【これから『薬』の話をしよう】侮れないノセボ効果

2018年11月1日 (木)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 前回お話したプラセボ効果に関連して、疼痛に関する興味深い研究(PMID:15102230)をご紹介しましょう。この研究は、慢性腰痛を訴えている50人を対象に、エクササイズ器具を用いて足の屈曲運動をしてもらう、というものです。被験者に対して「この運動で痛みが増加することはない」と説明した群と「この運動で、わずかに痛みが増加することもある」と説明した群に分け研究が開始されました。

 その結果、「痛みが増加することはない」と説明された群では疼痛が減り、「わずかに痛みが増える」と説明された群では痛みが増加することが示されたのです。この研究結果は、薬剤師にとっても重要な意味を持ちます。薬の副作用について、その説明の仕方一つで、薬理作用とは無関係に、患者さんに有害な影響を引き起こしてしまうことが示唆されるからです。

 プラセボがもたらす有益な治療効果をプラセボ効果と呼びますが、逆に治療効果に悪い影響を与えるものを“ノセボ効果”と呼びます。簡単に言えば、患者さんの思い込みから、本当に副作用が出てしまう現象のことですが、例えばスタチン系薬剤に関連する筋肉痛などの有害事象は、その多くがノセボ効果によるものではないかと言われています(PMID:28476288)

 また、抗うつ薬に関する143件の臨床試験データを用いて、三環系抗うつ薬プラセボと、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)プラセボの有害事象を比較した研究(PMID:19810776)が報告されています。三環系抗うつ薬は、SSRIに比べて抗コリン作用が強く、口渇や便秘など有害事象リスクが高いと考えられますが、この研究でも、SSRIプラセボと比べて、三環系抗うつ薬プラセボで、口渇が3.5倍、傾眠が2.7倍、便秘が2.7倍多いという結果でした。同じプラセボにもかかわらず有害事象のリスクに差が出るのは、少なからずノセボ効果が影響しているといえるでしょう。

 前回もお話したように、薬の効果(Effectiveness)は、その有効性にしろ、安全性にしろ、薬剤の厳密な効能(Efficacy)だけがもたらしているわけではありません。プラセボ効果やノセボ効果の存在は、薬剤効果に関して、医療者による情報提供のあり方を見つめ直す、良いきっかけになるはずです。



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