【対談 CRO社員×薬学生】医薬品開発、最前線で支える

2019年7月1日 (月)

薬学生新聞

イーピーエス
田野邊 竜平さん
インテリム
村上 麻衣さん
シミック
遠藤 優さん

左から田野邊さん、遠藤さん、村上さん

左から田野邊さん、遠藤さん、村上さん

 突然ですが、皆さんは“CRO”と聞いてどのようなことを思い浮かべますか。聞いたことはあるけど、どのようなことをしているかはよく知らない、そんな人も少なくないのではないでしょうか。今回はCROの臨床開発モニターとして活躍している、イーピーエスの田野邊竜平さん、インテリムの村上麻衣さん、シミックの遠藤優さんにお話をうかがいました。(日本薬学生連盟2019年度広報統括理事明治薬科大学2年・小倉由未佳 東邦大学6年・吉田栄子

モニタリングやデータ解析担う‐幅広いキャリアの選択肢

 ――CROではどのような業務を行っているのでしょうか。

 村上 医薬品等の開発を製薬企業から受託しています。大きな業務としてはモニタリングですが、データの解析などもしています。

 田野邊 従来、製薬企業だけで完結していた業務の中で、治験~製造販売後調査に至るまで、開発に関する業務を外部に委託するという形で生まれたのがCROです。そのため、モニタリングだけではなく、開発にかかわる周辺業務も担っています。

 遠藤 モニタリングでは、製薬企業が作った治験実施計画(プロトコール)通りに治験ができているかを確認します。まだ承認されていない薬が投与されるので、患者さんに不利益が出ないよう、安全に患者さんに投薬できることをモニタリングしています。患者さんを一番に考えながら仕事をしています。

 ――今後、CROでやり遂げたいことや将来のキャリアプランなどを教えてください。

 村上 私はモニターとして仕事をしていますが、もう少し経験を積んでから、モニターの取りまとめ役を経験してみたいなと思います。また、専門的なモニターを育てる仕事にも携わってみたいと思います。後輩に、自分が経験したことを伝えていけたらなと思います。

 田野邊 私は3年目のモニターなのですが、まだ経験を積んでいて、様々なことに興味をもっている状態ですね。リーダーにも興味がありますし、課長のような管理職になって、一つのチームにとどまらず、様々な方のマネジメントをして、皆さんが働きやすいような環境を整えるというのもやってみたいなと思います。

 ――CROでは、モニターとして入社した後も、様々な選択肢があるということですか。

 村上 そうですね。モニター業務だけでなく、データ管理の部門や安全性情報の管理の部門もあるので、モニターからデータ管理に異動して、新たなキャリアを積むという道もあります。

 遠藤 会社によると思うのですが、ほかの業種よりも仕事の選択肢は多いと聞きますね。キャリアプランに関しては、現段階ではリーダー職というよりも、モニター職をずっとやりたいと思っています。病院に行き、先生から病気や治療のお話を聞くのが今は楽しいと思っています。ライフプランと並行して、キャリアプランも変わるかもしれませんが。

 ――女性が働きやすい環境に向けた取り組みが進んでいます。CROは働きやすそうだなと思うのですが、実際はどうでしょうか。

 遠藤 先輩社員を見ていても働きやすいんだなと思いますね。2、3年目でも女性だからとか男性だからとかと思うことはないですね。

 田野邊 制度もすごく整っていますよね。

 遠藤 そうですね。

 田野邊 イーピーエスでは、産休明けの方は時短勤務の制度を実際に多くの方が利用していますし、フレックスタイム制度も導入されています。また、在宅勤務制度も一般的でどのような職種でも日常的に活用されています。パソコンでほとんどの業務が完結できるので、週に1回など会社が認める頻度において自宅で業務を行うことができます。

言葉の重みを常に意識

 ――どういった部分が大変だなと感じますか。

 田野邊 モニター業務の中でも人によって大変だと思う部分が違うかもしれません。私の場合は細かい作業が苦手なんですよね。契約書に書いてある内容に間違いがないかしっかりチェックする際は、特に注意するよう心がけています。

