新型コロナウイルス感染拡大の影響は未だに続き、多くの業界の業績に影響を与えた。ドラッグストア業界でもインバウンド需要がなくなり、テレワークの進展や外出自粛などの影響で特に都市型店舗の業績が大きな影響を受けた。一方、郊外型の生活圏域に立地する店舗の業績は堅調で、特にドラッグストアでは調剤併設型や食品強化型など、日常生活でのドラッグストア店舗の持つ利便性をあらためて認識した客層を獲得して業績を伸ばしている。個別企業に目を向けると、売上高が1兆円を超える企業の誕生がまもなく実現する見込みだ。
日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が昨春に発表した2020年度版実態調査の結果によると、ドラッグストアの総売上高は初めて8兆円を突破し、8兆0363億円に達した。ここ数年は5%前後の伸び率を維持し続けており、業界が目標に掲げる10兆円の目標到達は目前である。その先には“2040年20兆円市場”の構築といった目標も示しているが、その実現へ向けて着実に進んでいると言える。
そうした中、今後のドラッグストアの成長戦略としてJACDSが示しているのが、▽調剤の拡大▽OTC市場の拡大▽オンライン化への対応▽規制緩和問題への対応――という4点になる。
このうち、ドラッグストア調剤に関しては毎年10%程度の伸びをみせ、20年度は1兆円を突破。調剤医療費全体に占める割合も約15%にまで拡大している。25年度には2兆円、シェア30%という目標を掲げている。
こうした目標を掲げる背景も多彩で、環境はドラッグストア業界にとって大変有利な状況にあるとされる。
例えば、高齢者人口の増加が挙げられる。これによって処方箋枚数も増加していくことが見込まれる。また、都市部の高齢者人口の増加が著しいが、こうした都市圏はドラッグストアの展開地と重なっている。
そのほか、大手ドラッグストア企業を中心に薬剤師の安定的な採用ができている点や、大手を中心とした旺盛な新規出店・調剤併設化意欲、中堅ドラッグの調剤への参入などもある。調剤報酬の動向や在宅シフトへの対応、薬剤師供給の見通しなどの課題もあるが、調剤に関する目標達成も現実味を帯びていると言える状況だ。
個別企業に目を向けると、売上高が1兆円に到達するドラッグストア企業の誕生が間近に迫っている。最大手ウエルシアホールディングスの22年2月期中間決算では、売上高が約5083億円に到達した。調剤部門が好調で、前年特需の反動が大きかった物販をカバーし、前年同期比6.6%増という伸びを示した。通期の売上高は7.5%増の1兆0210億円を見込んでいる。
ウエルシアホールディングスに続き、売上高が1兆円を超えるような企業が今後も複数誕生すると、その数社でドラッグストアの売上シェアの3~4割を占める時代がやってくる可能性がある。JACDSの池野隆光会長(ウエルシアホールディングス会長)は、「今後、わが国は人口が減るということが事実であり、人口が減るとマーケットはシュリンクする。当然、今後も寡占化の流れは一定にあるだろう」と予測している。