【製薬11社】「ラニチジン」を自主回収‐海外での発癌性物質検出で
グラクソ・スミスクライン(GSK)、沢井製薬、東和薬品など製薬企業11社は、抗潰瘍薬「ラニチジン」(先発品名:ザンタック)の自主回収を開始した。
ラニチジンは、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などを適応症に持つH2受容体拮抗剤である。国内では、GSKが先発品の「ザンタック」を販売しているほか、複数の製薬企業が後発品のラニチジンを販売していた。
ラニチジンと同剤の原薬をめぐっては、海外で発癌性物質である微量のN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出され、欧米の規制当局が現在、安全性評価を実施している。国内でも厚生労働省が9月、ラニチジン、または同剤と類似の化学構造を持つ「ニザチジン」(先発品名:アシノン)を販売する製薬企業13社に対し、NDMA混入の有無を分析するよう事務連絡を発出しており、ラニチジンについては、分析結果が判明するまで製品出荷を行わないよう求めていた。
こうした中、GSKは、同剤を製造委託している海外工場から販売を中断するよう欧州医薬品品質部門から通告されたとの情報を入手したことから、予防的措置として9月に「クラス2」の自主回収を決め、10月に回収分類をクラス2からクラス1に引き上げ、患者に処方済みの製剤を含む全ロットの回収に踏み切った。
また、後発品を販売する日医工と沢井製薬、鶴原製薬、ニプロも、予防的措置から「クラス1」の自主回収に踏み切り、回収した製剤と原薬について混入があるかどうかを調べ、分析結果が判明後に出荷を再開するとしている。その他の企業も混入の調査を行い、マイラン製薬、陽進堂、小林化工、東和薬品、日本ジェネリック、武田テバファーマの6社が管理指数を超えたNDMAが検出されたと発表。医療機関からの自主回収に加え、先月16日から患者の手元にある製剤も自主回収している。
ラニチジンを販売する11社は、患者に対しては医療機関で代替薬に切り替えるよう呼びかけており、再診費用や通院に伴う交通費を含めた代替薬の費用については、製品を販売している各社が負担するという。
来年10月からロタワクチン定期接種化‐メーカー2社、価格低減応じる
乳幼児のロタウイルス感染による胃腸炎などの予防として投与するロタウイルスワクチンが、2020年10月から定期接種化される。国内ではグラクソ・スミスクライン(GSK)の「ロタリックス」とMSDの「ロタテック」が承認されており、公費負担となる定期接種化に向けた検討が12年から行われてきたが、有効性や安全性の面で問題がなく、費用面での課題についてもメーカー2社が一定の価格低減に応じることから、今年9月の厚生科学審議会予防接種基本方針部会で定期接種化が妥当と判断した。
ロタウイルスは乳幼児の急性重症胃腸炎の原因となるウイルスで、10~100個のウイルスが口から入ることで感染する。感染後2~4日間の潜伏期間を経て下痢や嘔吐を繰り返し、重度の脱水症状が数日間続く場合もある。
ノロウイルスと比べて約100万倍のウイルス量を含んでおり、毎年3~5月にかけて乳幼児を中心に胃腸炎が流行するが、その中にはロタウイルスによる胃腸炎が多数含まれている。国内患者数は年間80万人ほどと推定され、ロタウイルス性腸炎による死亡者が毎年2~18人報告されている。
今回、ロタウイルスワクチンの定期接種化に関して、B型肝炎や麻疹・風疹などと同様に、集団予防や重篤疾患の予防に重点を置き、接種勧奨があるA類に分類。接種対象者として、ロタリックスは生後6~24週、ロタテックは生後6~32週とし、標準接種期間は初回は生後2カ月~14週6日とする。
ただ、腸重積症の既往歴が明らかな人、先天性消化管障害を持つ人、重症複合型免疫不全症の人は対象外となるほか、長期にわたって療養が必要な疾病により、接種対象年齢の間に定期接種できなかった人が2年経過するまでに定期接種として接種できる「長期療養特例」も適用しない。
同部会は、他のワクチンとの接種間隔や、接種後に吐き出した場合に再接種を行わないかどうかなどの検討事項については、引き続き議論することとしている。
全世代型社保会議始まる‐「システムの改革不可欠」
政府は少子高齢化の進行やライフスタイルの多様化を踏まえ、「誰もが安心できる社会保障制度の構築」について検討を行う「全世代型社会保障検討会議」を立ち上げた。安倍晋三首相を議長に、関係大臣、民間企業や研究機関などから招集された有識者で構成。医療、介護、年金など社会保障関連の幅広い分野を検討することとしており、年内に中間報告し、来夏をメドに議論を取りまとめる。
9月の初会合では、給付と負担の現状、生産人口の見通し、就業率の推移など社会保障に関するデータが示され、今後の会議の進め方について意見交換した。
高齢化の進展などで、19年度の社会保障給付費は約124兆円に達し、団塊ジュニア世代が高齢期を迎える40年頃には約190兆円に達する見通しを示している。有識者からは「医療や介護のあるべき姿を示す中で、給付と負担のあり方を考えるべき」などの声が上がった。
安倍氏は「少子高齢化が急速に進む中、これまでの社会保障システムの改善にとどまることなく、システム自体の改革を進めることが不可欠だ。関係大臣の総力を挙げ、具体的検討を開始してほしい」と指示した。