【これから『薬』の話をしよう】論文の結論は鵜呑みにするなっ!

2020年3月1日 (日)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 ランダム化比較試験(RCT)において、薬の有効性や安全性を評価する指標を評価項目(アウトカム)と呼びます。糖尿病治療薬であれば、HbA1c値だけでなく心血管疾患の発症率や死亡率、あるいは副作用の発生率なども評価項目として用いられます。

 RCTでは、一般的に複数の評価項目を設定しますが、効果を検証するために設定される最も重要な評価項目を一次アウトカムと呼びます。実はRCTの評価項目の中でも、一次アウトカムの結果のみが妥当性の高い情報であり、それ以外の評価項目(二次アウトカムやサブグループ解析)の結果は、偶然的に示された可能性を否定することが難しく、妥当性の高い情報とは言えません。

 「P値は何を意味している?」の回でもお話をしましたが、統計的に有意な差が出るかどうかは、臨床的な効果の有無とは無関係に、研究参加者の人数に影響を受けます。そのためRCTでは研究に必要な症例数を、予測される一次アウトカムの発生率に基づき厳密に計算します。したがって、臨床的に意味のある差について検討された妥当性の高い評価項目は、一次アウトカムだけなのです。

 RCTを実施した結果、二次アウトカムには差が出たけれども、肝心の一次アウトカムに差が出なかったとしましょう。あなたが研究者なら、どのように論文を書きますか? 論文を執筆するに当たり、どの評価項目の結果を強調するかは、論文著者に委ねられていることに注意が必要です。

 研究結果から得られた情報を、適切に論文に反映せず、論文著者の都合の良いように解釈して記載することをスピンと呼びます。論文のスピンは決して稀なことではなく、例えば心血管疾患を評価項目としたRCT論文93報において、結論部分にスピンがあった論文は54%と報告されています(PMID:31050775)。質の高いエビデンスと言われるRCT論文においても、その結論を鵜呑みにしてしまっては、明確な差を認めないような曖昧な効果を、差があるかのように誤って解釈してしまうかもしれません。

 皮肉なことに、スピンを検討した研究論文でも、スピンが認められたとする研究(PMID:31852680)が報告されています。どのような医学論文においても、研究者の期待や考えに都合の良い表現が用いられている可能性について、意識的でいることが大切です。薬の効果をRCT論文で評価する際には、必ず一次アウトカムの結果を自分の目で確かめる必要があります。



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