【学会ハイライト】第23回日本医療薬学会年会

2013年11月1日 (金)

薬学生新聞


臨床推論の活用に焦点

 9月21、22日の2日間、仙台市で開かれた第23回日本医療薬学会年会のシンポジウム「これからの病棟薬剤師業務~患者のために、臨床推論でできること~」で、主に医師が診断に活用する“臨床推論”という思考プロセスを、薬剤師がどのように業務に取り入れていくかが焦点になった。臨床推論への薬剤師の注目度は高く、立ち見が出るほど盛況だった。


川口崇氏

川口崇氏

 川口崇氏(東京薬科大学医療実務薬学教室)は臨床推論について「患者管理に必要な意思決定のための思考プロセス」と説明した。

 臨床推論は、主訴や自覚症状、フィジカルアセスメント、検査所見などから病気を診断するスキルとして医師が活用している。さらに、医療スタッフが医師に相談するかどうかを意思決定することも含んでいる。そのスキルを薬剤師が習得すれば、患者から何を聞くことが重要なのか、意図的に話を聞けるようになる。それが共通言語になって、医師や多職種とのコミュニケーションが円滑になるという。

 海外でも「看護師が臨床推論を駆使して診療の質を向上させられると報告されているが、病院薬剤師の実践例もある。世界的にもこれからの領域。日本の薬剤師が臨床推論を実践していくのは、必ずしも遅いことではない」とした。

 医師の岸田直樹氏(手稲渓仁会病院総合内科・感染症科)も「診断のためだけにあるものではない。なぜ医師がそのように診断したのか、薬は効いているのか、患者の容態は良くなっているのかなどを判断するのに活用できる。前向きにチームで議論するための最低限のツール」と語った。

 その上で岸田氏は「臨床推論を駆使し、チーム医療の一員として前向きに発言できる薬剤師が日本でも必要不可欠。きちんと体系的に学ぶ場が必要」と指摘した。

東加奈子氏

東加奈子氏

 東加奈子氏(東京医科大学病院薬剤部)は、臨床推論を活用し、患者の症状に適切に対処した事例を提示。

 事例は、吐き気、食欲不振、ふらつきを訴え、経口抗癌剤「TS-1」の副作用を疑って入院した71歳男性、胃癌患者。持参薬確認のため東氏はベッドサイドに出向き、TS-1の副作用かどうかを評価するため、症状の発現状況を具体的に聴取した。

 さらに他の症状をチェックする過程で患者の手に触れると、冷感があり湿っていた。様々な要因が頭に思い浮かんだが、持参薬に注目。約1週間前にぎっくり腰になった患者は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を多用していた。NSAIDs潰瘍による循環血液量減少性ショックを疑った東氏は看護師に連絡。血圧を測定すると、脈拍数が収縮期血圧を上回っていた。すぐに手術中の主治医に連絡。出血性胃潰瘍との診断が下され、迅速に対処できたという。

 「自分の考えを医師や看護師に素早く適切に伝え、行動に移すことができた。臨床推論のスキルを使って患者のアウトカムを良い方向に変えることができた」と東氏は振り返った。



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