【これから『薬』の話をしよう】外的妥当性を考慮せよ

2019年7月1日 (月)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 以前、効能(Efficacy)と効果(Effectiveness)の違いについてご紹介しました。一般的に、薬の効能はランダム化比較試験(RCT)によって評価されます。特に二重盲検法を用いたプラセボ対照RCTは、診療ガイドラインにおいても質の高いエビデンスとして取り扱われることが多く、推奨事項の根拠として優先的に引用されます。

 近年、新規血糖降下薬に関するRCTの結果が相次いで報告されています。その中でも、心血管疾患リスクの有意な低下が示されたSGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬に対する関心が高まっているようです。血糖降下作用のみならず、将来的な心血管疾患の予防効果が期待できるのであれば、数ある糖尿病治療薬の中でも、これらの薬剤を優先的に用いる強い根拠となるでしょう。しかし、RCTで示されている効果の大きさは、研究に参加した被験者に対する効果の大きさであって、広く一般化することが可能かどうかについては議論の余地があります。

 RCTでは、年齢や合併症の有無など研究の目的に合致した症例を組み入れ、安全性や倫理性の観点から、重篤な疾患を有している人などは除外されます。従って、RCTの被験者と一般人口の背景特性には少なからずギャップが生じます。

 実際、GLP-1受容体作動薬の主要なRCTにおいて、研究に組み入れられた被験者と、一般的な米国2型糖尿病成人では、その背景因子が大きく異なっていることが報告されています(PMID:30714309)。リラグルチドのRCTでは、一般的な2型糖尿病成人は被験者全体の12.9%にすぎず、心血管疾患ハイリスク者が多く組み入れられていました。

 心血管疾患ハイリスク者が研究対象となっている理由は、薬の効果を効率よく検出するためだと考えられます。リスクの低い集団では、リラグルチド群、プラセボ群ともに疾患の発症頻度が低く、薬の効果を検出するためには膨大な症例数と長期間の追跡が必要となってしまいます。このことはまた、一般人口を対象にした場合では、大規模な症例数を長期間追跡しなければ検出できないほど小さな効果とも言えます。

 研究の結果を一般化できる度合いを外的妥当性と呼びますが、RCTは必ずしも外的妥当性の高い研究ではありません。RCTで示された効果の大きさを目の前の患者にそのまま適用できるかどうかについて、丁寧に考察していく必要があります。



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