ニュースダイジェスト

2018年5月1日 (火)

薬学生新聞

第103回薬剤師国家試験行われる‐合格率は70.58%、昨年比105人増

 第103回薬剤師国家試験の結果が発表された。受験者数1万3579人のうち合格者は9584人で、合格率は70.58%だった。合格率は前回より1ポイント下がったものの、合格者数は105人多くなった。合格者の基準を得点率65%以上の絶対基準から、平均点と標準偏差を用いて試験ごとに合格基準を決める「相対基準」に変更してから3年目を迎え、合格率が大きく変動しなくなったこともあり、安定期に入ったと見られる。

 6年制新卒者の合格者は7304人で合格率は84.87%、6年制既卒者は2151人で47.00%だった。新卒者は前回の85.06%から0.19ポイント減で、既卒者は前回の50.83%から3.83ポイントの減となった。

 合格率を男女別に見ると、男性が68.04%で、女性が72.30%だった。大学の設置主体別の合格者数は、国立が543人(合格率83.67%)で、うち6年制新卒が442人(92.47%)、6年制既卒が30人(57.69%)、その他(旧4年制卒、受験資格認定者)が71人(59.66%)だった。

 公立は254人(86.10%)で、うち6年制新卒217人(95.18%)、6年制既卒12人(38.71%)、その他が25人(69.44%)となった。私立は8787人(69.55%)で、6年制新卒6645人(84.11%)、6年制既卒2109人(46.93%)、その他33人(13.75%)だった。

 大学別に合格率を見ると、90%を超えたのは5校、50%を下回ったのは7校だった。合格率がもっとも高かったのは金沢大学の97.50%で、広島大学92.86%、いわき明星大学92.31%、九州大学90.48%、武蔵野大学90.45%と続いた。

 また、今回の国試は1万4876人の出願者数に対し、受験者数は1万3579人で、1297人が受験しなかったことになる。出願者数に占める受験者数の割合は91.2%で、6年制新卒者について見ると、出願者数が9555人、受験者数は8606人で受験率は90%と低くなった。

 6年制新卒の受験率を設置主体別で見ると、国立大学が487人の出願者数に対し、受験者数は478人で98.1%、公立大学は同様に229人、228人の99.5%と高かった。一方、私立大学では、出願者数8839人に対し、受験者数が7900人で89.3%と低く、大学側が出願しても合格が見込めない学生を受験させない合格率操作を行った可能性もある。

道のり険しいスイッチOTC‐PPI3成分認められず再審議

 セルフメディケーションを実践するために薬局薬剤師の大きな武器になるスイッチOTC薬。医療用からの積極的な転用が期待される中、またスイッチ化の道のりを険しくする結論が下された。厚生労働省の検討会議が3月、スイッチOTC薬候補の5成分を評価した結果、何とかH1ブロッカー点眼薬の「レボカバスチン塩酸塩」については、目のかゆみに限ってOTC化を妥当と判断したものの、尋常性乾癬治療薬の「カルシポトリオール」は不可とし、「オメプラゾール」などプロトンポンプ阻害剤(PPI)3成分は「OTC化するには強力すぎる」「欧米では特に大きな問題は起きていない」と意見が分かれ、次回会議で再び審議することになった。

 検討会議では、PPIの3成分について日本消化器病学会が見解を表明し、「14日以内の短期使用であればOTC化は妥当」と条件付きで賛成意見を示したが、日本臨床内科医会は急性腎障害などの有害事象が報告されていることから、安全性が担保されない限り「不可」との見解を示した。日本医師会の委員からも「生体バリアを破壊してしまうなどOTC化するにはあまりにも強力だ。薬剤師の管理が十分でないなどの実態もある」と否定的な意見を述べた。

 専門学会が一部条件付きで賛成したにもかかわらず、消化器疾患の患者が多い実地臨床の開業医からはなかなか理解が得られない実情が交錯したのに対し、薬剤師を代表して日本薬剤師会の委員は「薬剤師がきちんと管理できると確信している。欧米ではOTC化後、特に大きな問題は起きていない」と反論したが、どれほど理解が得られるかは不透明だ。次回会議で再び審議した上で結論を出すこととなった。

