2022年度に改訂された薬学教育モデル・コア・カリキュラムでは、全ての領域を「臨床薬学」につなげ、「薬物治療の個別最適化」を実践することが重要視されています。この方針は第109回薬剤師国家試験にも反映されています。臨床現場でも、1人の患者さんの状況を総合的に見るためには、薬学で学修した各科目の知識をつなげて対応することが必要になります。医療科目以外の知識が「臨床現場でどのように生かされているか」を意識しながら、総合的な能力を発揮できるように学修を進めましょう。第109回最新国試の問題を例に、薬学ゼミナールの科目責任者が具体的な出題傾向や学修方法を解説します。学修のヒントにしてください(各問題の解答番号は問312-313解説の最後に記載)
化学
※補足:本設問は実践の連問であり、医師への疑義照会を行う設問として「バルプロ酸ナトリウムを併用する場合、ラモトリギン錠の用法を1回25mgの隔日投与にする」ことも出題されている。
化学領域の全範囲(必須・理論・実践)で暗記ではなく、構造を見て判断する問題が多く出題されています。基本的な知識の習得とともに、「知識を構造に結びつける力」を養いましょう。既出問題を解く際に、「構造のどこを見るべきか」「どの知識を使って解くか」を意識してください。
本設問は、主に化学以外の科目で学修するグルクロン酸抱合反応に焦点を当てた問題です。近年散見された単純な医薬品の化学的特徴を読み解くものでなく、他科目で学修した知識を、その場で生体分子や医薬品の構造的特徴に応用する力を必要とします。
有機化学は「知識の積み重ね」が重要です。必須・理論では、有機化学の基本的な内容が、実践問題では「医薬品や生体分子・反応に化学の基礎がどう関わっているのか」が問われます。有機化学の基礎をしっかり理解した上で、科目の壁を越えて化学構造を意識することが重要です。
衛生
近年は「公衆衛生」の重要度が高まっており、トピックスが出題されやすい傾向です。また、グラフや表、図を読み取る問題や構造式での出題も多く、暗記だけではない考える力を必要とする問題が多くなっています。
本設問は、フェニルケトン尿症の患者に注意喚起すべき甘味料(アスパルテーム)の構造式を選ぶ問題です。この問題を解く際に必要な知識は、▽フェニルケトン尿症の患者は、先天的にフェニルアラニンを水酸化する酵素に異常が生じていること▽アスパルテームを構成している2つのアミノ酸(アスパラギン酸、フェニルアラニンのメチルエステル体)の構造式――となります。これらの医療や基礎の知識を応用することで、構造式が似ているネオテーム(選択肢3)やアドバンテーム(選択肢2)ではなく、正確にアスパルテームを選ぶことが可能となります。
衛生は広範囲から出題されるため、早期からの対策が必要です。医療系の科目では「治療」を中心とした内容を学修しますが、衛生では「予防」が中心であり、薬剤師にも予防の知識が強く求められています。22年度の改訂コアカリでも「予防」という観点が重要視されています。既出問題を繰り返し解き、知識を定着させることで、衛生を得点源にしていきましょう。
法規・制度・倫理
国試において、麻薬、向精神薬、覚醒剤や覚醒剤原料(管理薬)に関する問題は、毎年出題されます。特に実践問題における管理薬の問題では、「法規の知識で解く実務」や「実務の知識で解く法規」が多く出題されています。
近年は、法規でも医療現場において必要な知識を問う問題が多く出題されています。そのため、勉強する際に法規と実務をリンクさせることが重要です。例えば、第109回国試の問312(109-312)、107-317では法規で麻薬の廃棄や事故に関する内容が出題されていますが、108-336、106-333では実務で麻薬の廃棄や事故について出題されています。
双方の学修をする際には、「法規とは最低限守るべきもの」として線引きをし、「実務は現場・患者の目線にたって運用されるもの」と考えると、「法規では〇〇だが、実務的には□□」という内容にも納得できることが増えると思います。また、実践で医薬品の規制に関する問題が出題される際は、109-320のように、実務で一般用医薬品の薬効を問う問題が出題されやすい傾向があります。
今回紹介した設問以外にも例えば、コミュニケーション技法(服薬指導、座り位置)、倫理的規範(〇〇宣言など)は、法規または実務の双方で、血液製剤やワクチン(生物由来製品・特定生物由来製品)などに関する内容は、法規、薬理、治療または実務で出題されています。法規を学べば医療系の内容も修得できるので、相乗効果があることを念頭に学修を進めてください。
解答番号(問210=2、問130=4、問312=4、5、問313=2、3)
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