【薬局・ドラッグストアの薬剤師の未来予想図】第4回 医療費抑制と薬局・薬剤師 その2

2013年11月1日 (金)

薬学生新聞


サンキュードラッグ代表取締役社長
平野 健二

平野健二氏

 第2回目で、「高齢化等によって医療必要件数が増加する一方、財源には限りがありますので、医療費総額は相対的に抑制されます。医療費総額=医療必要件数×単価ですから、この公式を成立させるためには、単価が下がるしかありません」と書きました。医療費は社会保障費の一部として、年金や介護保険と共に税金の投入を受けています。国の財源が枯渇すると、これらすべてに抑制がかかります。また、医療費の中にも医科、歯科、調剤などの分野で、中央社会保険医療協議会(中医協)の場で財源の取り合いが演じられています。どの分野を抑制するかは国民や時の政府が決めることで、非常に政治色の濃いものですが、少なくとも長期的に税金投入が増える分野はなさそうで、削られる割合の大小といった議論になりそうです。

調剤報酬の引き下げ

 [1]技術料

 調剤収入の約30%を占める技術料には、調剤基本料のように調剤行為に付随し薬局・薬剤師の基本的な収入を担保する性質のものと、「○○加算」のように、ある一定の技術やサービスに対する報酬的要素の強いものがあります。

 特に後者は、薬局・薬剤師に担ってほしい仕事を普及させるための経済誘導で使われることが多いのが特徴です。

 また、調剤において1人1日処方箋40枚ということが薬事法で規定されているのはご存知だと思います。大変能力の高い方がいて、60枚できるから基準を60枚に変えろと主張したら何が起こるかお分かりですか?

 一般的な自由経済社会では、こういう人には1.5倍の収入が与えられることになります。ところが公的保険の世界は違うのです。調剤業務を担う薬剤師にいくらの収入を与えるべきかという「上限」がまず決まります。その収入を1日40枚で得られるようにコストを考えた上で割り算をすることで基本料は決まるのです。したがって1日60枚に変えると、基本料は2/3に下がってしまうかもしれないのです。

 「だったら楽な方がいい」と考える薬剤師には、きっと将来はないと思います。むしろ、ロボットやテクニシャン(調剤助手)を積極的に導入して、処方箋1枚あたりのコストを下げ、社会に貢献することを考えるべきです。棚から薬を出してくるという作業は、ある意味ロボットの方がよほど正確・迅速にできるでしょう。薬剤監査は当然薬剤師が行うことを前提に、テクニシャンに集薬してもらうのも同じことです。

 それによって基本料が下がると考えるのではなく、処方箋1枚あたり10円のコストが節約できたら7円は社会に還元し、3円はご褒美にいただくような提案をすべきです。求人が減ると考えるのではなく、薬剤師にしかできない領域の仕事に踏み込むことで、むしろ待遇改善を図ることを考えないと、今後の地位向上はあり得ません。

 [2]薬剤料

 医療用医薬品の大半は、1つひとつの薬に「薬価=公定価格」が付けられています。最初に発売された時の価格は、その薬剤の価値によって値付けされますが、保険制度においては薬剤師の報酬は技術料でまかない、薬剤は医療提供に必要なものとしての対価のみを支払うという考え方があります。したがって、実際の取引価格が薬価を大きく下回る(薬価差益)ことがあれば、薬価を下げることで調整されます。

 2年ごとに薬価調査が行われ、それに伴って薬価改定が行われています。薬価が下がることで長期的には薬価差益は減少していきますので、これに過度に依存した経営は長期的に危険です。規模の大きい薬局チェーンが仕入れで有利という状況も、徐々に縮小すると考えておくべきです。

 経済的視点で薬剤料を考えてみますと、医療保険の発想とは随分違う考え方を、下記の計算式に見ることができます。

薬剤料=(メーカーの開発コスト+利益)+(卸の営業・物流コスト+利益)+(薬局の管理コスト〈廃棄等のロス〉)

 あえて薬価差益を外した計算式にしていますが、医薬品には、実は「モノ」としての要素があり、それを作ったり移動させたりする以上、そこには利益やコストが必ず発生するということが分かります。同時に、コストには無駄なものが絶えず含まれています。そしてその無駄も、薬剤料という保険償還の対象(医療費)になっているのです。

 具体的な例を挙げます。多くの薬局では医薬品発注は毎日(1日に数回)行われているのが実態です。「命に関わるから」という理由を背景に、医薬品卸はそれを断れず1日3回といった頻回配送を行い、それをサービスと誤解している卸すらあります。

 でも考えてみてください。なぜ、毎日発注をしなくてはならないのでしょうか。多くの薬局は「在庫を増やしたくないから」「面処方箋に対応できる備蓄がないから」と答えます。筆者の会社では発注は週1回で、99%の仕入れに対応しています。

 一般的に「なくなったら発注する」ことが在庫コントロールだとする誤解があるのです。在庫増加を防ぐ効果がありそうに思えますが、「次の発注までに何錠必要か」という発想が抜け落ちていますので、早期に次回の発注が発生したり、実は不要な在庫を抱えることにもなります。

 週単位、月単位の使用量を把握し、特定薬剤を大量に処方する患者の次回来局日をきちんと管理すれば、発注回数を減らしつつ、在庫コントロールを行うことができます。発注から納品の回数が減れば、薬剤師の業務量が減ります。毎日棚を見る必要もありません。検品や棚入れの作業も減ります。

 卸も、配送回数というコストが目に見えて減ります。下がったコストに見合う値引きをしてもらうことは、極めて正当な要求ですし、長期的には医療費の抑制になります。

 返品率、急配率、オンライン発注率、支払いサイト、1回あたりの配送金額等、業界全体のコスト引き下げに資する方法はいくらでもあります。今後医療に投入できる資源(お金)がますます制約されていく時、技術料を引き下げてほしくなければ、まず最初に、こうした無駄の削減に貢献することはとても大切です。薬剤師が広く「医療」を考えていく上で大切な要素になってくるのです。



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