【各業界の動向と展望をチェック!】医薬品の枠超えた事業展開も~製薬企業~

2022年3月1日 (火)

薬学生新聞


 製薬業界は、これまでの医療用医薬品という基幹事業の枠を超えたビジネスモデルへの転換が迫られている重要な局面にある。新型コロナウイルス感染症をはじめとした事業環境の劇的な変化も後押しし、デジタル化が大きく前進。日常業務のオンライン化や在宅勤務の浸透により、医薬品の開発、販売に関わる従来型の業務でもオンラインツールなどを活用した非接触型の取り組みが加速している。

 医療用医薬品に集中してきたビジネスモデルも「ヘルスケア」という広い枠組みで捉える企業が増えてきており、製薬企業が置かれた立場が大きく変わろうとしていることが実感できる時代となった。

 逆に、アプリやゲームを用いた生活習慣の改善や、VR(仮想現実)による精神疾患の治療支援など新たな領域に挑戦する企業が相次いでおり、医療用医薬品以外に様々なビジネスチャンスが眠っているとの捉え方もできる。

 かつてない大変革期の背景にあるのは、デジタル化という時代の潮流もあるが、もう一つは公定薬価を引き下げる薬価改定が診療報酬改定の行われる2年に1回ではなく、毎年実施されるようになったことが大きい。

 医薬品調査会社のIQVIAによると、2025年までの医薬品市場で、世界市場は年平均成長率3~6%で成長する一方、日本市場は薬価改定の影響によってマイナス2~1%と主要国で唯一のマイナス成長に沈むと予測されている。

 相次ぐ薬価引き下げ政策により、かつて海外で使える新薬が日本で使えない「ドラッグ・ラグ」が再び訪れつつあると警鐘が鳴らされている。

 こうした厳しい状況下にあって、日本の製薬業界も新たな産業像を模索し始めている。国内の研究開発型製薬企業73社が加盟する業界団体の日本製薬工業協会は今年、従来の革新的新薬を創出するという役割だけでなく、水平分業によってデジタル企業などと連携し、生活習慣改善アプリなどの予知・予防領域といった「トータルヘルスケアソリューション」を提供するビジネスモデルに転換していく産業像を示した。

 これまで製薬業界は、国の公定薬価という公的保険制度のもとでの活動が中心だったが、保険でカバーできない領域までビジネスの幅を広げていくという宣言だ。その一方で、切れ味の鋭い高額な医薬品が相次ぎ登場する中で、どこまで国民の保険料で負担すべきかという議論も進めるべきと提案している。

 まさに医療用医薬品ビジネスに逆風が吹く時代にあって、革新的な医薬品の果実はしっかりと公的保険でカバーし、それ以外の新たなヘルスケア領域のビジネスは保険外の収益源として展開していく。そんな将来に向けた姿が浮かび上がる。

 とはいえ、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を受け、驚異的なスピードで革新的なワクチンと治療薬が開発され、製薬産業の重要性が強く認識された。今後も医療用医薬品ビジネスが根幹であり続けることに変わりはないだろう。

 国内で活動する製薬企業の命運は、新薬を開発し続けるコストをどこまで賄えるかにかかっている。新薬のイノベーションにどこまで投資をしているか、デジタル化や新領域への展開、またその事業可能性など、就職に当たってチェックすべき点は多い。

 製薬企業の将来性を判断するのは難しい時代だが、自分のやりたいことと目指す会社のビジョンをしっかり研究しておくこと。それが納得いく就職活動のスタートラインになるはずだ。



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