退学者数に一定の歯止め‐青森大が唯一4割超える
文部科学省は、6年制薬学部における2024年度の退学率等に関する調査結果を公表した。退学率では、青森大学が41.0%と最も高かったが、2~3割台の大学数が前年度調査より減少するなど改善傾向が見られた。一方、国公立大では退学率が1割を超えた大学が3校増加した。24年度薬剤師国家試験のストレート合格率では、姫路獨協大の14.9%が唯一の1割台となり、50%を下回った大学は前年度より3校減の22校だった。
4回目となる今回の退学率に関する調査では、18年度に6年制薬学部に入学した人の退学者の割合を公表した。
私立大57校の退学率を見ると、青森大の41.0%が最も高く、唯一4割を超えた。昨年度調査で最も高かった日本薬科大は36.3%となったほか、医療創生大33.3%、千葉科学大32.9%、徳島文理大(香川薬学部)32.4%、北陸大32.1%と3割台は5校だった。
2割台の大学は、第一薬科大28.0%、九州医療科学大26.1%、姫路獨協大25.5%、国際医療福祉大25.3%、兵庫医科大23.0%、広島国際大21.0%、城西大20.6%、徳島文理大20.3%の8校だった。
23年度は退学率4割台が2校、3割台6校、2割台11校だったことを踏まえると、退学率の高い大学で退学者数に歯止めをかけることができていると言えそうだ。
一方、退学率が最も低かったのは、福岡大の0.9%で、星薬科大2.3%、北里大3.0%、近畿大3.4%、安田女子大5.0%が続き、退学率1割未満は24校だった。
国公立大18校では、退学者なしが6校だったのに対して、退学者が確認された12校のうち、長崎大13.6%、岡山大12.2%、岐阜薬科大11.4%、今回の調査で初めて数値が公表された山口東京理科大10.9%と、1割を超えた大学は4校に上っており、昨年度調査と比べて3校増加した。
また、18年度入学生における標準修業年限内での薬剤師国家試験ストレート合格率を調べた結果も公表した。
私立大では、北里大が83.7%で唯一8割を超え、星薬科大79.5%、京都薬科大78.9%、福岡大77.9%、近畿大77.7%、東邦大76.8%が続いた。
最も低かったのは姫路獨協大14.9%で唯一の1割台だった。2割台は千葉科学大21.1%、日本薬科大22.3%、青森大25.6%、第一薬科大29.1%の4校だった。
国公立大では東京大のみが全員合格となり、金沢大91.7%、静岡県立大90.3%、東北大90.0%の順となった。
ストレート合格率50%を下回った大学は、前年度から3校減った。退学率20%を超える大学でストレート合格率50%を上回ったのは徳島文理大学のみで、退学率が高い大学にストレート合格率が低い傾向が全体的に見られた。
14年度入学生のうち、10年を超えて在籍している学生の割合は、私立大では医療創生大3.6%、青森大3.4%、姫路獨協大3.1%、九州医療科学大2.5%、長崎国際大2.3%の順に高く、26校で該当する学生が確認された。国公立大は、広島大2.6%、岐阜薬科大1.3%の2校だった。
(2024年12月13日掲載)
【薬局機能検討会】小児・HIVにも区分拡大‐専門機関連携薬局で対応案
厚生労働省は、「癌」に限られる専門医療機関連携薬局の傷病区分について「HIV」「小児(疾病)」に拡大する対応案を2024年12月16日の「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」に示した。地域連携薬局数が4000を超える一方、専門医療機関連携薬局は205薬局にとどまることから、同検討会では傷病区分の拡大に向け、関係者にヒアリングを進める予定。構成員からも傷病区分の拡大に前向きな意見が相次ぎ、かかりつけ薬局から小児・HIVの専門薬局に紹介する機能など薬局間連携が重要との指摘も出た。
同検討会では、地域連携薬局について在宅対応を主とする薬局に要件を見直し、健康サポート薬局は現在の都道府県への届出制から認定制度として法令に規定する方向で意見を取りまとめたが、さらに今回、積み残していた専門医療機関連携薬局についても議論をスタートした。
専門医療機関連携薬局の傷病区分として定めているものは「癌」のみとなっており、厚労省は専門的な医療機関や学会で専門薬剤師の認定が行われている「HIV」「小児(疾病)」の二つの疾患を拡充する考えを提示した。
「小児(疾病)」については、もともと対象疾患として候補に上がっており、HIVは「患者のための薬局ビジョン」で高度薬学管理機能の一つに抗HIV薬服用患者の支援が記載されていたことを踏まえ、盛り込んだ。今後、関係者へのヒアリングを実施し、検討を進めていく。
構成員からは好意的な意見が相次いだ。山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「専門的なことを行っている薬局ということで差別化を図れるのではないか」と期待感を語った。
一方で、「専門医療機関連携薬局の数は200程度であり、地域によっては少ないところもある」と指摘。薬局からの紹介機能も課題に挙げ、「専門的な薬局がどこにあるか分からない時に薬局が認定薬局を紹介してくれるという発想がない。小児、HIVに強い薬局がどこなのか患者が探すよりは紹介してもらえたほうが安心できる」と述べた。
宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、「患者数に応じた癌の認定薬局はすべからくあるべき」と認定薬局数を増やす取り組みが必要との考えを示した。
小児については「専門病院の周辺にある薬局が辛うじて工夫をしてやっているので、こうした薬局にはインセンティブがあるべきだろう」と前向きに評価した。
(2024年12月18日掲載)
25年度中間年改定が決着‐品目ごとに対象範囲設定
林芳正官房長官、加藤勝信財務相、福岡資麿厚生労働相は2024年12月20日、25年度の中間年薬価改定について、平均乖離率の5.2%を基準に新薬創出等加算対象品目と後発品はその1.0倍、長期収載品は0.5倍を超える品目を改定対象とするなど、品目ごとに応じて対象範囲を設定することに合意した。平均乖離率の0.625倍を超える品目を一律に対象とした過去2回の中間年改定とは異なり、カテゴリーごとにメリハリを付けた改定となった。厚労省の試算によると、改定対象品目は全体のおよそ半数となる9320品目で、1万3400品目を対象とした前回23年度改定から範囲が小さくなる見通しだ。
改定の対象品目については、平均乖離率5.2%を基準として、新薬創出等加算対象品目・後発品については1.0倍(乖離率5.2%)、新薬創出等加算対象品目以外の新薬は0.75倍(3.9%)、長期収載品は0.5倍(2.6%)、1967年以前に収載されたその他医薬品は1.0倍(5.2%)をそれぞれ超える医薬品を改定対象とする。
1万7440品目のうち改定対象となるのは9320品目(53%)と、およそ半数となる見通し。創薬イノベーション推進の観点から新薬創出等加算品目は60品目と中間年改定が行われた23年度改定の240品目から4分の1の改定範囲にとどめた。
長期収載品の改定対象品目数は1500品目と23年度改定と同規模だが、後発品は5860品目と約2800品目減る試算だ。
25年度改定では、追加承認品目等に対する加算や不採算品再算定品の実施、最低薬価の引き上げといった臨時的対応を行う一方、特許切れ後に加算額を返還する新薬創出等加算の累積額控除ルールを中間年でも導入する。
不採算品再算定品は、基礎的医薬品と組成・剤形が同一である品目、安定確保医薬品A・B、厚労相が増産要請を行った品目など、医療上の必要性が高い医薬品に絞って臨時的に不採算品再算定品として適用する方針。
ただ、厚労相が増産要請を行った品目を除き、改定率5.2%を上回った品目は対象としない。
平均乖離率は4年連続で縮小となり、この4年間で2.8ポイント縮小し、3大臣合意でも21年度、23年度改定の慣例に固執することなく、必要な対応を行うことを確認した。
(2024年12月23日掲載)
【厚科審制度部会】役員変更命令メーカーのみ‐薬機法改正取りまとめ了承
厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会は2024年12月26日、「医薬品医療機器等法制度改正に関する取りまとめ」を了承した。責任役員の変更命令は医薬品、医薬部外品、医療機器、再生医療等製品などの製造販売業者・製造業者に限定し、薬局・ドラッグストアは対象から外した。ドラッグラグ・ロス対策では、成人向け医薬品の承認申請者に小児用医薬品開発計画策定を努力義務とするほか、安定供給確保体制を整備するため、安定供給体制管理責任者の設置を義務づける。近く取りまとめの最終版を公表し、今月から始まる通常国会に薬機法改正案を提出する予定だ。
行政処分事案の中には責任役員が率先して違法行為を行う事例が見受けられることを受け、責任役員が原因で薬事に関する法令違反が生じた場合など、保健衛生上の危害の発生やその拡大を防止するために特に必要な場合には、責任役員の変更を命ずることができる旨を薬機法で規定する。
薬局についても、偽造医薬品や薬歴未記載などの問題が相次いでいることを背景に、対象職種に入れるよう求める意見が出た。厚生労働省は「前回の法改正以降の行政処分の状況、小売違反が発生した場合の国民の影響の大きさなどを検討し、メーカーに限定するのが適当と判断した」と説明している。
医薬品販売制度では、20歳未満には乱用の恐れのある医薬品の大容量製品・複数個による販売を禁止するなど規制を強化する。販売方法も双方向でのやり取りが可能なオンライン・対面のみとする。
その一方で、デジタル技術を活用した薬剤師等の遠隔管理による医薬品販売を認める。薬局・店舗販売業の薬剤師による遠隔での管理のもと、薬剤師が常駐しない店舗で医薬品を受け渡すことを可とする。管理店舗と受渡店舗は同一店舗とし、制度導入後の検証を踏まえより広範囲での制度導入も検討すべきとした。
調剤業務の一部外部委託も制度化する。その際、国家戦略特区の実証事業の状況も踏まえ、受託側・委託側の薬局における必要な基準を設定すると共に、両薬局の開設者・管理薬剤師にかかる義務や責任を法令上規定すべきとした。
(2025年1月8日掲載)