 また、カルシポトリオールは、日本皮膚科学会などが高カルシウム血症の副作用リスクを考慮すると医師の管理が必要などの見解を示していることから、OTC化が「不可」となったほか、前回の会議で議論を行った8成分について再び審議したものの、眼の殺菌・消毒・洗浄の「ヨウ素・ポリビニルアルコール」のみOTC化を「可」とし、その他の成分を「不可」とする判断は変わらず、スイッチ化の動きは依然として険しい。

遠隔服薬指導の解禁が議論に‐迎えた「オンライン診療元年」

 パソコンやスマートフォンを使いインターネットを介したオンライン診療が4月から本格化した。2018年度の診療報酬改定では、対面診療とICTを組み合わせた診療に算定される「オンライン診療料」(70点)が新設されると共に、対面とICTによる生活指導を評価する「オンライン医学管理料」(100点)も新設され、まさにオンライン診療元年とも言える大きな動きとなった。厚生労働省は2月からオンライン診療に関するガイドライン作成に着手。3月にガイドラインをまとめ、指針に則ったオンライン診療が日本でも本格的に実施できる体制が整った。同時に、遠隔服薬指導の実施にも注目が集まり、規制改革推進会議の議論では、診療から服薬指導、医薬品の授受まで一気通貫のオンライン医療を求める声が相次いでいるのが現状である。厚労省は、国家戦略特区の実証実験結果を待ってからとの姿勢で、全て対面でなければならないわけではないと柔軟な対応を示唆しており、今後の焦点は遠隔服薬指導の是非に移行しそうだ。

 規制改革推進会議における議論の焦点は、医薬品医療機器法で対面の服薬指導を義務づけている中、診療から処方箋医薬品の授受までの「一気通貫のオンライン医療」を実施できるようにすること。3月の公開討論では推進論が大勢を占めたが、厚労省は「まず国家戦略特区で実証実験の結果を見てから」と慎重な姿勢を表明した。

 ただ、全て対面でなければ行けないという考え方ではないとの見解も示して今後の遠隔服薬指導の解禁に含みを持たせた。既にオンライン診療に関するガイドライン作りを議論してきた検討会でも、委員から遠隔服薬指導をめぐるガイドラインとの整合性が質されたところで、厚労省は「遠隔服薬指導についてはきちんと議論を進める。方向性が示された段階でガイドラインに盛り込んでいく」と説明。議論自体は否定していないことから、今後は遠隔服薬指導の特区における実証実験の動向も大きな焦点となる。

【厚労省】MRの不適切な販促にメス‐国がガイドライン策定へ

 製薬企業のMRによる医療用医薬品の不適切なプロモーション活動が相次いでいることから、国が初めて販売情報提供活動に関するガイドラインを作ることになった。具体的には、医師向けに説明する資材やMRの情報提供活動の適切性を確保するなど製薬企業の責務を定め、不適切な資料の使用禁止など情報提供活動に携わる社員の責務などを盛り込む予定となっている。ディオバン事件の反省を受け、製薬業界も自主規制を強めてきたが、なかなかMRによる不適切な販売活動に歯止めがかからないことから、ついに国が対策に乗り出した格好である。

 製薬企業による医療用医薬品の情報提供をめぐって、ディオバン事件やイグザレルト問題をはじめ、他社製品を誹謗して自社製品を優位に見せるなど、MRによる不適切なプロモーション活動が相次いでいる。ただ、業界団体の日本製薬工業協会が販売情報提供活動に関するガイドラインで自主規制を求めているものの、業界の遵守事項にとどまっており不適切な辞令が後を絶たない状況が改善されないことから、厚労省は何らかの対応が必要との問題意識を示していた。

 今回まとめるガイドラインは、▽基本的考え方▽医薬品製造販売業者の責務▽販売情報提供活動に携わる者の責務▽その他――で構成され、基本的考え方では、適用範囲、情報提供活動の原則を示している。

 製薬企業など医薬品製造販売業者の責務としては、経営者の責任、社内体制の整備、資材・情報提供活動の適切性の確保、記録の作成・管理、問題が生じた時の対応などを盛り込んでいる。MRなど販売情報提供活動に携わる者の責務については、ガイドラインの遵守、自己研鑽の努力、情報提供活動の際の留意点、不適切な資料の使用禁止などを記載している。

 厚労省は、海外のガイドラインを参考にした上で、これら項目をもとに具体的な内容をガイドラインとしてまとめる。


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