 遠藤 担当プロジェクトでは今がちょうど繁忙期で、業務量が多く大変と感じることもあります。また、仕事の進み具合を見て、相手がどんな方かを考えながら業務をこなすことが大変です。ただそこが一番の成長のポイントかなって思います。

 田野邊 モニターが発する言葉の重みも、常に意識しなければなりません。病院の方が被験者さんの対応をする際には、モニターからの伝達通りに行うこともあるので、モニターの伝達に間違いがあると、いろんなところに派生して迷惑がかかってしまうと思います。

 村上 モニターのお仕事は製薬企業と医療機関の間で仲介をしながら仕事をしていくので、双方のやり取りっていうのが発生するのですが、調整がとても難しいなと思います。いろんな方がいらっしゃるので、どんな場でもコミュニケーションが難しいなって感じる時もあります。

 ――CROで働いている方は会社内でのコミュニケーションが多く、病院のスタッフの方たちと話す機会が少ないイメージを持っていましたが、働く上でコミュニケーション力が必要だと感じました。皆さんはもともと、人とお話しするのは得意でしたか。

 村上 得意かと言われるとちょっと難しいですけど、人と接することは好きです。コミュニケーションを取ろうとする人とそうでない人は、性格的なものに起因すると思うのですが、そういった方は、ちょっと語弊があると失礼ですけども、少し苦労されている方もいらっしゃるかなという印象はあります。

 田野邊 これも語弊があるかもしれませんが、おしゃべりな人だったらいいかと言われたらそうでもなくて。間違ったことを言ってはいけない状況で、自分の気分で思いつくまま話してしまうと、様々な方に迷惑が掛かってしまいますね。相手の状況をよく確かめて、相手が求める情報を正しくお話しするような丁寧なタイプだと、普段はおとなしいと思われるような方でも逆にモニターに向いているかもしれないですね。

コミュニケーション力と誠実さが求められる

 ――CROに就職するにはどのような準備をする必要があるのか、また、どのような学生がCROに向いているのかなどのお考えをお聞かせください。

 村上 コミュニケーションがきちんととれる後輩だと一緒に仕事していてやりやすいですし、スムーズに進むのではないかなと思います。コミュニケーションもそうですし、スケジュールを組み、期限内に仕事を終わらせることが必要なので優先順位をつけて、何から終わらせていくかという考え方を持って物事に取り組むことが大切なのではないでしょうか。

 遠藤 コミュニケーション力と誠実さを持った方が向いていると思います。臨床試験のデータを改ざんしてしまうのはあってはいけません。また、業務の中でミスをしてしまうこともあるので、心から謝ることができる人でなければなりません。誠実さが必要だなと思います。あとは、勉強熱心な後輩がいいなと。教えられたことだけじゃなくて、積極的に行動できる人がいいなと思いますし、自分にも必要だなと思います。

 田野邊 CROでは物事を進めていくうえで、様々なことを決めていかなければなりません。その際、相手の気持ちや立場、発言の背景を汲み取れる「洞察力」が必要だと思います。相手のことを考えて、妥協点を見つけられるとうまくいくことが多いので、そういったところを学生のうちから意識しておくとよいのではないでしょうか。

 ――最後に学生にメッセージをお願いします。

対談を終えて

対談を終えて

 村上 医薬品等を世の中に出すという社会貢献ができている実感はとてもあります。そこまでの道のりは長いのですが、自分が携わった試験の開発薬剤が無事承認され、患者さんが実際に使っていることを聞くと本当に頑張ってよかったなと感じます。そのような気持ちを感じられるというのは、CROの醍醐味であり、魅力だと思います。

 遠藤 世に出てない薬が患者さんに投与され、それが開発につながり承認まで携われるところが、素敵な点だと思います。

 田野邊 モニターの仕事は治験データの小さな積み重ねの繰り返しにはなりますが、開発薬剤が医薬品として世の中に出たときに、一番臨床現場に近いところで仕事をしていたのは自分なんだって感じます。「この薬本当に効くと思うから、期待してるよ」と言われるとやりがいを感じますね。世に出てない薬の有効性や安全性を間近に感じることができることは、モニターのやりがいだと思います。



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