【これから『薬』の話をしよう】エビデンスがなければ効果がないのか?

2019年11月1日 (金)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 HPV(Human papillomavirus)ワクチンは子宮頸癌を予防するために開発されたワクチンです。女性がHPVに感染すると、数年から数十年という長い時間を経て、段階的に子宮頸癌を発症することが知られています。

 HPVワクチンが臨床で用いられるようになったのは2006年以降ですから(日本での定期接種化は13年4月。ただし積極的な接種勧奨は一時差し控え状態)、子宮頸癌やそれによる死亡リスクに関するデータは十分に集まっていません。とはいえ、前癌病変に対する同ワクチンの有効性は複数の研究で一貫して示されています(PMID:29740819,31255301)。ところが、子宮頸癌を減らせるとしたエビデンスがないことを根拠に、同ワクチンの効果が否定的に論じられることが多々あります。エビデンスがなければ有効性を論じることはできないのでしょうか?

 一般的に癌は様々な要因が複雑に影響し合って発症しますが、HPV感染と子宮頸癌発症の関連性は、喫煙と肺がんの関連性よりも強く、また子宮頸癌症例の99%以上がHPV感染者であることが分かっています(PMID:11314432)。つまり子宮頸癌は、ほぼ全例でHPV感染が原因であり、これは明確な因果関係といえるものです。したがって、ワクチンによりHPV感染を防ぐことができれば、子宮頸癌は予防できるのです。

 エビデンスが存在しない以上、この主張は確かに理論上の推測にすぎないのかもしれません。しかし、因果関係が明確な場合とそうでない場合では、推論の精度は大きく異なります。例えば、スカイダイビングをするために、4000m上空から飛び降りることになったとしましょう。無事に地面に着地するためにパラシュートを装着するはずです。しかし、パラシュートには死亡リスクを低下させたとするエビデンスは報告されていません(PMID:14684649)。それにもかかわらず、パラシュートを装着せずに飛び降りることはしないでしょう。高所から落下すれば死亡、ないし重度の外傷を負うことはエビデンスがなくとも明らかです。

 因果的つながりが明確かつ、明らかに大きな効果が期待される場合、検証実験をするまでもなく、その有効性を論じることは可能なのです。



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