年前から買収の成約件数が目立って増加傾向にあり、独自調査によると約4割の調剤薬局が「M&Aによる譲渡の打診を受けたことがある」と回答したとされ、M&Aが活発化していることがうかがえる。

 今後、次期調剤報酬改定、かかりつけ薬剤師制度のさらなる推進により、単独の薬局では医療環境の変化に対する要求のレベルを満たすことが難しくなることも想定され、同センターでは「よりM&Aが加速するのではないか」との見通しを示す。

 一方、調剤チェーンの中には、将来を見越した先進的な取り組みを始めている企業も出てきている。アイングループのアインメディオは、藤田保健衛生大学病院と連携し、薬局で癌専門薬剤師を養成する取り組みをスタートさせる。両者の提携のもと、アインメディオの薬剤師が藤田保健衛生大学病院に通って研修を行い、日本医療薬学会認定の“癌専門薬剤師”の取得を目指すというものだ。今回の取り組みが全国の薬局薬剤師に大きな励みとなることが期待されている。また、大手チェーンの日本調剤は、日本薬学会の第三者確認委員会から、健康サポート薬局研修実施機関に認定された。健康サポート薬局は、患者が服用している医薬品などを一元的に管理し、指導する「かかりつけ薬剤師・薬局」としての基本的な機能を備えた上で、地域住民による主体的な健康の維持・増進を積極的に支援できる薬局。薬局を地域の健康相談窓口に位置づけることで、地域住民の疾病予防につなげたり、これまで以上にセルフメディケーションの浸透を図り、医療費の削減につなげることが狙いだ。

 現在まで、届け出数は全国的に見ても多くはないが、着実に数を増やしている状況。こうした中、今回の認定は調剤チェーンでは初となる認定。日本調剤では「今後は全都道府県で展開する当社の事業ネットワークを生かし、地域の研修希望の薬剤師も含めた全国レベルでの研修を開催していく」としている。

 このように、調剤チェーン各社を中心にM&Aや健康サポート薬局への展開など、保険薬局のあり方も小規模からチェーン、さらに機能も多様化へと進んできている。



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