【考えよう!キャリアデザイン】医療人として持つ死生観とは [1]

2020年1月1日 (水)

薬学生新聞

キャリア・ポジション社長
西鶴 智香

西鶴智香氏

 今回のタイトルにある「死生観」とは「死」と「生」についての考え方のことです。皆さんは死をどう捉えていますか?私が初めて死について真剣に考えたのはおそらく、小学5年生の時に祖父がガンを患い自宅で亡くなった時だと思います。「昨日まで生きていたじいちゃんが目を開けない、動かない、反応しない」ということに大きなショックを受けたことを記憶しています。

 大学生の時に祖母が亡くなった時には、人間の死というものをより現実的に捉えられました。私も、いつの日か死を迎える一人の人間であることを自覚し、死にしっかりと向き合えるようになりました。それ以降、哲学や宗教の本を読んだり、日常的に死に直面している医師や看護師の話を聞いたりしながら、「死生観」について自分なりに探っています。

 以前、ある薬学生からこんな相談を受けたことがあります。相談内容は「薬剤師になって在宅の仕事に取り組みたいが、いずれ患者さんの死に遭遇すると思う。それを受け止められるか不安を感じる。ペットが死んだ時でさえ一週間泣きっぱなしだったし…」というものでした。私も似た経験がありますので、その気持ちはとてもよく理解できます。

 おそらく他の医療者も皆、同じように悲しみ、落ち込んで、さらに医療者だからこそ「死に対する自分の無力さ」にも悩むのではないでしょうか。どんなに薬剤師として腕を磨いても、どうしても死に打ち勝てず、負けてしまうこともあります。

 ここで理解したいのは、人間は誰でもいつか死を迎えるのだ、ということです。死が来ない人間はいない。どんなにお金があっても、エリートでも、生まれたら誰でもいつかは死を迎えるのです。それを理解して、職業の限界を知っておくことも、医療人として働く基本ではないでしょうか。

 いつか自分にも死の時はやって来る。死とは何か、生とは何か。自分なりに考えを持つことを「死生観」といいます。いつか死ぬ、その時まで自分はどんな人生にしたいのか。「死」と「生」を考えることは「人生観」につながります。



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